Last Updated on 2024年4月17日 by Yuma Yasui

サステナビリティ推進担当者やSBT取得を検討している方の中には

「SBTの変更点について知りたい。」
「SBTが変更に至った経緯について知りたい。」
「SBT目標提出の際の対応方法について知りたい。」

このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか?

当記事ではこのような悩みを解決していきます。記事を最後まで読んでいただければ、上記悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

SBT認定取得までの道筋を理解する、「SBT認定セミナー」
⇒セミナーに申し込む

SBTの目標提出が新提出資料に変更

SBTとは、パリ協定で設定された、世界における気温の上昇を産業革命前と比べ少なくとも2℃の上昇に抑え、1.5℃までに抑える目標を実現させるために、科学的根拠に基づき設定された温室効果ガスを削減する量の目標のことです。

企業はSBTに沿い目標を定め、SBTi申請を行うことによって認定が受けられます。

認定では、通常版・中小企業版の2つが存在し、通常版と比べ中小企業版では認定を受けるまでの工程が簡単であり、費用も手頃に設定されているのが特徴です。

そのため昨今では、対外的に環境に対する取り組みをアピールする目的で認定取得を目指す企業が増えています。

2024年2月から、このSBTの目標提出が新提出資料を使用するよう変更されたため、サステナビリティ推進担当者やSBT取得を検討している方は、変更点について十分理解しておくことが大切です。

SBT認定取得までの道筋を理解する、「SBT認定セミナー」
⇒セミナーに申し込む

SBT提出資料の変更点

SBT提出資料の変更点は、主に以下3つです。 

変更点①:提出資料がWordからExcelへ

1つ目の変更点は、提出資料がWordからExcelになったことです。

SBT目標提出の資料は、これまでWordで行われていました。

しかし、その資料がExcelの「Corporate Target Submission Form」に代替されました。

出典[1]:SCIENCE-BASED TARGET「GETTING STARTED WITH SCIENCE-BASED TARGETS

企業目標提出フォームにおいては、主に資料を提出する企業に対し、温室効果ガス(GHG)関連で、これまでよりも多くの情報提供が要求されるよう変更されました。

この提出フォームと基準評価指標を一緒に使うことで、どんな情報が必要で、その情報はなぜ必要なのかを企業は理解できるようになっています。

追加で要求されるようになった主な情報は、以下の通りです。

  • 各範囲、カテゴリーにおける活動レベルでの排出量に関するデータ
  • 情報およびデータの出所について
  • データ収集の工程におけるデータ種類および仮定について

変更前の提出フォームの場合、企業には、温室効果ガス(GHG)関連において、限られた量の情報が求められていましたが、以前より細かい項目を送信する変更後のフォームでは、検証プロセスで送る工数を減らせます。

また、変更後の提出フォームの場合、企業における温室効果ガス(GHG)排出量が、科学的根拠に基づいた目標設定を行う際に、企業が使う温室効果ガス(GHG)排出量の算定基準の量と、どのように整合されているのかに注目した定性的な質問が増えています。

温室効果ガス(GHG)排出量について、これまでよりも詳細に提示することにより、目標を検証するプロセスを効率化でき、1.5℃の気温上昇目標と整合性があるかを検証する時間の短縮が可能です。

変更された企業目標提出フォームは、変更前に比べ、より透明性が高く効率的な検証プロセスができるようになると見込まれているものの、まだ完璧とは言えません。

そのような理由から、機能に関する問題から改善に向けた提案まで、さまざまなものに使える新たな提出書類が開発されました。

変更された提出書類では、より効率的に目標が設定できるだけでなく、SBTiにおける透明性を高めることが可能です。

透明性が高まることで、民間企業でこれまで以上に求められる気候変動対策について、脱炭素社会に向けた取り組みを拡大させられます。

変更点②:基準(CIA)の公開

2つ目の変更点は、基準(CIA:Criteria Assessment Indicatorsの略)の公開が必要になったことです。

CIAとは、SBT認定を取得する際に必要な温室効果ガス排出量削減などの評価基準のことです。

変更される前では、SBTiの目標について検証する過程で、提出書類に細かな記載が少なかったため、そこから企業に情報およびデータ要求に多くの時間がかかっていました。

基準(CIA)を公開することで、目標を検証するチームが、その目標が科学的な根拠に基づいているか、SBTi基準に適合しているかをどのような方法で評価するかに関して、より詳細な情報が分かるようになります。

この基準(CIA)を公開することにより、企業がどんなことを必要にしているのかが明確になり、SBTiにおける基準と整合性があるかを、さらに明確に示すことが可能です。

データを分析する専門家が、企業に詳細情報およびデータを要求する必要がなくなることで、より効率的に目標設定で問題ないかを認証するかを判断できるようになります。

変更点③:SBTの認証手順の資料公開

3つ目の変更点は、SBTの認証手順の資料公開です。

SBTの認証を受けるためには、事前準備としてSBTiコーポレートマニュアルを読んだり、自社で温室効果ガス(GHG)排出量を算定したり、目標設定する必要があります。

