Last Updated on 2024年2月26日 by Yuma Yasui

このコラムでは、CDP対応初年度でどこから始めればよいのかわからない、CDP回答に興味があるがアクションに起こせていない、といった方に向けて、CDP回答に向けた大まかな流れ、回答のポイントなどを解説します。また、2024年のCDP回答は2023年のCDP回答と大きな変化があると想定されており、2023年と記載されている箇所はCDP質問書2023に関する箇所になります。

※関連記事:企業の環境影響を評価・公開するCDPとは?

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CDPとは?

CDPの概要

CDPとは「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことを目的に活動している国際的な環境非営利団体です。2000年に英国で設立された、国際的非政府組織(NGO)であり、気候変動、水セキュリティ、森林減少リスク・コモディティの3分野における、企業や自治体のグローバルな情報開示基盤を、投資家・企業・各国政府へ提供しています。

また、世界経済における環境報告のグローバルスタンダードとして、企業・自治体の環境インパクトに関する世界最大のデータセットを保有しており、世界中のあらゆる投資家・購買企業・政策決定者が、CDPに集められた情報を活用し、データに基づいた意思決定を行っている。

CDPの企業に対する活動(2023年)

CDPは、現在では気候変動・水セキュリティ・フォレストという3つの分野での質問書を全世界で2022年は18700社に送付・評価し、回答のスコアリングデータの情報公開を行っています。

CDPの企業に対する活動の図解

出典:CDP『CDPからの情報提供:リーディングテナント行動方針に係るセミナー』(出典を元に当社作成)

まず、CDPに対して機関投資家や協同する購買企業・団体からの要請があった場合、CDPがそれらの要請を代表し、回答を求められている企業に質問書を送付します。企業はCDPが公表している質問書の回答方法のガイダンスおよび、スコアリング基準を参考に質問書に回答します。また、要請がなくとも、企業が自主的に回答することも可能です。企業の回答後、CDPは質問回答のスコアリングを行い、回答企業は多くの投資家・納入先に対して一度にスコアリングデータの情報を開示します。

CDPに対応するメリットとして、要請元の機関投資家や協同する購買企業はCDPデータをビジネスの意思決定や取引企業とのエン ゲージメントに活用できます。また一方で回答をした企業は、情報開示を通じた企業競争力の強化やその回答作業を通じて、自社が直面している 環境リスク・機会やベストプラクティスへのさらなる理解などがメリットとして挙げられます。

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CDP質問書の全体構成

質問書とは?(2024年)

CDPでは2023年の回答まで、気候変動・水セキュリティ・森林の3つの質問書を企業に用意しており、企業の属するセクターごとに合わせて送付する質問書の数を変えていました。一方、CDPでは2024年の回答では今まで最大3種類送付していた質問書を1つに統合することを発表しました。
弊社が2024年1月時点での理解ですが、全ての企業に3つの質問書が統合された質問書が送付されるわけではなく、CDPが気候変動と水の質問書を送付すべきだと判断した場合には、気候変動と水が統合された質問書が送付されると考えています。

出典:CDP、Introducing CDP’s new integrated questionnaireより弊社作成

気候変動質問書の種類(2023年)

CDP質問書2023では完全版・一般セクターと簡易版の2種類が存在しておりCDP質問書2023に関して記述します。(2024質問書でも2種類存在するのかは分かり次第記載いたします

一般的な企業は完全版に回答しますが、回答初年度や年間売り上げが約330億円(2.5億ドル)未満の場合は回答着手時に簡易版を選ぶことが可能です。簡易版では完全版と比べて質問数が減少し、基礎的な質問に絞られるため、TCFDの要素は少なくなっています。また、採点はされますが評価の方法は一部完全版と異なり、最高でもA-の評価となります。

CDP気候変動質問書の構成(2023年)

気候変動質問書は完全版・一般セクターにおいては、以下の表の通り15個のモジュールで構成されています。簡易版については、以下の表からC9、C11、C15を抜いた計12個のモジュールで構成されています。

CDP気候変動質問書の構成(完全版/一般セクター)

出典:CDP『CDPからの情報提供:リーディングテナント行動方針に係るセミナー』(出典を元に当社作成)

TCFDとCDPのつながり(2023年)

CDPはTCFDでの開示項目を評価するため、まずTCFDにしっかりと対応することがCDPへの対応につながります。以下はTCFD開示項目とCDP各項目の質問とのつながりを示す表になります。

