Last Updated on 2024年7月3日 by Moe Yamazaki

SBTなどの基準に沿ってネットゼロを掲げる企業は世界的に増えていますが、実態が伴っていないことから“グリーンウォッシュ”として批判の的になる企業も多く存在します。

実際ガーディアンは、ネットゼロを標榜している石油/ガス会社がパリ協定の基準と乖離した開発を計画していることを指摘しています [1]。

こんな中で、自社の対応及び開示がグリーンウォッシュに該当するのか否か思い悩んでいる担当者様も多いのではないでしょうか。この記事では、グリーンウォッシュにならない“真のネットゼロ”への対応のポイントを紹介します。その中で、2022年11月のCOP27期間中に公表された国連の提言の内容を参照します。

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グリーンウォッシュの定義

グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)とは、企業イメージの向上のために実態とは乖離した環境配慮を見せかける行為のことを指します。「ホワイトウォッシュ(ウォッシング)」という、白く塗って覆うことを連想させることから「ごまかし・取り繕い」を意味する言葉と、環境を意味する「グリーン」とを組み合わせた造語です。

ケンブリッジ英語辞典は、グリーンウォッシュを「企業が実際以上に環境保護に取り組んでいると人々に思わせる行動や活動」と定義しています。

“真のネットゼロ”に向けた国連の提言

COP27開催期間中の2022年11月7日、国連の専門家委員会は、企業・銀行・自治体によるグリーンウォッシュを阻止しネットゼロをより実質的なものにする狙いで新たな基準を提示したレポートを発表しました [2]。

国連の専門家委員会とは?

国連の専門家委員会は、非国家主体のネットゼロ・コミットメントに関するハイレベル専門家グループと呼ばれています。委員会は、2022年3月31日に発足し、国連総長が任命した17人の専門家で構成されています。専門家らは、企業や投資家、都市や地域などの非国家主体から構成されています。参加者は、個人の資格で活動しており、日本からは、日本気候リーダーズパートナーシップ(JCLP)共同代表を務める三宅香さんが参加されています[3]。

5つの原則と10の実践的な提言

国連が公表したレポートでは、下記のような提言がされています。


United Nations [3] より弊社作成

グリーンウォッシュを避け、環境への取り組みを効果的にアピールする場合、上図のうち「1. ネットゼロに関するコミットメントの発表」と「2. ネットゼロの目標設定」が最もハードルが低く取り掛かりやすいと考えています。

「4. 移行計画の策定」なども、自社の環境及び気候変動の取り組みを促進し、ステークホルダーとの関係を構築する上では将来的に必要になってくることが想定されますが、策定にはとてつもない労力と時間がかかります。移行計画については「TCFD開示の更なる“レベルアップ”のために必要な「移行計画」について解説」をご覧ください。

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グリーンウォッシュにならないためには?

2030年までに世界の排出量を少なくとも50%削減し、2050年までにネットゼロを達成しなければならないという事実を踏まえ、企業は迅速に対応を開始する必要があります。

グリーンウォッシュにならないようなネットゼロへの対応はどのように進めればよいのでしょうか?

“ネットゼロの目標設定”でグリーンウォッシュを回避

当社は、上記でまとめた「10の実践的な提言」のうち、「1. ネットゼロに関するコミットメントの発表」と「2. ネットゼロの目標設定」が最もハードルが低く、どの企業も取り掛かりやすいと考えています。この2点の対応を適切に行えば、グリーンウォッシュには該当せずステークホルダーからの信頼も得られるでしょう。

下記にて、「ネットゼロに向けた目標設定」のために必ず押さえておくべきポイントを紹介します。

ネットゼロの定義

ここでまず、国連が考えているネットゼロの定義を紹介します。ネットゼロとは一般的に、スコープ1,2,3においてGHGの排出量が正味ゼロの状態を指します。SBTiはじめ多くの機関が定義を提供していますが、国連のレポートでは下記のように記載されています。

“A non-state actor should be considered and recognised as net zero or to “have achieved its net zero pledge” when:

 ・its pledge, targets and pathway to net zero are generated using a robust methodology consistent with limiting warming to 1.5°C with no or limited overshoot verified by a third party (for example, SBTi, PCAF, PACTA, TPI, ISO, among others);

 ・it has achieved its long‑term net zero target with any residual emissions neutralised by permanent greenhouse gas removals according to reports verified by a credible, independent third party based on publicly available data.”

「非国家主体は、以下の場合に、ネットゼロとみなされ、また『ネットゼロの誓約を達成した』と認識されるべきである:

・その誓約、目標、ネットゼロへの道筋が、第三者(例えば、SBTi、PCAF、PACTA、TPI、ISOなど)によって検証されたオーバーシュートを伴わない、あるいは限定的な温暖化を1.5℃に抑えることと整合する強固な方法論を用いて作成されていること。

 ・公開されたデータに基づき、信頼できる独立した第三者が検証した報告書により、温室効果ガスの永久的な除去によって残余の排出を中和し、長期のネットゼロ目標を達成した。」

United Nations (2022) [3]

ネットゼロ目標設定のための必須事項

提言の内容に基づいて、ネットゼロ目標設定のための項目を整理しチェックリストにとりまとめましたので、ご参照ください。

例えば、表の最上段の項目に関して、2022年にコミットメントを発表した場合、2025年を短期削減目標年度として、それから2030年、2035年と5年間隔の目標を設定します。なお、5年ごとに目標を再計算することに関してはSBTでも必須事項となっています。SBTについては「SBT認証とは?日本企業の動向から認証のポイントまで解説」の記事を合わせてご覧ください。

ネットゼロ目標設定のための必須事項

United Nations [3] より弊社作成

グリーンウォッシュを回避する視点:「公正な移行」とは?

グリーンウォッシュにならないために「公正な移行」の視点も必要とされています。「公正な移行」とは、人種、ジェンダー、世代間の公平性、そして自社の取り組みがもたらすより広い社会的影響や結果を考慮・対処してネットゼロへの取り組みが行われることです。

取り組み例
・企業が労働者、組合、地域社会、サプライヤーと連携して、公正な移行計画を策定する
・先住民の権利に関する国連宣言(UNDRIP)、特に「自由意志に基づき、事前に十分な情報を与えられた上での合意」という原則を、自社の計画がどのように統合しているかを開示する

企業が今からできること

ネットゼロへの取り組みの見直し

以上のチェックリストに照らして、目標の設定方法、進捗状況の報告方法などに焦点を当て、グリーンウォッシュではない“真のネットゼロ”への取組みの検討を進めることを推奨いたします。

中小企業や零細企業への支援

「公正な移行」のためにもサプライヤーとの連携が非常に重要です。また、スコープ3の排出量への対処としてサプライチェーン全体でネットゼロを実現するために、中小企業や零細企業の脱炭素化の取り組みを支援することができます。例えば、必要な資金や技術を提供するなどが考えられます。

まとめ

この記事では、グリーンウォッシュにならないネットゼロへの対応について紹介しました。サステナビリティ対応の取り組みへの一助となりましたら幸いです。

弊社では、『TCFD開示対応』をはじめ、『SBT目標設定支援』『環境ビジョン策定』『CSR調達アンケート代行』など、企業様のネットゼロ達成のためのご支援を行なっております。下記のバナーより、サービス資料をダウンロードいただくか、お気軽にお問い合わせください。

#国内動向

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
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参考文献

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Author

  • 2022年10月入社。2020年より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」の分野の活動に従事。在学中、国際労働機関(ILO)のインターンとしてリサーチ業務を経験。気候変動における企業の可能性に関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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