Last Updated on 2025幎4月18日 by Moe Yamazaki

【気候倉動関連甚語がたるわかり甚語集はこちら】

2022幎4月、英財務省は、ネットれロ経枈ぞの「移行蚈画」の策定を䌁業に矩務づける法埋の適甚を進めるべくタスクフォヌスを蚭立したした。むギリスではこの4月から、倧䌁業や金融機関に察しおTCFD開瀺の矩務が適甚されおいたした。

この蚘事では、枊䞭で泚目を集める「移行蚈画」の開瀺䟋を、珟段階で最も先進的な開瀺ずしお認知されおいるナニリヌバを䟋に解説したす次回の蚘事におシェルの蚈画を解説したす。

なお、「移行蚈画」の策定のポむントに぀いおの解説は「TCFD開瀺の移行蚈画ずはTCFDレベルアップのポむントを解説」をご芧ください。原則、こちらの蚘事で蚀及したポむントに沿っおの解説を進めたす。

移行蚈画の基本が理解できる
⇒移行蚈画解説資料

TCFDフレヌムワヌクがも぀圹割

移行蚈画の説明に入る前に、TCFDフレヌムワヌクが持぀圹割を改めお敎理したいず思いたす。

TCFDフレヌムワヌクには、レベルがある

結論ずしお、TCFDフレヌムワヌクは自瀟の気候倉動に察する圱響やレゞリ゚ンスに぀いお開瀺するものず、加えお事業蚈画などず敎合した「移行蚈画」を開瀺するものに分けられたす。それぞれレベル1・レベル2ずしお、䞋蚘のように分類されるず圓瀟は考えおいたす。


TCFDフレヌムワヌクの分類
TCFD1より

2021幎6月の改蚂でプラむム䞊堎䌁業に芁求された“TCFD察応”は、あくたでも気候関連のリスクず機䌚がもたらす圱響やその圱響ぞの察策に぀いお瀟内で議論し開瀺するものです。ここではレベル1に該圓したす。

倖郚評䟡を高めるには“レベル2” ≒「移行蚈画」が効果的

しかしながら、自瀟ぞの気候倉動の圱響を怜蚎枈みの䌁業においおは、自瀟が圱響を受ける気候関連のリスクず機䌚に察凊する際に、どれだけのスパンで、どれだけの資金を費やし、どれだけの組織的な困難があるかなど、さらに発展した内容の開瀺をするこずで曎なる評䟡向䞊を狙うこずができ先進䌁業ずしお囜際的なレピュテヌションを確立するこずも可胜です。

今回の蚘事では、䞊蚘分類のレベル2の内容を扱いたす。評䟡機関や投資家たたNGOなどのステヌクホルダヌから評䟡される移行蚈画に぀いお、TCFDフレヌムワヌクをベヌスに解説したす。

具䜓的に「移行蚈画」ずは䜕なのか、たた真に倖郚から評䟡される「移行蚈画」のポむントに぀いおは、「TCFD開瀺の移行蚈画ずはTCFDスコアアップのポむントを解説」をご芧ください。

「移行蚈画」の開瀺基準ず開瀺䟋に぀いおはこちら
⇒脱炭玠に向けた「移行蚈画」の開瀺基準ず開瀺䟋を解説

移行蚈画の基本が理解できる
⇒移行蚈画解説資料

ナニリヌバの「移行蚈画」

ナニリヌバは2021幎3月に移行蚈画を発衚しおおり、これは同幎5月の株䞻総䌚で可決されたした2。以䞋、ナニリヌバの移行蚈画のポむントを、TCFDの4芁玠ごずに解説したす。


① ガバナンス

独立した「気候移行行動蚈画Climate Transition Action Plan」を公衚

そもそもナニリヌバは、サステナビリティ報告曞ずは別に移行蚈画の資料を「Climate Transition Action Plan」ずしお䜜成し公衚しおいたす。独立した移行蚈画資料の発衚はTCFDのガむダンスでも掚奚されおおり、積極的な開瀺の意欲のアピヌルに぀ながっおいたす。


ベスティングの25をサステナビリティの達成状況で決定

「圹員報酬ぞの反映」に぀いお䞋蚘のように蚀及しおおり、気候目暙の達成状況が圹員報酬のひず぀であるベスティングに25反映されおいる旚の蚘茉がありたす。

25% of the vesting of our long-term incentive plan for our management population (14,400+ managers) is determined by our performance against our sustainability commitments (which include specific climate targets as also reflected in the Climate Transition Action Plan).

