Last Updated on 2026年3月5日 by Sayaka Kudo

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 2026年1月、CDPより2026年開示サイクルに向けた変更点解説資料が公開されました。本資料に記載された内容は最終決定前(予定)の段階ですが、2026年の開示において企業に求められる要件の方向性が明確に示されています。

本コラムでは、サステナビリティ推進担当者が留意すべき「気候変動・水・森林」の必須要件の具体的な変更見込みや、拡充される「適応とレジリエンス」に関する設問、そして新たに導入される「海洋(Ocean)」と「プラスチック」に関するグローバルな動向を踏まえ、日本企業が取るべき戦略を解説します。

気候変動・水・森林における評価基準の厳格化見込みとその実務的影響

CDP回答企業にとって注視すべき点のひとつが、スコアに影響を及ぼす「必須要件(Essential Criteria)」の改訂見込みです。2026年は、主要3テーマにおいて「リスク評価の質」と「対象範囲の拡大」がリーダーシップレベル獲得に向けた重要な焦点となる見込みです。

気候変動:リスク評価の「質」とLSRSへの対応準備 

Aリスト必須要件(EC-CC1)において、環境リスクを特定・評価・管理するプロセスの「質」を評価する要件が追加される予定です。直接的な操業範囲だけでなく、上流・下流のバリューチェーン全体を対象とし、かつ「短期・中期・長期」のあらゆる時間軸でのリスク評価を実施しているかどうかが問われます。 

また、モジュール7では、GHGプロトコルの新基準「LSRS(土地セクター及び炭素除去基準)」への移行に向け、土地関連セクターの活動や除去が自社に関連するかどうかの評価状況を示す設問が追加されます。2026年時点では定量データの報告は求められませんが、2027年以降の本格導入に向けた準備と位置付けられています。

水セキュリティ:GRIとの整合とSBTNの導入 

気候変動と同様、リスク評価の必須要件(EC-W5)から特定のリスク種類やツールの要件が削除され、バリューチェーン全体・全時間軸を通じた「質の高いリスク評価」に重点が置かれる方針です。

さらに、モジュール9ではGRI 303「水および排水」規格との整合性を高めるため、環境への排出前の「排水処理レベル」「排出量」「規制基準への準拠状況」に関する詳細な開示が拡充される予定です。

また、SBTN(科学的根拠に基づく自然目標)の枠組みが導入され、モジュール2でSBTNのStep 1(評価)の実施状況、モジュール9でStep 3に基づく淡水目標の設定状況が問われるようになります。

森林:全7コモディティへの対象拡大と除外要件の厳格化 

これまでの木材、パーム油、牛、大豆の4品目に加え、新たにカカオ、コーヒー、天然ゴムがスコアリング対象に追加される予定です。これは、AFi(アカウンタビリティ・フレームワーク)およびSBTNにおいて「森林減少や転換の影響が最も高い7品目」と定義されていることと整合させるためです。

これに伴い、非開示にできる少量除外(EC-F3)の閾値は1%未満から「5%未満」へと引き上げられる見込みです。これはデータ収集が初期段階にある追加3品目に配慮した柔軟な措置ですが、一方で、除外に関する必須要件(EC-F12)自体は「全7品目」に厳格に適用されます。企業は、サプライチェーン全体の精緻なデータ把握と、除外する際の正当な理由の説明が求められます。

「適応とレジリエンス」の本格的な設問拡張:事業の持続可能性を示す機会

異常気象や資源枯渇といった物理的環境リスクが顕在化する中、投資家やサプライチェーンは企業が物理的リスクにどう適応し、事業のレジリエンス(回復力)を高めているかに関心を寄せています。

2026年質問書では、モジュール2, 4, 5, 11, 12, 14において、適応とレジリエンスの要素が拡張されます。具体的には、リスクと機会の評価プロセス、ガバナンス体制、事業戦略、財務計画、およびエンゲージメント活動において、企業がどのように適応とレジリエンスに取り組んでいるかの開示が求められます。スコアリングにおいても、企業の適応に向けた行動を評価(インセンティブ付け)するよう軽微な変更が加えられる予定です。これは、新たな適応市場(製品・サービス)における事業機会を対外的に示す重要なステップとなります。

海洋(Ocean)モジュールの導入:「公海条約(BBNJ)」が促すブルーエコノミーへのシフト

2026年から完全版質問書において、新たに「海洋(Ocean)」テーマがオプトインで導入され、モジュール1〜5および13の既存フレームワークに統合される予定です。