TCFD開示項目とCDP各項目のつながり

出典:CDP『[企業向け] CDP2023気候変動質問書 導入編』(出典を元に当社作成)

このように、TCFD開示項目への対応をしていればCDPでの開示項目のうちの多くの質問に既に対応が出来ている状態になります。

また、TCFDはISSBのIFRSサステナビリティ開示基準に移行し、それに伴いCDPとISSBは気候変動開示基準を統合する流れがあります。IFRS財団と国際評価機関CDPは、CDPの環境開示プラットフォームにおいて ISSBの「気候関連開示(IFRS S2号)」の枠組みを反映する旨を共同で公表し、2024年度の開示サイクルから導入される予定です。

回答までのステップ

3パターンの回答方法(2023年)

CDPの回答方法には以下の3つのパターンがあります。

①主に機関投資家からの要請を受け、CDPが対象企業に質問書を送付
②CDP質問書回答企業の要請を受け、CDPからサプライヤーに質問書を送付(サプライチェーンプログラム)
③自主的にCDPの質問書に回答

基本的には、①、②のように機関投資家や協同する購買企業・団体からの要請がある場合がほとんどですが、③のように要請がなくとも、企業が自主的に回答することも可能です。

回答までの年間スケジュール(2023年)

CDP質問書の回答スケジュールは、年間を通じて行われる設計となっています。
2024年のCDP回答のスケジュールは2024年1月時点では2024年4月にプラットフォームが公開され、2024年6月から9月が回答可能期間となると公表されています。

回答費用(2024年)

CDPは回答事務費用を設定しています。この回答事務費用は、料金レベルがいくつか設定されており、その料金レベルに応じたメリットを享受することができます。また2024年の回答から日本企業は①Essential level feeを選択することが不可能になった点は注意が必要です。

①Essential level fee N/A 円(日本企業は選択不可能)

  1. CDP コーポレートダッシュボードページ等を通じた回答 
  2. CDP ツールの利用(レポーテイングフレームワークとガイダンス) 
  3. CDP を通じた情報開示により(投資家及び顧客等のステークホルダーとの)対話の機会 

②Foundation level fee 310,000 円(+消費税) 

  • 上記の3つ+CDP ジャパンイベントの優先的参加権限

③Enhanced level fee 740,000 円(+消費税)

  • 上記の4つ+その他様々な特典

回答提出までの流れ(2023年)

①質問書への回答作成

自社の今までのTCFDレポートなどに沿って質問書への回答を作成します。

過去のCDP気候変動質問書の具体的な質問についてはCDPホームページから確認することが可能です。

②回答内容の模擬採点

CDPホームページからCDP Climate Change 2023 Scoring Methodologyというページにて、各項目、各質問の配点や採点基準が確認できるため、それらを参考に回答内容の文字採点を行います。

③模擬採点結果に基づき回答内容の修正

模擬採点の結果に基づき、記載の漏れ、回答のルールに添っているかなどを確認し、回答の修正をおこないます。

④回答提出

オンライン回答システム(ORS)上で回答を記録し、提出します。 
オンライン回答システムの使用については、まず4月中旬に送付された回答要請メールから、アカウントの作成またはサインインを行います。 回答ダッシュボードにてメインユーザーの設定を行い、回答事務費用の支払い手続きを完了します。その後、オンライン回答システム(ORS)上で回答を作成し、7月27日までにORS上で回答を提出します。

回答のポイント(2023年)

回答のポイントでは、実際に回答を作成する際に気を付けたい回答記入のルールや、初めての回答の際につまづきやすいポイントをいくつか抜粋し紹介します。

定義を回答する質問について

定義を回答する質問については、その回答内容は当該質問のみではなく、質問書全体を通して適用されるものになるため注意が必要です。定義を回答する質問としては例として以下のものなどが挙げられます。

定義を回答する質問の例

  • C0.4:財務的な情報を回答する際に使用する通貨について
  • C2.1a:気候変動による影響を検討する際、短期・中期・長期の時間軸について
  • C2.1b:気候変動による影響の文脈で財務または戦略上の重大な影響について

これらの質問にて回答した定義を使用し、以下の様に他の質問に答える場合があります。

前項目で回答した定義を使用する質問の例

  • C2.3a:貴社の事業に重大な財務的または戦略的な影響を及ぼす可能性があると特定されたリスクを記入してください。

この質問については、C2.1b で回答した財務または戦略上の重大な影響があると判断されたリスクが対象であり、そのリスクが想定される時期(短期・中期・長期)については C2.1aで回答したタイムフレームの定義に従って回答すること、そのリスクに起因する潜在的な財務影響額についてはC0.4で指定した通貨を単位として回答すること、と記載されています。

