Last Updated on 2026年3月5日 by Moe Yamazaki
2026年度から本格稼働する排出量取引制度により、一定規模以上の排出を行う企業には、排出枠の保有義務に加えて「移行計画」の策定・提出が求められます。特に、ホールディングス型の企業やGX関連投資や研究開発を行う企業は、追加的内容の記載が要求されます。
本コラムでは、制度の概要を整理したうえで、排出量取引制度の導入に伴い追加的に求められる移行計画の記載内容について解説します。
脱炭素・産業競争力強化のための投資を活性化
経済産業省は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げています。これは、単に排出を抑制する仕組みではなく、脱炭素と産業競争力強化を両立させることを目指す政策パッケージです。
カーボンプライシングと投資支援策を組み合わせ、今後10年間で150兆円を超える官民GX投資・GX技術開発を推進することが示されています。
成長志向型カーボンプライシング構想の主な政策
① 「GX経済移行債」を活用した先行投資支援(10年間に20兆円規模)
② カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ
【化石燃料賦課金】
– 2028年度から導入
【排出量取引制度】
– 2023年度からGXリーグにおいて試行的に開始
– 2026年度から本格稼働
– 2033年度からは発電事業者に有償オークション導入
③ 新たな金融手法の活用
・トランジション・ファイナンスの推進
・GX機構による債務保証等の金融支援
このように、排出量取引制度は単独で存在するものではなく、「投資を促す制度」として位置付けられています。そのため、企業にとっては、規制対応であると同時に、社内の投資判断や研究開発戦略とどのように接続させるかが問われる制度でもあります。
2026年度から本格化する排出権取引とは
2026年度から一定規模以上の二酸化炭素の排出を行う事業者を対象に排出量取引制度への参加を義務化することを定めた改正GX推進法が2025年の5月に成立しました。
この制度では、政府が一定の基準の下、対象事業者に排出枠を割り当てます。対象事業者は、毎年度、排出実績量と同量の排出枠を法令に定める期限までに保有することを義務付けられます。排出枠の過不足が生じる場合は、枠数に応じて事業者間で排出枠を取引することができます。
排出権取引の概略

制度対象者
・CO2の直接排出量が前年度までの3カ年度平均で10万トン以上の事業者が対象。
・義務対象者である親会社等が、密接な関係にある子会社(義務対象者のみ)も含めて一体で義務を履行することも可能。
対象者に要求される2つの事項
制度対象企業には、大きく2つの対応が求められます。
① 移行計画の策定
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた排出削減目標や関連事項を含む「移行計画」を策定・提出する必要があります。
② 排出枠の保有義務
・排出枠の割当申請(第三者機関による確認)
・排出量の算定・報告(登録確認機関の確認を経て国に報告)
・排出実績と同量の排出枠を翌年度1月31日までに保有
・未履行の場合は、不足分×上限価格の1.1倍の支払い
実務としては、算定・検証・報告の精緻化に加え、排出枠管理という新たな経営管理機能が求められます。
投資・研究開発を反映した移行計画が求められる
経済産業省は、制度による投資効果を高める観点から、排出量移行計画において具体的な設備投資計画・実績の毎年度提出を求めています。また、特に、以下のケースでは追加的な記載が必要になります。
移行計画の記載事項

密接関係者と一体で投資を行う場合
密接関係者の要件を満たす企業は、共同で届出を行い、親会社が移行計画を一括して策定することになります。
【密接関係者の主な要件】
・子会社、関連会社、兄弟会社等であること
・直接排出量が10万トン以上であること
・一体的に投資を行う計画を有していること
この場合、グループ全体の投資戦略と排出削減戦略を整合させたストーリーが不可欠です。サステナビリティ部門には、グループ横断での調整や合意形成という、より高度な役割が期待されます。
GX関連の研究開発投資により追加割当を受ける場合
GI基金プロジェクトなど、排出削減に大きく貢献する研究開発に投資を行う事業者には、投資額に応じて追加的な排出枠が割り当てられる可能性があります。対象となり得る分野には、例えば次のようなものがあります。
・水素還元製鉄
・ペロブスカイト太陽電池
・液化水素運搬船
・アンモニア専焼
・全固体電池
これらの研究開発投資を行う場合、その内容や進捗、投資額などを移行計画に具体的に記載する必要があります。つまり、移行計画は、サステナビリティ部門単独の文書ではなく、財務的に企業の未来像を映し出す経営計画の一部となります。
【参考】排出枠の割当ての実施に関する指針

まとめ
2026年度から本格化する排出量取引制度により、一定規模以上の排出事業者には移行計画の策定や排出枠の保有義務が課されます。本コラムでは、制度の概要を整理するとともに、排出量取引制度の導入に伴い企業の移行計画に求められる追加的な記載内容について解説しました。移行計画を含めた排出量取引制度の対応は、“義務”で終わらせず、投資を含めた経営・財務的“戦略”へと昇華させていくことが重要です。
参考文献
[1]経済産業省(2025)「排出量取引制度」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ets.html(閲覧日:2026年2月16日)
[2]経済産業省(2025)「産業構造審議会 排出量取引制度小委員会 中間整理(案) ~排出枠の割当ての実施指針等に関する事項~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/pdf/006_03_00.pdf (閲覧日:2026年2月16日)
[3]経済産業省(2025)「排出量取引制度の詳細設計に向けた 検討方針」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/pdf/001_03_00.pdf(閲覧日:2026年2月16日)
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