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CDP(気候変動質問書)の基本情報や回答メリット、ポイントを知る「CDP(気候変動質問書)入門資料」
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CDPフォレストとは
CDP(Carbon Disclosure Project)は、2000年に設立された英国の非政府組織(NGO)であり、投資家、企業、国家、地域、都市の活動やそれに伴う環境影響を評価・情報公開するプラットフォームを運営しています。
CDPが提供する情報開示枠組みは、以下の3分野に分かれています。
・気候変動
・フォレスト
・水セキュリティ
森林は、気候変動と生物多様性という地球規模の課題のカギを握る一方で、ビジネス活動によって深刻な破壊リスクにさらされています。CDPフォレストは、森林リスクコモディティの生産や使用を通じて森林に有害な影響を与える可能性のある産業の企業を対象にしたプログラムです。CDP気候変動版と同様、企業の回答はA、B、C、Dの4段階でスコアリングされます。
スコアリング対象企業の選定基準
1. 森林影響評価
企業のバリューチェーンにおける「森林リスクコモディティ」(畜牛品、パーム油、大豆、木材、天然ゴム、カカオ、コーヒー)の生産や使用を調査し、それが森林に与える影響、または森林から受けるリスクを評価します。
対象産業を特定したうえで、森林に与える・受ける潜在的な影響の大きさを5段階で評価します(森林影響レーティング)。
2. 売上閾値
森林関連の活動から得られる企業の売上を推定し、ビジネスとしての関与度を測定します。
3. 優先度の決定
上記の評価に基づき、森林影響レーティングと売上がともに高い企業から優先的に選定されます。
その他の選定要素
以下のような外部の信頼性のある指標も参考にされます:
・Global Canopy’s Forest 500で森林破壊に関して影響力を持つとされた企業
・SPOTT indexに掲載されているパーム油の生産・加工企業
CDPフォレストの回答対象となる範囲
企業は、自社の事業と関連するコモディティに限定して回答する必要があります。
なお、2023年度においては「天然ゴム」「カカオ」「コーヒー」はスコアリングの対象外とされています。

CDPフォレスト質問書の評価基準とKPI
CDPフォレストでは、「森林減少ゼロ(Zero Deforestation)」の達成に向けた企業の取り組み状況を評価するために、15の重要業績評価指標(KPI)が設定されています。
これらは、以下の6つの主要なテーマ(枠組み)に分類されます。
- ① ガバナンス
- ② 戦略
- ③ リスク管理
- ④ 指標と目標
- ⑤ サプライチェーン・エンゲージメント
- ⑥ 生態系の保護・復元
評価のしくみ:4段階スコア
各KPIについて、企業の回答内容は以下の4段階でスコアリングされます:
スコア | 内容の目安 |
A | ベストプラクティスが実践されている |
B | 森林課題に対して戦略的にマネジメントされている |
C | 森林リスクとその影響を認識している |
D | 情報開示のみ(具体的な対応は未整備) |
ここでは6つの枠組みで問われることを簡単に説明します。
ガバナンス
ここでは、森林関連問題が経営方針に反映されていることを適切に評価することを目的とし、取締役会レベルで森林関連問題の監督を実施しているか、期限付きマイルストーンと目標を含む全社的方針があるか、コミットメントが設定されているかなどが評価されます。
戦略
ここでは、長期的な事業戦略や財務計画の中に森林関連問題が組み込まれているのか評価されます。
リスク管理
ここでは、バリューチェーン全体をマッピングし、森林関連リスクのあるサイトを特定し、その所在書を報告することが求められます。
指標と目標
ここでは、製品が認証制度に準拠しているか、製品のトレーサビリティが可能か、生態系の改変や森林減少なしにコミットメントしているかなどが評価されます。
サプライチェーンエンゲージメント
ここでは、小規模農家への適切な農業慣行支援や資源採取の直接サプライヤーへの生態系の改変および森林の減少を抑止する金銭的/商業的インセンティブの付与、森林関連活動のイニシアチブ執行を評価します。
生態系の復元と保護
ここでは、生態系の回復と保護に焦点を当てたプロジェクトの支援や実施を評価します。
CDPフォレスト質問書の選択
CDPフォレスト質問書には、以下の2つのバージョンがあります。
・SME質問書
・完全版/一般セクター質問書
企業の年間売上の規模や過去の回答の有無によって選択できる質問書が異なります。
状況 | 対象となる質問書 |
初回回答かつ年間売上2.5億ドル未満 | SME版または完全版どちらかを選択可能 |
初回回答でも年間売上2.5億ドル以上 | 完全盤のみ |
過去にCDPへの回答経験あり | 完全版のみ(売上規模にかかわらず) |
CDP質問書への回答が初回であり年間売上が2億5000万ドル未満の企業は、SME版と完全版の両方から選択できます。一方、過去に回答経験があったり、初回回答企業でも年間売上が2億5000万ドルを超える企業は、完全版の対象となります。
日本企業のCDPフォレストへの回答状況
CDPフォレストは、2013年に開始して以来、年々数多くの企業が回答してきました。2023年では、271社に質問書が送付され、そのうち105社が回答しました。最高評価のAリスト選定企業は、花王、王子ホールディングス、資生堂、積水ハウス、豊田通商、ユニ・チャーム、日清オイリオグループの7社でした。
コモディティ別の回答率は、それぞれ木材(62%)、パーム油(37%)、畜牛品(16%)、大豆(14%)となっています。

業界別の回答率では、製造や素材、食品・飲料・農林関連が高くなっています。

まとめ
CDPフォレストは、企業が森林に関連する事業活動を行う企業が質問書への回答を通じて投資家などのステークホルダーに情報を開示し、スコアリングを受けられるため、森林破壊リスクを特定・排除し、社会からの要請に応えるための有効なツールと言えます。
政府や投資家は、ビジネスと森林保全に関係する新たな枠組みを次々と設けており、今後、企業は気候変動と同様に取り組んでいく必要があるでしょう。
#CDP
参考文献
[1] CDP「[企業向け] CDP2023フォレスト質問書 導入編」
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/002/original/CDP_Forests_Japan_2023_0319.pdf
[2] World Resource Institute “Forest Pulse: The Latest on the World’s Forests”
https://research.wri.org/gfr/latest-analysis-deforestation-trends
[3] CDP「CDP フォレスト レポート 2023: 日本版」
https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/002/original/CDP_Forests_Japan_2023_0319.pdf
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