Last Updated on 2025年12月12日 by Sayaka Kudo

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フロンによる地球環境への影響については、広く社会に認識されてきました。本コラムでは、地球環境に深刻な負荷を与える物質として問題視されてきたフロンについて、その概要と環境影響を整理し、分かりやすく解説します。

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フロンとは

フロンは特定の物質ではなく、フルオロカーボン類と呼ばれるフッ素と炭素の化合物の総称のことを指します。化学的には非常に安定した物質で毒性もないことから、エアコンや冷蔵庫、製氷器などの冷却や半導体の洗浄、断熱材などに長年用いられてきました。

フロンの種類

国によって基準が違うものの、日本のフロン排出抑制法では以下の3つの化合物をフロンとして指定しています。

  • CFC:クロロフルオロカーボン
  • HCFC:ハイドロクロロフルオロカーボン
  • HFCs:ハイドロフルオロカーボン

この中でも初期から使われてきたCFCとHCFCは特定フロン、後述するオゾン層破壊が問題となった後に使用されるようになったHFCsを代替フロンと呼ぶことがあります。

フロンによる地球環境への影響

フロンによる地球環境への主な影響として、オゾン層の破壊と地球温暖化への影響の2つが挙げられます。

オゾン層破壊への影響

フロンは安定した化学的性質から冷却用途を中心に事業用・家庭用問わず使われてきましたが、1980年代以降オゾン層の破壊などの原因となっているのではないかという指摘が相次ぎました。

オゾン層は、地球の表層にあるこの層は太陽光線中に含まれる有害な紫外線が地表に到達するのを防ぐ重要な役割を持っています。しかし、CFCなどの特定フロンが大気中に放出されると、太陽光の紫外線によって化合物が分解されて塩素原子が生成します。塩素原子がオゾン分子と化学反応を起こし、オゾンを分解することで、オゾン層を破壊します。その結果、地表に到達する有害な紫外線が増え、皮膚がんなどの健康被害をもたらす危険が生じます。

オゾン層への影響
出典:経済産業省「改正フロン法に基づく今後の取り組みについて」p3

この現象が知られるようになった1980年代以降は世界的にフロンへの規制が始まるようになりました。1987年にはオゾン保護のためのモントリオール議定書が採択され、1989年に発行されました。

モントリオール議定書に基づき、世界各国でフロンの生産や使用に関して規制されています。CFCはオゾン層への破壊的影響力が強いため、1996年以降世界的にほぼ全廃されました。HCFCは、日本を含む先進国では、2020年に生産・輸入が全廃されました。HFCは2016年のキガリ改正(モントリオール議定書の一部改正)で規制対象になりました。

地球温暖化への影響

フロンは構成物質として炭素を含むために、高い温室効果を持っているのも特徴です。

その基準は代表的なGHG(温室効果ガス)である二酸化炭素を基準とすると、CFCは約10,200倍、HCFCで約1,760倍となっています。温室効果が高い例として参照されるメタンでも二酸化炭素の約27倍であることを考えるといかに高いかがわかります。

フロンの地球温暖化へ影響
出典:経済産業省「改正フロン法に基づく今後の取り組みについて」p3

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HFCs(代替フロン)とは

HFCs(代替フロン)は、CFCやHCFCをはじめとする特定フロンのオゾン層破壊問題が知られるようになって以降、代替品として開発された物質です。

こちらはオゾン層の破壊効果はないため、特定フロンに変わる冷房や冷蔵庫の冷媒としてよく利用されるようになりました。

しかしHFCsでも大きな温室効果はあり、地球温暖化係数(GWP)は二酸化炭素の100〜10,000倍以上という数値を記録しています。

特定フロンよりは少ないものの、地球温暖化の原因物質としては十分すぎるほどの問題を抱えていると言えるため、昨今では冷却にノンフロンを使う機器、あるいは代替フロンを使わない機器の導入が推奨されています。

国内のHFCs(代替フロン)排出量目標と取り組み

HFCs(代替フロン)は上記のように温室効果が極めて高いため、その回収と減少に向けた取り組みが地球温暖化防止に果たす役割は大きくなっています。

フロン規制「フロン排出抑制法」

日本では1988年より「オゾン層保護法」、2001年より「フロン回収・破壊法」が発行され、フロンガスの使用量削減・排出抑制が図られてきました。

その流れを強化するべく「フロン回収・破壊法」を改正する形で2015年に施工されたのが「フロン排出抑制法」で、以下のような取り組みを実施することを定めています。

  1. フロン類の転換、再生利用に よる新規製造量等の削減
  2. 冷媒転換の促進 (ノンフロン・ 低GWP(※)製品への転換)
  3. 業務用冷凍空調機器の冷媒適正管理(使用時漏えいの削減)
  4. 充塡の適正化、回収の義務
  5. 再生・破壊処理の適正化

