Last Updated on 2024年5月2日 by Yuma Yasui

気候変動対策を行う企業の多くは、CDP(Carbon Disclosure Project)について耳にしたことがあるでしょう。しかし2024年は質問書に大きく変更が加えられるなど、その様相は刻々と移り変わっています。

本記事では、複雑化するCDPを体系的に解説します。

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CDPの基礎的な情報について

CDPの基本情報

CDPは、投資家、企業、国家、地域、都市の活動やそれに伴う環境影響を評価・情報公開するプラットフォームを運営する英国の非政府組織(NGO)です。

2000年に「Carbon Disclosure Project」として組織が作られ、気候変動への影響のみを扱っていました。森林や水の分野にも対象を拡大していく中で、名称が現在の「CDP」に変更され、現在に至ります。[1]

今後は企業や公的機関に対し、質問書の回答を通して、1.5℃シナリオと整合した経営・運営を促す方針のもと、質問書等のさらなる進化が予想されます。

そんなCDPの組織体制や2021-2025戦略などについてより理解を深めたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
➡️リクロマ「企業の環境影響を評価・公開するCDPとは?

そして本記事では、これまでの取り組み状況や回答のコツ、今後の動向まで、網羅的に解説していきます。

日本・世界の取り組み状況

近年のビジネス界における環境への関心の高まりから、CDPを利用する企業も急増しています。

世界の動向

CDPは現在、130 兆米ドル以上の資産を保有する 740 を超える署名金融機関と協働しています。
そして2023年、CDPを通して署名金融機関や購買企業・機関から回答要請を受けた企業のうち、全世界で時価総額の3分の2を超える約23,000社(日本企業約2,000社を含む)が気候変動、フォレスト、水セキュリティに関する情報を開示しました。

CDPは2023年のスコア公表直後、気候変動質問書回答に関する簡潔なコメントを出しています。[2]コメントによると、CDPが定義する気候移行計画の21の指標を網羅する企業は気候移行計画を開示した4000社以上の企業のうちわずか81社であり、1.5度世界との整合という観点から見て企業のパフォーマンスは厳しいものになっていると考えています。

日本の動向

日本では2023年において、要請を受けた企業の質問書回答数が3テーマ合わせて1985社(2021年は1056社)、気候変動は1984社、水セキュリティは706社(2021年は261社)、フォレストは138社(2021年は87社)と、着実に増えていることがわかります。2024年から適用される質問の統合をきっかけに、影響度の高い企業を中心とした回答数の増加が見込まれます。また、日本のAリスト企業は気候変動110社、水セキュリティは36社、森林は7社が認定されてました。

環境に関する情報開示の評価機関として、CDPは今後もより多くの国内外の企業に活用されるでしょう。

世界・日本の企業の取り組み事例について理解を深めたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
➡︎コラム:CDP2023質問書でトリプルA評価を受けた世界・日本の事例3選

二つの回答要請スキーム

CDPの回答が要請される道は二つあります。

投資家要請スキーム

一つ目は投資家から要請される投資家要請スキームです。

現在署名している機関は全世界で680機関強あり、その運用資産総額130兆USドルを超えています。

投資家らは投資判断に非財務情報を活用するうえで、各企業の情報収集開示をCDPに委託しています。

実際に、サステナビリティ・リンクローンのサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)にCDPのスコアでハイランクを獲得することを掲げている企業もあり、CDPを通した非財務情報の開示、と資金調達が深くリンクしている例だと言えます。

サプライチェーンプログラム

二つ目はサプライチェーンプログラムです。

社を超えるサプライチェーンメンバーが参加しており、そのメンバー数は全世界で200組織強、調達総額は5.5兆USドルを超えています。日本企業の中では味の素や本多技研工業等が挙げられます。

サプライチェーンメンバーから要請されている場合はサプライチェーンモジュールSC質問がSC0~4の形で追加されます。

またSCの質問に対する回答と合わせて、当該企業のサプライヤーエンゲージメント評価(SER評価)が、要請元のサプライヤーチェーンメンバー企業には共有される事となります。

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他のイニシアチブとの関係性

CDPは、各基準やフレームワークとの整合性の強化を通して、開示の負担を減らす狙いです。すなわち、CDPに回答するだけで、その他の基準を満たし、幅広い市場に受け入れられる事になります。