この背景には、国連で採択された「公海条約(BBNJ条約:国家管轄権外区域の海洋生物多様性保全)」などの強い後押しがあります。世界の海を保護し、2030年までに30%を保全する「30by30」目標に向け、海洋環境の持続可能な利用はグローバルアジェンダとして注目されています。 CDPの海洋設問では、海運、漁業・養殖業、海洋エネルギーといったブルーエコノミーの主要セクターだけでなく、間接的な影響や依存関係を持つ企業も対象となります。UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)などにより、金融市場におけるデータ開示要求は急速に高まっており、2026年はスコア対象外ではあるものの、早期の着手が推奨されます。

プラスチック開示の拡充:欧州(EU)等の規制強化を見据えた対応

プラスチックに関する設問(モジュール10)も、エレン・マッカーサー財団の「グローバル・コミットメント」との整合を図る形で一部拡充されます。種類別のプラスチック目標、パッケージの形式、リサイクルや堆肥化可能な設計、そして「リユース(再利用)モデル」を通じた販売量などが詳細に問われる予定です。

この動向を読み解く上で重要となるのが、欧州(EU)等におけるプラスチック規制(PPWR:包装および包装廃棄物規則や、SUP指令など)の文脈です。使い捨てプラスチックの制限や、包装材のリサイクル材含有率の義務化など、法規制は着実に強化されています。グローバルに事業を展開する日本企業にとっても、CDPのプラスチック設問を通じて自社のサーキュラーエコノミー(循環経済)への対応状況を整理することは、将来の法規制リスクへの備えとして有効です。

まとめ 企業が今取るべき具体的なアクションとは

CDP2026の質問書・ガイダンスの最終版は、4月20日の週に公開される見通しです。回答入力が開始される6月15日の週に向けて、CDP開示担当者の皆様は以下のステップを進めることを推奨いたします。

  1. バリューチェーン全体を見据えたリスク評価の精緻化:気候・水における必須要件の変更見込みを踏まえ、上流・下流および全時間軸を含めたリスク評価プロセスの「質」を検証する。
  2. 追加3品目(カカオ、コーヒー、ゴム)の特定と影響評価:森林テーマ回答企業は、サプライチェーンを見直し、新たに追加される森林コモディティの調達状況とリスク評価体制を確認する。
  3. 「海洋」「プラスチック」に関する開示方針の検討:BBNJやEU規制等の外部環境の変化を視野に入れ、今年度からのオプトイン開示に対する自社の方針とデータ収集体制を社内で協議する。

リクロマでは、改訂が見込まれるCDPスコアリング基準への対応に向けたギャップ分析やから回答作成、アドバイザリー、模擬採点などご支援サービスを充実させております。2026年サイクルに向けた準備について、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

[1] CDP(2025)「Corporate disclosure: Preparing for CDP’s 2026 disclosure cycle」(閲覧日:2026年3月5日)
[2] CDP(2026)「Preparing for CDP’s 2026 disclosure cycle: Key changes to the 2026 questionnaire」(閲覧日:2026年3月5日)
[3] CDP(2026)「High Seas Treaty Will Transform Our Fragile Ocean for the Better」(閲覧日:2026年3月5日)
[4] リクロマ株式会社(2026)「【CDP】海洋(Oceans)設問書の要求事項と対応のポイント」 (閲覧日:2026年3月5日)

お役立ち資料

CDP(気候変動質問書)とは?

【このホワイトペーパーに含まれる内容
・CDPの概要やその取り組みについて説明
・気候変動質問書の基本情報や回答するメリット、デメリットを詳細に解説
・気候変動質問書のスコアリング基準と回答スケジュールについてわかりやすく解説

リクロマの支援について

当社では、CDP2024の回答を基に、設問の意味や次年度の方向性を研修形式でご支援しています。自由記述の添削や模擬採点を通じ、スコア向上に向けた具体的な示唆を提供します。また、「まるごとやり直し」の対応が必要な企業様にも対応可能です。CDPスコア向上に向けた具体的なアクションをサポートしますので、ぜひご検討ください。
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Author

  • 加藤 貴大

    リクロマ株式会社代表。2017年5月より、PwC Mexico International Business Centreにて日系企業への法人営業 / アドバイザリー業務に携わる。2018年の帰国後、一般社団法人CDP Worldwide-Japanを経て、リクロマ株式会社(旧:株式会社ウィズアクア)を創業。大学在学中にはNPO法人AIESEC in Japanの事務局次長として1,700人を擁する団体の組織開発に従事。1992年生まれ。開成中・高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。

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