そこから申請書類のフォーマットに従い、会社名・担当者などの基本事項入力、申請する目標設定の選択、目標年における温室効果ガス(GHG)排出量などを入力することが必要です。

さらに、温室効果ガス(GHG)インベントリ関連の補足資料もアップロードしたり、契約書をアップロードしたりと多くの手順が必要になります。

そのような手間や時間を削減するため、今回の変更でSBTの認証手順の資料が公開されました。

変更に至った経緯について

SBT提出資料が変更に至った経緯は、主に以下3つです。

効率性①:目標提出の企業が増加したため

前述したように、深刻化する地球環境問題、世界的な脱炭素社会への取り組みといった理由から、国や企業は温室効果ガス(GHG)の排出量をできる限り抑えた経済活動が推進されています。

また、ESG投資など環境に配慮している企業に対する投資が拡大していることから、これからの社会で継続して経済活動を行っていくためにも、環境に配慮することは不可欠です。

そのような理由から、SBTの目標を提出する企業が増加しています。

しかし、変更前の提出資料では必要情報が足りず、企業に詳細情報を求める手間や時間が発生していたため、より効率的に申請を行えるよう変更されました。

なお環境省が公開しているデータによると、2023年3月時点で世界全体のSBT認定企業は2,554社、コミット中企業は2,256社であり、2022年3月と比較して増加率はそれぞれ82%、78%となっており、3月以降も増加傾向にあります。

参考文献:環境省「SBT参加企業

※コミット:SBT認定を2年以内に取得すると宣言すること

効率性②:質問のプロセスを短縮するため

上記で解説したように、変更前の提出資料では必要情報が足りず、企業に詳細情報を求める手間や時間が発生していました。

しかし、目標提出の企業が増加したこともあり、各企業に対して詳細情報を得るため質問していては多くの時間がかかってしまいます。

また、認証手順について理解していない企業からの問い合わせにすべて対応していては、多くの時間がかかってしまいます。

そのような質問のプロセスを効率的にするため、資料の変更および認証手順の資料公開が行われました。

透明性:基準を明らかにするため

基準(CIA)を公開することにより基準が明確になるため、目標検証を行う際に目標が科学的な根拠に基づいているか、SBTi基準に適合しているかが判断しやすくなります。

さらに、どの基準を求めているのかを企業が明確になることで、SBTi基準と企業目標に整合性が確認しやすいです。

SBT目標提出の際の注意点

SBT目標提出時の対応の注意点として、以下3つのことを抑えておきましょう。

提出資料がExcelであることに気を付ける

2024年4月から提出資料がWordからExcelに変更されています。

このことを知らずWordで提出してしまうと、そもそも提出書類が異なるため、正式に受領してもらえず、当然認証を受けることができません。

そのため、資料を提出する際は必ずExcelで提出するようにして下さい。

基準は既存の基準を使用する(どのように書くか迷ったときにCIAの活用)

基準は既存の基準を使用するようにしましょう。

どのように書くか迷ったときには、CIAの活用がおすすめです。

改善の提案がある際にはフィードバックフォームに送る

改善の提案がある際にはフィードバックフォームに送るようにしましょう。

以下に添付されているリンクからアクセスできます。
https://form.asana.com/?k=TlIchEImpIFXhDWWOCfvXA&d=1135532566896050

こちらのフィードバックフォームに送ることで、追加のフィードバックや改善案を提供してもらえます。

まとめ

SBTとは、パリ協定で設定された、世界における気温の上昇を、産業革命前と比べ少なくとも2℃の上昇に抑え、1.5℃までに抑える目標を実現させるために、科学的根拠に基づき設定された温室効果ガスを削減する量の目標のことです。

深刻化する地球環境問題、世界的な脱炭素社会への取り組みといった理由から、国や企業は温室効果ガス(GHG)の排出量をできる限り抑えた経済活動が推進されています。

ESG投資など、環境に配慮している企業に対する投資が拡大していることから、これからの社会で継続して経済活動を行っていくためにも、環境に配慮することは不可欠であり、SBTの目標を提出する企業が増加しています。

申請の効率化を狙うため、2024年4月より提出資料や、認証手順の資料公開など、SBTで変更点がありました。

サステナビリティ推進担当者やSBT取得を検討している方は、変更点や経緯、対応について十分理解しておくことが大切ですので、必ず理解しておきましょう。

2024年2月以降の申請対応!

SBT申請方法の変更点について詳しく説明します。

参考文献

[1]SCIENCE-BASED TARGET「GETTING STARTED WITH SCIENCE-BASED TARGETS
[2]環境省「SBT参加企業

メールマガジン登録

担当者様が押さえるべき最新動向が分かるニュース記事や、
深く理解しておきたいトピックを解説するコラム記事を定期的にお届けします。

セミナー参加登録・お役立ち資料ダウンロード

  • TCFD対応を始める前に、最終アウトプットを想定
  • 投資家目線でより効果的な開示方法を理解
  • 自社業界でどの企業を参考にするべきか知る

リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。