Last Updated on 2026年2月16日 by Sayaka Kudo
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脱炭素経営への対応が求められる中、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標であるSBTの取得を目指す中小企業が増えています。一方で、「自社は対象になるのか」「申請は難しくないのか」と不安を抱える企業も少なくありません。
本コラムでは、中小企業向けSBTの要件や目標水準、具体的な申請手順までを分かりやすく解説します。
<サマリー>
・SBTとは、企業が自らの温室効果ガス排出削減目標を、科学に基づいて設定するためのフレームワーク
・リソース不足が懸念される中小企業のために中小企業版SBTが考案
・中小企業版SBTの対象企業となるには複数の要件を取得する必要
・中小企業版SBTでは3種類の目標設定(短期の目標、短期目標の維持、ネットゼロ目標)が可能
SBTは温室効果ガス目標
SBT(Science Based Target )とは世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるため、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことで、サプライチェーン全体の排出量削減目標の設定が求められます。
中小企業版SBTは手続き負担が少ない
中小企業版SBTは、中小企業向けに手続き負担が少なく、着手が容易なよう設計されたSBT基準です。SBTを中小企業向けに簡素化したもので、気候変動対策の一環として中小企業が採用しやすいように設計されています。中小企業向けのSBTは以下の要件を満たしている企業が取得可能です。
必須要件
| 区分 | 要件内容 |
|---|---|
| 排出量基準 | Scope1およびロケーションベースのScope2排出量の合計が10,000tCO2e未満 |
| 業種制限① | 金融機関に分類されないこと |
| 業種制限② | 石油・ガスセクターに分類されないこと |
| セクター別基準 | SBTiがセクター別に開発した固有の基準を使用して目標設定を行う必要がないこと |
ただし、金融機関および石油・ガス企業に関しては中小企業であっても、中小企業向けSBTを使用することはできません。また、金融機関に関してはファイナンスセクターの枠組みを使用し、パリ協定の目標と一致させるために貸付けや投資ポートフォリオを整える必要があります。
規模要件(上記かつ以下の3つ以上が当てはまること)
| 区分 | 基準 |
|---|---|
| 従業員数 | 250人未満 |
| 売上高 | 5,000万ユーロ未満 |
| 純資産 | 2,500万ユーロ未満 |
| 業種制限③ | FLAGセクター(森林・土地・農業)に属していないこと |
また、以下のセクターに属する中小企業は持続可能性へのコミットメントとセクター固有のガイドラインへの準拠を示すために、追加の基準を満たす必要があります。以下が該当セクターの一例です。詳細についてはこちらのp.27を参照してください。
追加基準の対象となる主なセクター
| セクター区分 | 主な対象活動・内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 森林および製紙製品 | 林業、木材、パルプ、紙、ゴム | 森林資源管理や土地利用変化(LULUCF)への影響が大きく、FLAG関連要件への対応が必要 |
| 食品生産(農業生産) | 穀物、野菜、果実などの農業生産 | 土地利用・土壌管理・メタン排出などの管理が重要 |
| 食品生産(動物由来) | 畜産、酪農など | メタン排出、飼料、土地利用の影響を考慮 |
| 食品および飲料加工 | 加工食品、飲料製造 | 原材料由来排出(Scope3)の管理が重要 |
| 食品および主食の加工 | 穀物加工、製粉など | 農産物サプライチェーン全体の排出管理が求められる |
| たばこ | たばこ製造・加工 | 農業由来原材料およびサプライチェーン排出への配慮が必要 |
GRI(グローバル・リポート・イニシアチブ)が提供する「Forest, Land, and Agriculture」企業のセクターは広範で多くの低排出量の中小企業も含まれています。そのため、従業員や収益などの特定の条件を満たしている企業については中小企業向けSBT取得の対象となる場合があります。
中小企業向け3つのSBTの目標レベル
中小企業向けSBTでは以下3種類の目標設定が可能です。
1. 短期の目標
事前に定義された基準年から2030年度までに達成されるべきScope1およびScope2の温室効果ガス排出削減も表です。Scope3の短期の目標を設定することは求められていませんが、排出量を測定し、削減にコミットメントする必要があります。
目標水準は、50%削減(2018年度比)、46%削減(2019年度比)、42%削減(2020年〜2023年度比)から選択可能です。
