Last Updated on 2024年6月24日 by Moe Yamazaki

自社のCO2削減努力のアピール手法として、「削減貢献量」の算定が注目を集めています。

本記事では、削減貢献量における「適格性」概念を解説します。

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削減貢献量とは

削減貢献量とは、製品・サービスを通じ、企業が社会全体における温室効果ガス排出量を減らすことで、気候変動対策に貢献した量のことです。

自社で排出している温室効果ガス量の削減に限らず、その製品・サービスが使われることで発生する排出量の削減効果を含めた、より大きな視点での社会的な影響を減らすことを目標とした企業の取り組みです。
参考文献:環境省「削減貢献量について

高いエネルギー効率の製品や再生可能エネルギー技術を市場に対し提供することにより、製品やサービスが使われることで排出される温室効果ガス量を減らせることがあります。
削減貢献量は、世界企業持続可能性協議会(WBCSD)により提供されているガイダンスが多くの企業で用いられています。
参考文献:WBCSD「GUIDANCE ON AVOIDED EMISSIONS

このガイダンスでは、以下3つの「削減貢献量の主張が適格であるかを評価するための三つのゲート」と呼ばれるフレームワークを含んでいます。

【フレームワーク】

  • 気候行動の信頼性
  • 最新の気候科学に基づく調整
  • 貢献の正当性

以上の3項目が評価基準で定められています。
この基準を満たすことで、企業は削減貢献量が社会全体に対し、実際にどの程度プラスの影響を与えられているか知ることが可能です。

GXリーグの提供するガイダンスでも同様の基準が示されています。

参考文献:GXリーグ「候関連の機会における開示・評価の基本指針

企業が環境に対する責任をどの程度果たしているか評価する上で、削減貢献量の適格性について確認するプロセスは非常に重要な手段です。
これらの削減貢献量の適格性を確認するプロセスは、企業が環境への責任をどのように果たしているかを評価するための重要な手段です。

続いて、この適格性の具体的な評価基準とプロセスについてWBCSDガイダンスとGXリーグガイダンスを参照しつつ、詳しく掘り下げていきます。

適格性とは

適格性とは、企業が削減貢献量の主張を行うための基本条件を満たしているかを評価するためのプロセスです。
WBCSDにより公表されているガイダンスには、適格性の確認の目的で「ゲート」が三つ定められており、それぞれのゲートでは企業と企業の提供している解決策が、気候変動に対し本質的に貢献しているかの判断基準となっています。

ゲート①:気候変動の信頼性

削減貢献量の適格性を判断する基準として、まず企業が明確な気候戦略を設定し、その戦略が最新の気候科学に基づいているかというポイントがあります。
企業は、Scope1、Scope2、およびScope3の排出量に関する明確かつ透明な報告を行い、独自の温室効果ガス削減目標を設定し、その進捗を定期的に報告する必要があります。

具体的なガイドラインとして、科学に基づいた目標であるイニシアチブ基準や国際エネルギー機関におけるネットゼロ2050シナリオが参照されています。

ゲート②:最新の気候科学との一致

企業の提供する製品・サービスが科学的な根拠に基づき、温室効果ガスの排出量削減に対し、実質的に効果があることを確認します。
このゲートは、解決策がEUタクソノミーや国際パネルにおける第六次評価報告書に準拠しているかが評価されます。
これら文書では、具体的なプラクティスや温室効果ガス排出量を削減するための技術が詳しく記載され、その製品およびサービスが科学に基づいているかを企業が証明する上で重要な資料です。

ゲート③:貢献の正当性

企業の提供する製品・サービスが、直接的かつ顕著な温室効果ガス削減効果を社会に提供しているかを評価します。
このゲートの評価基準を満たすためには、製品やサービスが実際にどのようにして温室効果ガスの削減に貢献しているかを具体的に示す必要があります。

このプロセスでポイントになるのが、その効果の大きさと持続可能性です。解決策がエネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの利用拡大、持続可能な農業技術など、明確な環境利益を提供していることを示す参照先が必要です。

これらのゲートを通過することで、企業は自社製品・サービスの持続可能性や、温室効果ガス削減に対し具体的に貢献しているかをステークホルダー・顧客に伝えることができます。
適格性を確認することは、企業が市場において競争力を持ちつつ、環境に対しポジティブな影響を最大限与える上で重要な過程です。

適正評価の事例

適格性の評価プロセスを具体的に理解するために、実際の製品を用いた事例を紹介します。
ここから、パナソニック社により開発されたヒートポンプシステムの事例を基に、どのように前述した適格性の各ゲートを達成しているかを解説します。
この事例を通じ、削減貢献量を適格に主張する上で、必要となる条件を満たす際に求められる具体的なアプローチ方法、および成果について理解を深めましょう。

パナソニック社

参考文献:パナソニック「サステナビリティ説明会

パナソニック社は、環境に配慮した持続可能な技術として、エネルギー効率が高いヒートポンプシステムを開発しました。このシステムは、従来の暖房方法に比べて大幅にCO2排出量を削減することが可能で、再生可能エネルギーの利用を最大化する設計がされています。

ゲート①:気候行動の信頼性

パナソニック社では、環境に対し全社的に取り組む持続可能性戦略の一環で、製品ライフサイクル全体における環境への影響を把握し、社会に公開しています。
事業活動における、再エネの利用拡大、および温室効果ガス排出量を減らすことに推進し、定期的に目標達成に向け進捗状況の報告を行っています。

ゲート②:最新の気候科学との一致

ヒートポンプシステムでは、最新の気候科学に基づき設計されており、特に国際エネルギー機関であるIEAや、EUのエネルギー効率基準が推奨している、炭素排出基準をクリアしています。
このような基準をクリアすることで、地球温暖化の対策として、効果の高い技術で評価されています。

ゲート③:貢献の正当性

ヒートポンプは、使用することでエネルギー消費を直接的に削減でき、これまでの暖房システムと比べ二酸化炭素(CO2)の排出量を大きく減らすことが可能です。
この技術によって、ビルや住宅における暖房効率を向上させ、高い持続可能性を持った建築物普及に役立っています。
具体的には、新たに建設される建築物で、これまでの暖房システムと比較し最大で70%という大きなエネルギーを削減できる見込みです。

この事例は、パナソニック社がどのようにしてそのヒートポンプ製品が持続可能な技術であるという適格性を確立しているかを示しています。
企業の環境戦略と製品の性能が適切に組み合わさることで、社会全体のカーボンニュートラルへの移行が加速されます。

まとめ

削減貢献量とは、製品・サービスを通じ、企業が社会全体における温室効果ガス排出量を減らすことで、気候変動対策に貢献した量のことです。
世界企業持続可能性協議会(WBCSD)のガイダンスでは、気候行動の信頼性・ 最新の気候科学に基づく調整・貢献の正当性の3項目が評価基準で定められています。

適格性とは、企業が削減貢献量を主張するため、基本となる条件を満たせているか評価するプロセスです。
適格性の評価について具体的に理解するには、実際の製品事例を知ることが最も効果的です。

そのため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、削減貢献量の概要や評価基準・適格性と実際の製品事例について十分理解しておくことが大切です。

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参考文献

[1] 環境省「削減貢献量について
[2]WBCSD「GUIDANCE ON AVOIDED EMISSIONS
[3]GXリーグ「気候関連の機会における開示・評価の基本指針
[4]パナソニック「サステナビリティ説明会

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リクロマ株式会社

当社は「気候変動時代に求められる情報を提供することで社会に貢献する」を企業理念に掲げています。

カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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