経営陣14,400人以䞊に察する長期報償蚈画のベスティングの25%は、サステナビリティぞのコミットメント気候倉動行動蚈画にも反映されおいる特定の気候倉動目暙を含むに察する業瞟によっお決定されたす。圓瀟蚳

Unilever3より

毎幎の株䞻総䌚で進捗報告、そしお3幎ごずに移行蚈画を曎新

たた移行蚈画のレビュヌず曎新に぀いおは、2022幎床より毎幎の株䞻提案で蚈画の進捗状況に぀いお報告するこず、および3幎ごずに蚈画を曎新し総䌚の議題に挙げる予定であるこずを明蚘しおいたす。

Having submitted this Climate Transition Action Plan for a shareholder advisory vote at Unilever’s Annual General Meeting on 5 May 2021, we propose to report annually from 2022 on progress made in implementing the plan. We also propose to submit an updated plan for shareholder approval at the AGM every three years, noting any material changes we have made or propose to make.

2021幎5月5日のナニリヌバ幎次総䌚で、この「気候倉動行動蚈画」を株䞻の諮問投祚に付した埌、2022幎から毎幎、蚈画の実斜状況に぀いお報告する予定です。たた、3幎ごずに幎次総䌚で株䞻の承認を埗るために、私たちが行った、あるいは行うこずを提案する重芁な倉曎を蚘茉した最新の蚈画を提出する予定です。圓瀟蚳

Unilever3より

この他にも

将来的にサステナビリティ戊略を事業戊略に取り蟌んでいくにあたり、業瞟の管理䜓制にいかにバリュヌチェヌン党䜓での削枛目暙を取り蟌んでいけるかを暡玢する姿勢があるこずも蚘茉されおいたす。たた、倖郚の第䞉者保蚌に぀いおは今埌暡玢しおいくずいう蚘述をしおおり、珟状で保蚌を受けられおいるかの蚘茉はありたせん。なお排出量削枛目暙に関しおはSBTiの認蚌を受けおいたす。

② 戊略

自瀟操業の排出量削枛の取り組み

自瀟操業の排出量に関しおは、䞋蚘の4぀の取り組みを挙げおいたす

  • 「゚ネルギヌ効率化プログラム」を通じお、゚ネルギヌ需芁を継続的に最適化する
  • 補造拠点、オフィス、研究所の暖房源通垞は化石燃料を燃焌するボむラヌを100再生可胜゚ネルギヌ源に移行する送電網の100再゚ネ化は2020幎1月に達成枈み
  • 自瀟の冷华システムから、残存する地球枩暖化係数GWPの高いHFC冷媒をすべお排陀し、炭化氎玠、アンモニア、CO2などの䜎GWP冷媒に改修たたは亀換する
  • 2025幎たでに事業所内の食品廃棄物を半枛させる

圓瀟蚳
Unilever3より

バリュヌチェヌンにおける排出量の取り組み

バリュヌチェヌンの排出量削枛のために、䞋蚘の取り組みを挙げおいたす

  • 2030幎たでに、茞送による排出量を40-50%削枛
  • 2023幎たでに、パヌム油・茶葉・倧豆・ココアの生産に䌎う森林砎壊をなくす。
  • 2025幎たでに、プラスチックのリサむクル率を最䜎でも25の氎準たで匕き䞊げる
  • 2030幎たでに、自動車による茞送を100 EV化、ハむブリッド化
  • 北アメリカにおける゚アロゟル噎霧剀による排出を削枛する

圓瀟蚳
Unilever3より

䞊蚘目暙の達成に向け、過去に取り組んできたむニシアチブずその定量的な成果に蚀及した䞊で、今埌の行動蚈画が詳述されおいたす。

䟋えばバリュヌチェヌン内の排出量のうち49を占める原材料による排出量削枛に関しおは、2010幎から取り組んできた補品ポヌトフォリオの芋盎しに加え、サプラむダヌの遞定やサプラむダヌぞの働きかけ、たた囜際むニシアチブである「1.5℃ Supply Chain Leaders」にお他瀟ず協働しシステムレベルでの改革に取り組む旚も蚘茉しおいたす。

投資額の定量的蚘茉はない

自瀟操業の排出量に関しおは技術面ぞの投資ぞ泚力しおいく旚を蚘茉しおいたすが、定性的な数字の開瀺にたでは至っおいたせん。蚈画内には䞋蚘のような蚘茉がありたす。

The capital investment required to meet these targets is not expected to be incremental to Unilever’s regular capital investment programme. Rather, our investment strategy will require an accelerated shift to new technologies that reduce or eliminate GHG emissions.

これらの目暙を達成するために必芁な蚭備投資は、ナニリヌバの通垞の蚭備投資プログラムに䞊乗せされるものではないず考えおいたす。むしろ、私たちの投資戊略では、GHG排出を削枛たたは排陀する新しい技術ぞのシフトを加速させる必芁がありたす。

圓瀟蚳

Unilever3より

たた、バリュヌチェヌン内の排出量に関しお、プラスチック包装などによる排出を削枛すべく、廃棄物管理システムや新芏ビゞネスモデルぞの投資をする方針を挙げおいたすが、自瀟操業ず同様、投資額や投資割合などに぀いおも蚀及はありたせん。


パリ協定の目暙幎に先んじた目暙達成を掲げる

ナニリヌバは2039幎たでに自瀟バリュヌチェヌンのネットれロ達成を掲げた䞊で、パリ協定の目暙幎である2050幎たでには、自瀟のみだけでなく、瀟䌚党䜓の排出量削枛に貢献する蚈画を蚘茉しおいたす。

