Last Updated on 2024年12月5日 by Moe Yamazaki

【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら

気候変動対策の重要性が日々高まる中で、SBT認定の対応を進めている企業の担当者様も多いことと存じます。そこで、SBTを取得することで得られるメリットを理解したいという担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、企業がSBTを取得するメリットについて解説していきます。

この記事の概要
SBTは、Science Based Targetsの略であり、企業が自らの温室効果ガス排出削減目標を気候科学に基づいて設定するためのフレームワーク
SBTを取得することによるメリットを、対投資家対顧客対サプライヤー対社内それぞれに関して事例を交えて説明

SBT認定の基本的な概要や申請プロセスを知る!

  SBTの概要や主な基準、認定の取得に必要なプロセスが理解できるホワイトペーパーです。

こちらも合わせてどうぞ
SBT認定とは?種類や主なポイント、事例を分かりやすく説明

SBTの概要

SBT(Science Based Targets)とは、企業が自らの温室効果ガス排出削減目標を、気候科学に基づいて設定するためのフレームワークのことです。企業はこれに沿って、気候変動の影響を最小限に抑え、地球の温暖化を1.5度以下に抑えるための具体的な目標を持って行動することが求められます。

SBTを取得するメリット:①対投資家へのメリット

現在、多くの企業で脱炭素に対する取り組みが行われています。

しかし、取り組んでいる企業の多くが目標を設定したり、SDGsを宣言したりするだけの段階に留まってしまい、実際に具体的な行動に落とし込んで取り組んでいる企業は少ないという現状があります。

しかし、国際認証のSBTを取得することで、自社がどの程度の期間で、どの程度の温室効果ガスを減らすのか、具体的に数値化し目標や行動をステークホルダー対し訴求できるため、SDGsに本質的に取り組む企業と認知してもらえます。

現在では、環境や社会、企業統治に配慮した企業に投資を重視するESG投資が主流であり、環境問題に配慮していることは投資家の中で主流の考え方です。

SBTを取得すれば、Webサイトで企業名が公開されるため、投資家からESG投資を受けられる可能性が高くなります。

対投資家への対応を目的でSBT設定をした代表的な事例として、「Land Securities」があります。[1]

【コミット経緯】 

  • 2015年後半、機関投資家から持続可能性目標についての問合せあり
  • 不動産業界での持続可能性分野のリーダーとなるべく、CEOが目標設定へ挑戦すると判断
  • 社内向けの会議やワークショップを開催。「リーダーシップとは何か?」をキーワードに、自身が変化することがチャンスに繋がることを示し、理解者を増やしていった
  • Scope3の目標設定が難航(社内で承認を得た目標がSBTの基準を満たさず)

【SBT設定メリット】

  • 投資家との関係強化ができ、長期的投資の見通しが立った
  • SBT認定を受けたことで、業界内でフォロワーの立場から、リーダーの立場に変わり社内的に自信が得られた

SBT認定の基本的な概要や申請プロセスについて一通り理解する、「SBT認定解説資料」
⇒資料をダウンロードする

SBTを取得するメリット:②対顧客へのメリット

SBTを取得することで、調達先に対して自社の取り組みがアピールできます。

深刻化する環境問題から、企業では環境問題対策が求められています。

SBTでは、サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の削減が求められているため、SBTを取得している企業の場合、サプライチェーン企業においても脱炭素化を推進している場合が多いです。

サプライチェーン企業では、脱炭素化に向けた取り組みを行うことにより、サプライヤーからの信頼を高められ、結果的に発注してもらいやすくなる可能性が高くなります。

サプライヤーのニーズに応えつつ、自社もSBTを取得していることで、新たな事業機会を獲得できるチャンスも期待できます。

対顧客への対応を目的でSBT設定をした代表的な事例として、「DELL」があります。[1]

【コミット経緯】 

  • サプライチェーン上流・下流(特に下流の顧客側)でのGHG排出量への対応の重要性を認識し、自社目標 を検討してきた
  • 2015年に、サステナビリティ戦略見直しの一環としてSBTへコミット
  • 顧客の製品機能等への要望を踏まえるとGHG排出は増えるため、 “顧客需要を満たすことと排出削減の両立”が論点に

【SBT設定メリット】

  • 自社のサステナビリティ確保と、将来ビジネスニーズ(顧客からの期待)への対応となる
  • 潜在的な技術課題とその解決策を理解し、進捗状況を測る機能への投資となる