この中でも3番目にあたる使用時漏洩の削減においては、漏洩したフロンの量も算出することが義務付けられています。

特に1年間で二酸化炭素1000トン以上に値する温室効果をもたらす量を排出した場合は環境大臣や経済産業大臣により都道府県に公表されることになっています。

フロン類は温室効果が相当に高いため、漏洩した量が1〜10トンというわずかな量でも都道府県の検査立ち入りの対象となる可能性があります。

これに伴うサステナビリティ戦略への影響、企業イメージの低下は計り知れないため、老朽化した冷房や冷蔵・冷凍機器の運用や破棄など関連した業務を進める際には細心の注意を図って進める必要があるといえるでしょう。

※GWP:地球温暖化係数(Global Warming Potential)の略称。二酸化炭素基準でどれだけ地球温暖化に寄与しているかを表している数値。

HFCs(代替フロン)由来の排出量削減

世界各国で温室効果ガスの削減目標が発表される中、地球温暖化への影響が大きいHFCsも削減対象としてとらえられるようになりました。

日本でも中期目標として、HFCs排出量を2030年までに2013年比32%削減することをCOP21に先立って表明しています。

パリ協定においては、長期目標として代替フロンの生産・消費*を2036年までに2013年比率85%削減することを長期低排出戦略に記載しています。

日本は世界的な空調設備や冷凍機のメーカーが立地するため、最先端の低温室効果を持つノンフロン冷媒を開発することも併せて表明しているのも特徴です。

消費*(消費=生産+輸入-輸出)

海外のHFCs(代替フロン)削減目標と取り組み

EUにおける代替フロンガス規制

EUでは2006年からフロンガスの漏洩防止・回収に関する規制を定め、2015年より「F-Gas Regulation」(以下、Fガス規則)として生産などにも対象を広げた改正案を出しています。

近年では2050年までにカーボンニュートラルを目指すサステナビリティ戦略の一環としても重視され、HFCs(代替フロン)を含めたフロン類も対象として規制が進められるようになりました。

2024年に新しいFガス規則が採択(2月)・発効(3月)されました。当規則では、従来の規則を廃止・置換し、欧州グリーンディールに沿ったものとして、HFC割当の更なる縮減や機器の市場投入禁止の拡大(例:一定容量の分割形エアコン/ヒートポンプで段階的にHFC禁止)などが盛り込まれました。

EUにおける冷媒規制

Fガス規則で定められた割当の基準内にHFCs(代替フロン)が含まれる場合を除いては、冷媒の使用が認められません。

2020年からはその規制はさらに強化され、GWP 2500以上のものについては冷蔵庫や冷房、ヒートポンプの冷媒装置への使用が禁止されるようになり、製品、カテゴリ別の規制が強化されました。

また新たに製造される冷媒装置においては、アンモニアや二酸化炭素などフロンを使用しないノンフロンのものが推奨されるようになっています。EU加盟国では規制が大幅に強化された影響で、2015年よりフロン類の使用量は年々減少傾向です。規制強化により、今後も使用量の減少傾向は続くと考えられるでしょう。

フロンの需要とHFCs排出の今後の動向

前述通り特定フロンとしてみなされたCFCやHCFCについては、オゾン層の破壊効果が大きな問題となり、現在では大きく需要を減らしています。

日本においては2005年までにHCFC以外のオゾン層破壊硬貨を持つフロンの生産・消費が停止され、HCFCについても2020年までに生産・輸入とも終了しています。

ただモントリオール議定書は機器の使用停止までは求められていないため、今後は残ったHCFC製品を大気中に放出せずに破棄を進めるかが重要になっています。

しかしHFCsについてはCFCやHCFCの代替として利用される中で2000年代以降増加してしまいました。

そのため、現在ではノンフロン製品の普及や冷房の低GWP化により市中ストックを減少していく仕組みが急務となっています。

また発展途上国などの国々は、技術的・経済的な課題により削減が遅れている場合があるため、国際的な協力が求められています。

まとめ

HFCs(代替フロン)は温室効果が非常に高いですが、冷媒装置など決まった用途に使われるためにピンポイントでの対策はしやすく、カーボンニュートラル戦略が世界的に進められているため今後も厳格な規制が予想されます。

日本では政府による漏洩量の公表やEUの投入量割り当て制度など現行のものでもサステナビリティ戦略やブランド戦略に大きな影響を与えるものがあるため、古い冷房装置の廃棄など関連する業務においては十分考慮した上で実行することをおすすめします。特に国内では世界シェアの高い冷房・冷蔵装置を提供する企業も多いため、代替フロンの削減技術、ノンフロン装置などにも注目が集まる可能性があります。

#再エネ#省エネ

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参考文献

[1]経済産業省(2016)「改正フロン法に基づく今後の取り組みについて
[2]経済産業省(2021)「代替フロンに関する状況と現行の取組について
[3]経済産業省(n.d.)「フロン排出抑制法の概要
[4]EFCTC(2023)「THE REVIEW OF THE EU’S F-GAS REGULATION: A LEGISLATIVE TIMELINE
[5]経済産業省(2015)「欧米のフロン規制について – (1) EU における新 F ガス規制
[6]経済産業省(2016)「フロン排出抑制法の概要 ~フロンに関するライフサイクル全体の取組~

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  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。
    情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

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