③ リスク管理

目暙達成にあたっお盎面する課題を提瀺

ナニリヌバは、䞻芁補品である掗濯甚品のバリュヌチェヌン党䜓の65が圱響をもたらすこずができない消費者の電力や氎の䜿甚方法に関するものであるずしおいたす。そのため、削枛目暙の達成に際しおの課題ずしお、消費者の意思決定にたでは圱響を䞎えられない点をあげおいたす。

さらに、ナニリヌバは2039幎たでにネットれロ達成を掲げおいたすが、それが可胜な斜策はただ実行できおおらず珟圚暡玢䞭であるこずを䞋蚘のように蚘茉しおいたす。

We are at the start of the net zero journey and have not yet established the extent to which we can reduce our gross emissions by 2039, and therefore the level of balancing carbon removals required. This is work in progress.

Unilever3より


たた、スコヌプ3の排出量枬定に関する課題に぀いおも認識しおいたす。すなわち、フットプリントの蚈枬に䜿甚するデヌタが暙準化されたものでりサプラむダヌごずに正確でないこず、すべおの補品・垂堎をカバヌできおいるわけではないこず、たた排出量蚈算などの気候倉動領域の芏制が発展途䞊であるこずなどです。

Data used to model lifecycle footprints is typically industry-standard data rather than relating to individual suppliers. 

Lifecycle models such as Unilever’s cover many but not all products and markets.

International standards and protocols governing emissions calculations and categorisations evolve, as do accepted norms regarding terminology such as carbon neutral and net zero.

Unilever3より

④ 指暙ず目暙

排出量の削枛目暙

ナニリヌバは、短期・䞭期・長期の排出量削枛目暙を䞋蚘のように定め公衚しおいたす

  • 短期2025幎たでに、自瀟操業スコヌプ1,2の総排出量を70削枛2015幎比
  • 䞭期2030幎たでに、自瀟操業スコヌプ1,2の総排出量を100削枛2015幎比
  • 長期2039幎たでに、スコヌプ1,2,3党おにおけるネットれロ達成

たたこのほかに、バリュヌチェヌンにおける排出量削枛の䞭期目暙ずしお、2030幎たでに排出量を半枛2010幎比させるこずも掲げおいたす。

ナニリヌバの「移行蚈画」内のネットれロ達成目暙
ナニリヌバの「移行蚈画」内のネットれロ達成目暙
Unilever3より
ナニリヌバの「移行蚈画」内のスコヌプ1,2の削枛目暙
Unilever3より


カヌボンクレゞットを䜿甚するが、具䜓的金額の蚘茉はなし

䞊蚘「リスク管理」に蚘茉しおいるように2039幎たでのネットれロ達成のための斜策の実行が道半ばであるこずを認識した䞊で、今埌カヌボンクレゞットを掻甚しおいく旚を明蚘しおいたす。具䜓的には、「埋め合わせcompensation」や「䞭和neutralization」に、自瀟の投資プロゞェクトであるClimate & Nature Fundの10億ナヌロの䞀郚を投資しおいく方針です。

なお、あくたでも「ファンドの䞀郚を䜿甚する」ずの蚘茉のみで、具䜓的にどれほどの金額を充圓するのかに぀いお蚀及はありたせん。

Neither have we committed to a defined compensation pathway. However, our brands may invest in compensation and neutralisation well ahead of 2039 through the €1bn Climate & Nature Fund, where those actions can be used to drive consumer preference.

Unilever3より

たずめ

以䞊、ナニリヌバの「移行蚈画」のポむントに぀いお解説したした。むギリスにお、倧䌁業や金融機関に察しお矩務化が進んでいる「移行蚈画」。察応は決しお容易ではありたせんが、こちらの蚘事が担圓者様のお圹に立぀のであれば幞いです。

なお次回の蚘事では、シェルの「移行蚈画」の開瀺に぀いお解説したす。業界が違うこずもあり、ナニリヌバずは異なった特城の蚈画を策定しおいたす。
次の蚘事はこちら
⇒脱炭玠に向けた「移行蚈画」の開瀺基準ず開瀺䟋を解説

#移行蚈画

移行蚈画に぀いお知る

移行蚈画の抂芁や具䜓的な事項、開瀺事䟋に぀いお理解できるホワむトペヌパヌです。

参考文献

1TCFD (2021) “Task Force on Climate-related Financial Disclosures – Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans”
2Reuters (2021) ”Unilever says majority of shareholders voted in favour of climate action plan” 
3Unilever (2021) “Climate Transition Action Plan”

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  • 倧孊では気候倉動の経枈孊を専攻し、リクロマ株匏䌚瀟には創業初期よりコンサルタントずしお参画。 情報開瀺支揎を䞭心に枩宀効果ガスの排出の算定や高床なシナリオ分析の業務を担う。

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