Last Updated on 2025年3月26日 by Sayaka Kudo
【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】
本コラムでは、複雑化するCDPについて基本情報から、世界の普及状況、情報開示の仕組み、今後の動向、最新のスケジュールまで網羅的に解説していきます。
<サマリー>
・CDPは、企業や公共団体の環境情報開示システムを運営する英国の非政府組織(NGO)
・日本を含め世界中の企業でCDP質問書の回答が進んでいる
・CDP質問書の回答要請は投資家要請スキームとサプライチェーンプログラムの2つがある
・CDP質問書は更新されるため、企業は順次対応が必要になる
CDPの組織体制や2021-2025戦略などについてより理解が深まる!
→企業の環境影響を評価・公開するCDPとは?
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環境情報開示機関のCDPとは?
CDPは、2000年に設立した世界で唯一の独立した環境情報開示システムを運営する英国の非政府組織(NGO)です。
CDPの目的は、「将来世代を守るために、アースポジティブな意思決定を可能にする新しい情報を提供すること」であり、この目的を達成するために、CDPは環境情報開示システムを運営し、ビジネス、資本、政策、科学の各分野におけるリーダーと協働し、アースポジティブな意思決定を可能にする情報を提供しています。
世界および日本の取り組み状況
投資家や企業における環境への関心の高まりから、CDPの環境情報開示システムを利用する企業も急増しています。
世界の動向
世界では、運用資産総額142兆米ドルを有する700を超える金融機関が、CDPを通じて企業に対して気候変動、フォレスト、水セキュリティの情報開示を求めています。
また、世界の時価総額の3分の2を占める24,800社以上の企業が、CDPを通じて環境情報開示を行っています。 民間以外でも、1,100を超える自治体が、CDPを通じて環境情報を開示しています。
しかし、気候変動の緩和の観点から、より多くの企業や公的機関による環境課題への取り組みの拡大が重要だとCDPは示唆しています。
日本の動向
日本では2023年において、要請を受けた企業の質問書回答数が3テーマ合わせて1985社(2021年は1056社)、気候変動は1984社、水セキュリティは706社(2021年は261社)、フォレストは138社(2021年は87社)と、着実に増えていることがわかります。
さらに、この成果は、2024年から適用される質問の統合をきっかけに、影響度の高い企業を中心とした回答数の増加が見込まれます。取り組みの質の観点では、日本のAリスト企業は気候変動110社、水セキュリティは36社、森林は7社が認定されていました。
環境情報開示のステップ
対象となる情報開示組織は、以下の3つになります。
・企業(中小企業を含む)CDPキャピタルマーケッツ署名機関およびサプライチェーン・メンバーから要請を受けた企業と、正式な要請を受けずに自主的に情報開示を行う企業
・自治体
・公共機関
回答要請パターン
企業が情報開示するのは、CDPの回答が外部から要請されて情報開示に至る場合と自主的に開示する場合の2通りあります。前者の外部から要請される場合は、投資家から要請されるパターンとサプライチェーンかから要請されるパターンがあります。
投資家要請
一つ目は投資家から要請される投資家要請スキームです。
冒頭でも言及しましたが、運用資産総額142兆米ドルを有する700を超えるキャピタルマーケッツ署名金融機関が、CDPを通じて企業に対して環境情報開示を求めています。
投資家らは投資判断に非財務情報を活用するうえで、各企業の情報収集開示をCDPに委託しています。
実際に、サステナビリティ・リンクローンのサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)にCDPのスコアでハイランクを獲得することを掲げている企業もあり、CDPを通した非財務情報の開示と資金調達が深くリンクしている例だと言えます。
サプライチェーンプログラム
二つ目はサプライチェーンプログラムです。
サプライチェーンメンバーから要請されている場合は、サプライチェーンモジュールSC質問が追加されます。SCの質問に対する回答と合わせて、当該企業のサプライヤーエンゲージメント評価(SER評価)が、要請元のサプライヤーチェーンメンバー企業には共有される事となります。
CDPサプライチェーンプログラムでは、企業が環境開示データを利用することで、リスクを特定し、機会を獲得することができるため、サプライヤー契約の意思決定を促進します。
2024年では、世界で330社以上の購買組織が60,000社以上のサプライヤーと協働し、環境課題に取り組んでいます。
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環境情報開示の方法
企業や自治体、公共機関などの対象となる組織はCDP質問書に回答することで情報開示を行い、回答内容に基づいてスコアが付与されます。
CDPは2024年に、従来の3つの質問書を1つの質問書にまとめました。これにより情報開示者は、複数の環境課題について1カ所で回答し、包括的な環境情報管理のアプローチを取ることが可能になりました。
CDP質問書には、以下のバージョンがあります。
回答メリット
CDPは、企業が環境情報開示を行うメリットとして、以下を挙げています[1]。
・投資家に比較検討可能な情報を与える
・サプライチェーン構築の契約で優位性を得られる
・気候移行計画や森林減少、さらにはサプライチェーンなどに関する義務などの規制の先取りになる
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CDPの今後の動向について
2024年度変更点の振り返り
CDPは「Corporate Disclosure Framework Key Changes for 2024」の中で、気候変動・水セキュリティ・森林の3つの質問書の統合とIFRS S2との統合を中心に次の項目に関する主要な変更点を示しています。
- 気候変動・水セキュリティ・森林(+生物多様性・プラスチック)の3つの質問書の統合
- IFRS S2との整合
- TNFDやESRSとの関係性
- 森林質問書とスコアリングに関する変更
- テーマ割り当て制度の変更
- 金融サービス企業向け・中小企業向け質問書に関して
- その他の主要な変更点
このような変化は、CDPの2021-2025戦略と整合しており、今後も様々な変更を通してCDP質問書の設問内容やスコアリング基準が厳格化していくことが見込まれます[3]。
2024年度のCDP質問書の変更点の詳細についてはこちら!