各基準

IFRS S2:ポストTCFD。2024年から整合性がとられる見通し。

ESRS:欧州サステナビリティ報告基準。整合度合いを現在調整中。

TNFD:自然関連財務情報開示タスクフォース。TCFDと構成が近いことから、現在部分的に整合中。

SEC:米国証券取引委員会。今後どう整合性をとっていくか、スケジュール調整中。

認証や取り組み

SBTi:CDPが設立・運営にかかわる認証制度。1.5度と整合した削減目標を持つと認められた企業に対してSBT認証が与えられる。

RE100:CDPが設立・運営にかかわる取り組み。事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにし、温室効果ガスの削減を目指す企業が賛同を示し加入する。

各基準や認証とのより詳しい関係性についてはこちらのコラムをご参照ください。
➡️コラム:CDP 2024年度の押さえておくべき変更点とは?
➡️コラム:わかりやすく図で解説【TCFD/SBT/CDP/RE100/TNFDとは?】

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CDP回答のメリットデメリットやスコアアップについて

回答メリット

CDPは、CDPの枠組みに則った情報公開を行うことによって企業が得られるメリットとして、以下を挙げています。[1]

・企業の評判の維持・改善
・企業競争力の強化
・これまでの取り組みの強調
・リスクと機会の発見
・規制の先取り

以上の通り、外部からの評判や内部の戦略の見直しにつながる取り組みとして、CDPに回答することには大きなメリットがあります。

さらなるスコアアップには?

すでにCDPに回答している企業や、まだ回答したことがないが検討している企業が気になるところはスコアアップ方法ではないでしょうか。

まず、質問書全体を通して注意するとよいポイントが2つあります。

一つ目は「定義を回答する質問で、一貫性を意識すること」、二つ目は「自由記述はSTAR方式と自社固有性を意識すること」です。

そうしたポイントに留意しながら一旦作成した回答を、スコアリング基準と照らし合わせてブラッシュアップしていくことがより良いスコアメイキングにつながります。

また、基準と照らし合わせた模擬採点や採点をもとにしたアドバイザリー支援にご興味がある方は一度お気軽にご相談ください。

Aリスト選出企業・A評価基準 

CDP回答に慣れてきて、次はAリスト入りを目指したいと考える企業も多いのではないでしょうか。

前述の通り、2023年度の日本のAリスト企業は気候変動110社、水セキュリティは36社、森林は7社が認定されてました。

CDPでA認定を受けるには、1.5℃かつネイチャーポジティブな世界と整合した経営を行っている必要がありますが、CDPは具体的にどんな経営がA評価基準を満たす経営かを明示しています。

この6つの基準はすべてのテーマ、すべてのセクターに当てはまる基準となっています。ご覧いただくと、リーダーシップポイント獲得が肝となっています。

1. 最低限必要なリーダーシップポイントを取得する(プログラムによって異なる)
2. 重大な除外事項がない(C6.4, C6.4a / W0.6a / F0.5a, F4.5a, F6.2)
3. 投資家要請に対し回答内容を公表して提出する
4. CDP スコアリングチームによる定性的なリーダーシップ質問項目チェックを通過する
5. CDP の評判リスクのチェックを通過する(下記参照)
6. CDP スコアリング運営委員会の承認を受ける(下記参照)

以下二つはセクター別の基準となります。

7. 金融サービス部門の企業は、以下の基準を満たす必要がある(C12.1, C-FS0.7):
a. 銀行業(銀行)または保険引受業(保険会社)の会社は、顧客とのエンゲージメントを報告する
b. アセットオーナーは、投資先とのエンゲージメントを報告する c. 資産運用会社は、顧客および投資先とのエンゲージメントを報告する

8. 石油・ガス・石炭セクターの会社は、以下の基準を満たす必要がある:
a. C4.1a または C4.1b において、ベストプラクティスに完全に沿った短期排出量目標を報告、すな わち、(CDP ルートまたは SBTi ルートで)得点可能な最高点のリーダーシップポイントを獲得する
b. 回答者は、C-OG9.5a/C-CO9.5a に記されているように、いかなる新規の探鉱や既存の油田・天 然ガス田・炭鉱の拡張に関与していない

ここでは全体的なAリスト要件をお伝えしましたが、各テーマに特有のAリスト要件もあるため、自社の該当テーマに合わせて、適宜プラットフォーム上に公開されている要件を確認するとよいでしょう。

具体的なAリスト選出企業について理解を深めたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
➡︎コラム:CDP2023質問書でトリプルA評価を受けた世界・日本の事例3選

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CDPの今後の動向について

今後の動向は?

