Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli
【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】
世界中を取り巻くESGの潮流に合わせ、SBT認定の対応を進めている企業の担当者様も多いことと存じます。
本記事では、最新の中小企業向けSBT申請手順を分かりやすく解説します。
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SBT認定とは
SBT(Science Based Targets)とは、企業が自らの温室効果ガス排出削減目標を、気候科学に基づいて設定するためのフレームワークのことです。企業はこれに沿って、気候変動の影響を最小限に抑え、地球の温暖化を1.5度以下に抑えるための具体的な目標を持って行動することが求められます。
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中小企業版SBTとは何か
中小企業版SBT導入の背景
多くの中小企業は、パリ協定が求める水準と適合した目標を設定するリソース不足を懸念していました。そのため、SBTiは中小企業向けに負担が少なく、着手が容易な中小企業向けSBT基準を設けました。また、最新の基準は2024年1月に更新されているので注意が必要です。既に提出済みの企業への影響はありません。
中小企業版SBTと通常のSBTの違い
中小企業向けSBT取得の対象企業
中小企業版SBTとは、SBTを中小企業向けに簡素化したもので、気候変動対策の一環として中小企業が採用しやすいように設計されています。
中小企業向けのSBTは以下の要件を全て満たしている企業が取得可能です。
- Scope1およびロケーションベースのスコープ2で10,000tCO2e未満であること
- 金融機関および石油・ガスセクターに分類されないこと*
- SBTiがセクター別に開発した固有の基準を使用して目標設定をする必要がないこと**
上記かつ以下の3つ以上が当てはまること
- 従業員が250人未満
- 売り上げが5000万ユーロ未満
- 純資産が2500万ユーロ未満
- FLAGセクターに属していない***
*金融機関および石油・ガス企業に関しては中小企業であっても、中小企業向けSBTを使用することはできません。金融機関に関してはファイナンスセクターの枠組みを使用し、パリ協定の目標と一致させるために貸付けや投資ポートフォリオを整える必要があります。
**特定の持続可能基準に従う必要があるセクターをさします。これらのセクターに属する中小企業は持続可能性へのコミットメントとセクター固有のガイドラインへの準拠を示すために、追加の基準を満たす必要があります。以下が該当セクターの一例です。詳細についてはこちらのp27参照してください。
- 森林および製紙製品 – 林業、木材、パルプ、紙、およびゴム
- 食品生産 – 農業生産
- 食品生産 – 動物由来
- 食品および飲料加工
- 食品および主食の加工
- たばこ
***GRI(グローバル・リポート・イニシアチブ)が提供する「Forest, Land, and Agriculture」企業のセクターは広範で多くの低排出量の中小企業も含まれています。そのため、従業員や収益などの特定の条件を満たしている企業については中小企業向けSBT取得の対象となる場合があります。
目標レベルについて
中小企業向けSBTでは以下3種類の目標設定が可能です。
- 短期の目標
事前に定義された基準年から2030年度までに達成されるべきScope1およびScope2の温室効果ガス排出削減も表です。Scope3の短期の目標を設定することは求められていませんが、排出量を測定し、削減にコミットメントする必要があります。
目標水準は、50%削減(2018年度比)、46%削減(2019年度比)、42%削減(2020年〜2023年度比)から選択可能です。
- 短期目標の維持
Scope1および2のゼロ排出を達成した企業が努力を維持し、継続的に改善するための目標設定です。このオプションを選択した場合、GHGプロトコルの基準に従い、進捗状況を年次報告し、目標の検証のためのサポート文書を提出する必要があります。
- ネットゼロ目標
ネットゼロ目標を設定するために、まず1.5℃目標に準拠した短期の目標を設定する必要があります。基準年は2018年〜2023年の間で選択可能です。
ネットゼロ目標には以下が含まれます。
- 2050年までに達成されるべきScope1,2および3のGHG排出削減目標
- 長期的目標が達成された際に、未軽減の排出を帳消しするとのコミットメント
費用について
中小企業向けのSBTi認証費用は、目標認証の需要が拡大しており、2024年1月から検証料金が値上がりしました。以下が最新の費用です。
- 新しい排出削減目標を設定または、過去の排出削減目標を置き換える場合:USD1250
- 新しいネットゼロ目標を設定する場合:USD1250
- 削減排出目標とネットゼロ目標を設定する場合:USD2500
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中小企業版SBT取得の流れと目標値の見直しについて
中小企業版SBT取得の流れ
STEP①:SME目標設定のフォームの記入
企業の情報と目標を選択し、目標検証申請フォームを使用して質問に回答します。オンライン申請は以下の3つのパートに分かれています。
- SMEの一般情報:企業が目標検証サービスの対象となるかを確認するための一般情報
- 目標検証サービスの選択:サービスの選択、基準年の選択に関連する事前に定義された目標および排出量の提出が必要。温室効果ガスプロトコルに従って関連する活動と排出を含める
- 契約および支払い情報の入力
STEP②:企業の経営状況や財務状況の調査と承認
SBTiによって、情報が完全かつ正確であることを確認するためにレビューが行われます。情報が不完全または矛盾がある場合、レビューに遅れが生じる可能性があります。このプロセスを通過し、ターゲットの承認が確認されると、承認の通知がメールで送信されます。
STEP③:料金の支払い
契約条件が署名されたらSBTiから請求書が送付されるため、支払いの証明をSBTiに送信します。
STEP④:支払いの確認とターゲット公表の確認
SBTiが支払いの受領書を確認すると、目標の承認と登録がメールで送信されます。
STEP⑤: ターゲットの公表
目標はSBTiのウェブサイトと、提携先のWe Mean Businessのウェブサイトに公表されます。
目標値の見直し
目標値の見直しは以下の場合、必要になります。
・Scope3の排出がScope1,2および3の集計排出の40%以上になる場合。
・在庫または対象の協会内の排出除外が大幅に変更された場合。
・買収や売却、合併など企業の構造や活動に重大な変更がある場合。
・基準年のデータまたは目標設定に使用されるデータの変更に大幅な調整がある場合。
・科学的根拠に基づく目標設定に使用される予測や過程に重大な変更がある場合。
まとめ
この記事では中小企業版SBT取得について解説しました。記事で説明した内容が、担当者様の業務に少しでもお役に立てるのであれば大変光栄です。
#SBT
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参考文献
[1]Science Based Targets:https://sciencebasedtargets.org/small-and-medium-enterprise-sme-target-setting-process
リクロマの支援について
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