2. 短期目標の維持
Scope1および2のゼロ排出を達成した企業が努力を維持し、継続的に改善するための目標設定です。このオプションを選択した場合、GHGプロトコルの基準に従い、進捗状況を年次報告し、目標の検証のためのサポート文書を提出する必要があります。
3. ネットゼロ目標
ネットゼロ目標を設定するために、まず1.5℃目標に準拠した短期の目標を設定する必要があります。基準年は2018年〜2023年の間で選択可能です。ネットゼロ目標には以下が含まれます。
- 2050年までに達成されるべきScope1,2および3のGHG排出削減目標
- 長期的目標が達成された際に、未軽減の排出を帳消しするとのコミットメント
費用
中小企業向けのSBTi認証費用は企業の年商の規模によって異なります。また、更新されるため定期的に確認することが重要です。以下が最新(2026年1月現在)の費用です。
| サービス区分 | Tier1(USD) | Tier2(USD) |
|---|---|---|
| SME Near Term(新しい排出削減目標を設定または、過去の排出削減目標を置き換える場合) | 1,250 | 2,000 |
| SME Net Zero(新しいネットゼロ目標を設定する場合) | 1,250 | 2,000 |
| SME Near Term + Net Zero(削減排出目標とネットゼロ目標を設定する場合) | 2,500 | 3,500 |
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⇒CO2削減貢献量とは?計算方法・プロセス・開示事例を紹介
中小企業版SBT取得の流れ
STEP①:SME目標設定のフォームの記入
企業の情報と目標を選択し、目標検証申請フォームを使用して質問に回答します。オンライン申請は以下の3つのパートに分かれています。
- SMEの一般情報:企業が目標検証サービスの対象となるかを確認するための一般情報
- 目標検証サービスの選択:サービスの選択、基準年の選択に関連する事前に定義された目標および排出量の提出が必要。温室効果ガスプロトコルに従って関連する活動と排出を含める
- 契約および支払い情報の入力
STEP②:企業の経営状況や財務状況の調査と承認
SBTiによって、情報が完全かつ正確であることを確認するためにレビューが行われます。情報が不完全または矛盾がある場合、レビューに遅れが生じる可能性があります。このプロセスを通過し、ターゲットの承認が確認されると、承認の通知がメールで送信されます。
STEP③:料金の支払い
契約条件が署名されたらSBTiから請求書が送付されるため、支払いの証明をSBTiに送信します。
STEP④:支払いの確認とターゲット公表の確認
SBTiが支払いの受領書を確認すると、目標の承認と登録がメールで送信されます。
STEP⑤: ターゲットの公表
目標はSBTiのウェブサイトと、提携先のWe Mean Businessのウェブサイトに公表されます。
目標値の見直し
目標値の見直しは以下の場合、必要になります。
・Scope3の排出がScope1,2および3の集計排出の40%以上になる場合。
・在庫または対象の協会内の排出除外が大幅に変更された場合。
・買収や売却、合併など企業の構造や活動に重大な変更がある場合。
・基準年のデータまたは目標設定に使用されるデータの変更に大幅な調整がある場合。
・科学的根拠に基づく目標設定に使用される予測や過程に重大な変更がある場合。
まとめ
本コラムでは、SBTの基本概念とともに、中小企業向けに簡素化されたSBTの要件や目標レベル、申請手順について整理しました。中小企業版SBTでは、排出量や業種などの要件を満たしたうえで、短期目標・目標維持・ネットゼロ目標の3種類から選択できることを解説しました。サステナビリティ担当者としては、自社が中小企業版SBTの対象となるかを早期に確認し、排出量データの整備と目標設定の準備を進めることが次の重要なステップでしょう。
#SBT
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【このホワイトペーパーに含まれる内容】
・SBTの概要と主な基準について説明
・短期目標とネットゼロ目標についてそれぞれ解説
・申請プロセスをステップごとに詳細に解説

参考文献
[1]Science Based Targets(n.d.)「Validation services」(閲覧日:2026年1月5日)
[2]Science Based Targets(2025)「TARGET VALIDATION SERVICE OFFERINGS」(閲覧日:2026年1月5日)
リクロマの支援について
弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
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