このように定義を聞かれる質問の場合には、全体を通して適用されることを意識し、他の質問との整合性を保つことがポイントです。

年・年度について

年・年度については、対象期間の最終日が属する年を指すことを、質問書全体において想定されています。

例えば、気候関連目標の年や設定年を記入する欄にて、2030年4月1日〜2031年3月 31日の期間を指す年度の場合、2031と当該年度の終了年を入力します。

異なる回答間の整合性について

上記の定義を回答する質問の場合、その定義の質問書全体を通しての整合性が必要とされるように、異なる質問間の回答の整合性についても正確性の評価を目的として確認が行われます。CDPは整合性を必要とする対象の質問についても補助資料などで詳しく説明しており、どのような基準で整合性が確認されるかも対象質問ごとに明確に決められています。

回答の整合性を要する質問の抜粋

データ1データ2詳細
対象質問対象欄対象質問対象欄
C5.2: 基準年と基準年排出量を記入してください。スコープ3カテゴリーの行C6.5: 除外項目を開示、説明するとともに、貴社のスコープ3全世界総排出量を説明してください。全体算定/報告されているスコープ3の カテゴリーが、データ1(基準年)とデータ2(報告年)とで一致している
出典:CDP『2023年 CDP気候変動質問書 回答に向けて(補助資料)[』(出典を元に当社作成)

自由記入欄について

スコアリング基準全体を通して自由記入欄「自社固有の影響の状況」に対し、配点されています。回答を裏付けるための具体的なケーススタディを提供することでポイントが与えられる質問があり、STARアプローチという文章構成を使用することが推奨されています。STARアプローチは以下の4つの要素で構成されています。

1)状況(Situation):現状や背景はどのようなものか
2)課題(Task):何をしなければならないのか/解決すべき課題は何か
3)行動(Action):実施した一連の行動はどのようなものか
4)結果(Result):行動した結果、最終的にどのような成果が得られたか

この構成をもとにした「自社固有の影響の状況」についての十分、不十分な回答例は以下になります。

質問
同じ地域で活動する企業、同じセクターの企業と区別できるような、環境問題の自社にとっての具体的な影響、自社の具体的な活動、固有の製品/サービス、について記載してください。

不十分な回答例 
日本には、地震や台風、大雨などの自然災害による水害リスクにさらされている地域があります。これらのリスクは、バリュー チェーン全体で取り組むべき経営課題であると認識しています。 

十分な回答例 
全生産量の 3 割を占める日本国内の拠点、特にA県に立 地するC工場とD工場は沿岸部にあり、海面上昇や大雨などの自然災害による浸水リスクにあります。実際、大雨による 洪水で最大 4 週間生産が停止するなど、日本での事業の 60%が中断するリスクにさらされています。そのため、施設周 辺に堤防を設置し、浸水を防ぐためのポンプシステムを導入しています。これにより、当該工場での浸水リスクの軽減が行えた。

まとめ(2023年)

以上この記事では、主にCDP気候変動質問書の回答に向けたステップと回答の際のポイントについてを解説しました。

CDP対応は投資家やサプライチェーンの判断基準として重要な要素になります。また、現在CDPの気候変動開示で用いられているTCFDをベースにした枠組みが、より厳格なISSBの枠組みに取って代わるなど、近い将来、企業はより発展的な気候開示が要求されます。そのため、他の企業と遅れをとらないためにも、早いうちからCDP対応の準備を進めることを推奨します。

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参考文献

[1]CDP「[企業向け] CDP2023気候変動質問書 導入編
[2]CDP「[企業向け] CDP概要と回答の進め方
[3]CDP「2023年 CDP気候変動質問書 回答に向けて(補助資料)
[4]CDP「CDP Climate Change 2023 Scoring Methodology
[5]CDP「CDPからの情報提供:リーディングテナント行動方針に係るセミナー
[6]CDP「Introducing CDP’s new integrated questionnaire


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リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 伊藤裕巳

    リクロマ株式会社コンサルタント。アメリカ、カリフォルニア州の大学にて、Social Behavioral Science/Economicsを専攻。大学では経済学や環境学を中心に学ぶ。社会起業家支援のNPO法人にて、子供に関する社会課題解決の領域を担当後、ビジネスの視点から社会課題解決や気候変動に対する企業の取り組みに強い関心を持ち、2023年にリクロマ株式会社へ参画。