⇒「CDP 2024年度の押さえておくべき変更点とは?」
他の情報開示枠組みとの関係性
EUは、企業の情報開示の負担を減らすためのオムニバス法案を発表しましたが[5]、CDPでも、今後、各基準やフレームワークとの整合性の強化を通して、開示の負担を減らす狙いがあります。
各基準の整合状況
IFRS S2:整合済み
ESRS(欧州サステナビリティ報告基準):広範な共通性と相互運用性
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):部分的に整合済み
SEC(米国証券取引委員会):規則最終版の発表を受けて、現在、整合状況を確認中。
認証や取り組み
SBTi:CDPが設立・運営にかかわる認証制度。1.5度と整合した削減目標を持つと認められた企業に対してSBT認証が与えられる。
RE100:CDPが設立・運営にかかわる取り組み。事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにし、温室効果ガスの削減を目指す企業が賛同を示し加入する。
各基準や認証とのより詳しい関係性についてはこちら!
→わかりやすく図で解説【TCFD/SBT/CDP/RE100/TNFDとは?】
中小企業も必要
2024年からの変更点として、CDPは簡易版質問書と、2023年にパイロット的に行われたprivate Markets 2023CDP SME quesstionnaireを統合しブラッシュアップして中小企業向け質問書(SME questionnaire)を提供していくとしています。
質問書の構成は完全版と似ていながらも、問題数が少なく、中小企業の開示負担をなるべく軽減したデザインとなっています。
2025年の回答に向けた流れ
2025年3月時点でのCDPの公開情報を確認すると次のような開示サイクルのスケジュールが予定されています。
4月28日の週:回答要請機関(署名金融機関、サプライチェーンメンバー等)のポータルオープン
6月16日の週:回答開始
9月15 日の週:スコアリング対象となる回答提出期限
一方、スコアリング基準の詳細な公開時期は未定であることから、4月以降はこまめにチェックしておくと、情報を先取りできるでしょう。
回答に向けた流れについてさらに詳しい解説を読みたい方はこちらのコラムをご参照ください。
→CDP2024統合質問書の回答に向けた流れを解説
まとめ
本コラムでは、CDPの基本情報から日本を含めた世界での開示状況、回答の仕組み、さらにはCDPの今後の動向まで網羅的に解説しました。企業による気候変動への対応や自然資本の保全など環境課題への取り組みは、投資家へのアピールや競合との差別化のためだけでなく、企業自身の持続可能な経営につながります。
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【このホワイトペーパーに含まれる内容】
・CDPの概要やその取り組みについて説明
・気候変動質問書の基本情報や回答するメリット、デメリットを詳細に解説
・気候変動質問書のスコアリング基準と回答スケジュールについてわかりやすく解説

参考文献
[1] CDP Worldwide Webサイト(閲覧日:2025年3月27日)
[2]CDP Wroldwide(2023) “New CDP data shows companies are recognizing the need for climate transition plans but are not moving fast enough amidst incoming mandatory disclosure”
[3]CDP Worldwide(Nd) “accelerating the rate of change CDP STRATEGY 2021-2025”
[4]CDP (2024) ”Corporate Disclosure”
[5]JETRO「欧州委、人権・環境デューディリジェンス実施対象を大幅削減する法案発表」2025年03月07日(閲覧日:2025年3月9日)
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