SBTを取得するメリット:③対サプライヤーへのメリット

SBTを設定し、自社だけでなくサプライヤーにも温室効果ガス削減に取り組んでもらう企業も増加しています。

サプライヤーに対しても削減目標を定めることで、サプライヤーにおける調達リスクを低減したり、新技術の開発促進も期待できたりといったメリットを得ることができます。

対サプライヤーへの対応を目的でSBT設定をした代表的な事例として、「Kellog」があります。[1]

【コミット経緯】 

  • 既に設定していたバリューチェーン目標の正当性を強めるため、科学を組み込むことを決定
  • NGOのアドバイザーを招集し、自社の現状や過去のコミットを調べ、これらを長期的かつ野心的にす るための議論を行った
  • 短期コミットが長期ビジョンの実現にどう影響するか、社内の認識を変えることは挑戦だった

【SBT設定メリット】

  • 全サプライヤーに全体的なScope3目標を設定させることができた
  • 革新技術研究の動機づけになり、自社で使用する燃料電池技術を開発した

SBTを取得するメリット:④対社内へのメリット

SBTで定めた削減目標を達成するために、企業が行う取り組みはさまざまなものがありますが、代表的なものには再エネや省エネの導入などがあります。

自社で使用するエネルギーを効率化させることにより、脱炭素に向けた取り組みを実施するとともに燃料代や電気代といったコスト削減が可能です。

SBTで自発的な削減目標を掲げることで、業務の効率化だけでなく、イノベーション促進といった生産性向上に繋がる効果も期待できます。

また、SBTの目標達成に向け取り組むことで、自社従業員の環境意識が高められる可能性が高いです。

温室効果ガス排出量を削減するという目標を掲げることにより、前述したような再エネや省エネの導入をはじめ、業務の効率化、働き方改革といった、従業員に対し主体的な行動を促進する効果があります。

さらに、生産性を向上させるための取り組みでSBTを使うことは、成果指標効果も見込めます。

SBTは、排出する温室効果ガスの量を減らすために、PPA(電力販売契約)で直接的に再生可能エネルギーの電源調達を行うことも少なくありません。

PPAは、再エネを発電する事業者と企業において、再エネの電気売買を目的に交わされる契約です。

昨今は、原油やLNG価格が高騰したこともあり、電気料金も上昇しているため、再エネ電源を調達することでコスト削減が期待できます。

対社内への対応を目的でSBT設定をした代表的な事例として、「Ørsted」があります。[1]

【コミット経緯】 

  • 化石燃料事業が衰退し、将来の収益性に対する実質的なリスクに直面
  • 未来において気候変動対策とGHG排出削減が求められる中で、完全な再生可能エネル ギー企業へと事業モデル転換を決意
  • 目標設定の大部分は既存の目標をSBT基準に照らして確認することで実施

【SBT設定メリット】

  • 再生可能エネルギー市場において強固な地位を築いた
  • 脱炭素への移行を決断することで事業の存続可能性を見出すことが出来た
  • 増加、主流化傾向にある、低炭素移行を課題と認識する投資家から優良企業と見られるよ うになった 

まとめ

SBTは、Sciense Based Targetの頭文字であり、科学に基づく目標を意味し温室効果ガスの削減目標のことです。SBTは、2015年に行われたパリ協定で、産業革命前と比較し、地球における気温の上昇を1.5℃以下にするために世界各国で結ばれた約束です。

SBTを取得することで、ESG投資が拡大していることから投資家に投資してもらいやすくなったり、サステナブル意識の強い顧客から商品やサービスを選んでもらいやすかったりといったメリットがあります。

また、サプライヤーからの信頼を高められることで、発注してもらいやすくなったり、社内で業務の効率化だけでなく、イノベーション促進といった生産性向上に繋がる効果も期待できたりといったメリットも得られます。

このようにSBT取得では、さまざまな面でメリットが期待できるため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、SBTの概要や取得メリットについて十分理解しておくことが大切です。

#SBT

次の記事はこちら
SBT目標検証プロセスにおける変更点や新資料を解説

SBT認定の基本的な概要や申請プロセスを知る!

  SBTの概要や主な基準、認定の取得に必要なプロセスが理解できるホワイトペーパーです。

参考文献

[1]環境省「投資家対応のためにSBT設定を行った事例

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支援形態で、直近2年間の総合満足度は94%以上となっております。
貴社ロードマップ作成からスポット対応まで、次年度内製化へ向けたサービス設計を駆使し、幅広くご提案差し上げております。
課題に合わせた情報提供、サービス内容のご説明やお見積り依頼も随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
お問合せフォーム

メールマガジン登録

担当者様が押さえるべき最新動向が分かるニュース記事や、
深く理解しておきたいトピックを解説するコラム記事を定期的にお届けします。

Author

  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

    View all posts