CDPはCorporate Disclosure Framework Key Changes for2024という資料の中で、気候変動・水セキュリティ・森林の3つの質問書の統合とIFRS S2との統合を中心に次の項目に関する主要な変更点を示しています。

  1. 気候変動・水セキュリティ・森林(+生物多様性・プラスチック)の3つの質問書の統合
  2. IFRS S2との整合
  3. TNFDやESRSとの関係性
  4. 森林質問書とスコアリングに関する変更
  5. テーマ割り当て制度の変更
  6. 金融サービス企業向け・中小企業向け質問書に関して
  7. その他の主要な変更点

弊社記事「CDP 2024年度の押さえておくべき変更点とは?」では、一つ一つをより詳しくお伝えしております。特に5.テーマ割り当て制度の解説部分では、自社に送られてくるテーマの予想に役立つ資料やwebサイトをご紹介しています。

このような変化は、CDPの2021-2025戦略と整合しており、今後も様々な変更を通してCDP質問書の設問内容やスコアリング基準が厳格化していくことが見込まれます。[3]

水セキュリティとは?

水セキュリティとは、企業の水リスクに対する取り組みを評価するものです。水リスクは、干ばつや洪水などの自然災害や、降雨パターンの変化や氷河の後退による淡水利用可能量の減少、すなわち資源枯渇といった形で企業の存続を脅かす事から、機関投資家の関心を集めています。

機関投資家の水セキュリティに対する関心の高まりを背景に、日本でも2022年から2023年にかけて2.7倍に増えています。今後は、質問書の統合に伴って、テーマ別に公開・非公開の選択ができなくなることから、回答企業はさらに増えると見込まれます。

中小企業も必要

2024年からの変更点として、CDPは簡易版質問書と、2023年にパイロット的に行われたprivate Markets 2023CDP SME quesstionnaireを統合しブラッシュアップして中小企業向け質問書(SME questionnaire)を提供していくとしています。

質問書の構成は完全版と似ていながらも、問題数が少なく、中小企業の開示負担をなるべく軽減したデザインとなっています。

弊社関連記事「CDP 2024年度の押さえておくべき変更点とは?

2024年の回答に向けた流れは? 

2024年4月11日時点でのCDPの公開情報を確認すると次のようなスケジュールが予定されています。

4月30日:質問書が入手可能

5月14日:CDPポータルがオープン

9月18日:回答書受付締め切り(評価を受けるにはここまでに提出する必要があります)

10月2日:企業開示終了(9月18日以降の提出は受理されますが評価されません)

一方、スコアリング基準の詳細な公開時期は未定であることから、4月以降はこまめにチェックしておくと、情報を先取りできるでしょう。

回答に向けた流れについてさらに詳しい解説を読みたい方はこちらのコラムをご参照ください。
➡️リクロマ「CDP2024統合質問書の回答に向けた流れを解説

CDP 気候変動・水・森林 質問書対応!

2023年のスコア発表を踏まえ、どのように2024年回答に備えるべきか。
基本的なCDPの知識から質問書におけるよくある失点箇所や

スコアアップのポイントを説明します。

参考文献

[1] CDP Worldwide,  Webサイト(最終閲覧:2023年10月16日)
[2]CDP Wroldwide, “New CDP data shows companies are recognizing the need for climate transition plans but are not moving fast enough amidst incoming mandatory disclosure
[3]CDP Worldwide, “accelerating the rate of change CDP STRATEGY 2021-2025
[4]CDP レポーティングガイダンススコアリング基準
[5]CDP「Corporate Disclosure Framework Key Changes for2024 

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当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 利根川 桜子

    2023年5月入社。大学時代には、人権・共生社会に関するボランティアやカナダ マギル大学への留学を経験。 留学先でサステナビリティについて複合的に学んだことをきっかけに、サステナビリティ×ビジネス領域からの環境・社会課題解決に興味を持ち参画。 現在はリクロマ株式会社にてTCFD開示支援、Scope1,2,3算定、CDP開示支援等を行う。 慶應義塾大学文学部。

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