Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli
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企業や金融機関が脱炭素化を進める中で、透明性と信頼性のある移行計画の開示が求められるようになり、近年TPT(移行計画タスクフォース)が注目されています。
この記事では、TPTの設立目的や具体的な活動内容、ISSBへの引き継ぎの重要性について詳しく解説します。
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TPT(移行計画タスクフォース)とは
TPT(移行計画タスクフォース)の定義と目的について解説します。
定義
TPT(Transition Plan Taskforce)は、イギリス政府の財務省が2022年10月に設立した、企業や金融機関の脱炭素化への移行計画の開示基準を策定するためのタスクフォースです。
この組織は、国際的に重要な役割を果たす様々な機関や団体によって構成されています。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)、グラスゴー金融同盟(GFANZ)、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)、世界銀行などが参加しています。
さらに、TPTには多様な国々の政府機関、金融機関、企業、そしてNGOなども加わっており、幅広い視点と専門知識を結集させた組織となっています。
このような多様性は、グローバルな視点から脱炭素化への移行計画を検討し、実効性のある基準を策定するうえで非常に重要な要素となっています。
TPTの設立背景には、気候変動対策の緊急性と、企業や金融機関の役割の重要性に対する認識の高まりがあります。
特に、パリ協定の目標達成に向けて、民間セクターの積極的な参加が不可欠であるという認識が世界的に広がっていることが挙げられます。
そのため、企業や金融機関の脱炭素化への取り組みを促進し、その進捗を適切に評価するための統一的な基準が必要とされていました。
目的
TPTの主要な目的は、企業や金融機関の脱炭素化への移行計画を透明性、比較可能性、信頼性を持って開示する基準を策定することです。
具体的には、TPTは以下のような取り組みを通じてその目的の達成を目指しています。
まず、企業や金融機関が自社の脱炭素化への道筋を明確に示し、その進捗を適切に報告できるような枠組みを提供することです。
これにより、投資家や消費者、規制当局などのステークホルダーが、各企業の気候変動対策への取り組みを正確に評価できるようになります。
また、TPTは異なる企業や業界間での比較を可能にする基準の策定も目指しています。
これにより、ベストプラクティスの共有や、業界全体での取り組みが加速する可能性が高いです。
さらに、この比較可能性は、投資家が気候変動リスクを考慮した投資判断を行う際の重要な指標となり得ます。
TPTの目的には、信頼性の高い開示基準の策定も含まれています。
これは、企業の開示内容が科学的根拠に基づいており、第三者による検証が可能であるということです。
信頼性の高い情報開示は、グリーンウォッシング(環境への取り組みを実際以上に誇張すること)を防ぎ、真に持続可能な経済への移行を促進する上で極めて重要です。
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ISSB、英TPT移行計画タスクフォースの引き継ぎを発表
IFRS財団、TPTの成果物に責任を負う
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を管理しているIFRS財団は、これから英移行計画タスクフォース(TPT)が作る成果物に責任を持つことを発表しました。
ISSBとTPTの連携の意向
ISSBは、移行計画の開示に関するガイダンスを整備する、国際的な枠組みであるTPTとの連携の意向を示しています。
TPTガイダンスのIFRS財団への引き渡し
TPTはそのガイダンスをIFRS財団に引き渡す予定であり、これによりこれが将来の国際基準となる可能性が高まっています。
この引き渡しの理由は、IFRS財団が国際的な会計基準を設定し管理している信頼性の高い組織であり、TPTのガイダンスがIFRS財団のもとで管理されることで、これが将来の国際基準となる可能性が高まるためです。
参考文献
IFRS「ISSBは新たな作業計画に着手し、持続可能性開示環境のさらなる調和を実現」
REP「移行計画タスクフォースがIFRSの一部となる」
TPT情報開示フレームワーク
TPTが提案する情報開示フレームワークは、企業の気候変動対策に関する包括的な開示を促進するために設計されています。
このフレームワークは、「野心」「行動」「説明責任」という3つの主要な要素から構成されており、各要素が企業の気候変動対策の異なる側面をカバーしています。
野心:移行の目標とロードマップ
「野心」の要素は、企業が気候変動に対してどのような長期的な目標を持ち、それに向けてどのようなロードマップを描いているかを開示することを求めています。
具体的には、自社の事業とバリューチェーンの脱炭素化、気候変動に関連するリスクと機会への対応、そして経済全体の転換への貢献という3つの観点から、企業の戦略的野心を明らかにすることが求められます。
この開示により、投資家や他のステークホルダーは、企業が気候変動にどの程度真剣に取り組んでいるか、また、その取り組みが長期的な企業価値にどのように結びつくかを理解することができるのです。
例えば、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げ、そのための段階的な排出削減目標や技術革新の計画を示すことが、この「野心」の要素に該当します。
行動:具体的な行動計画
「行動」の要素は、企業が掲げた野心を実現するために、どのような具体的な行動を取るかを開示することを求めています。
この要素は、事業、製品・サービス、方針、財務計画、バリューチェーン、産業、政府、社会とのエンゲージメント戦略など、幅広い領域にわたる企業の実行計画をカバーしています。
例えば、再生可能エネルギーへの投資計画、エネルギー効率の高い製品開発、サプライヤーとの協働による排出削減、政府や業界団体との連携による政策提言などが、この「行動」の要素です。
これらの具体的な行動計画を開示することで、企業は自社の気候変動対策の実効性と信頼性を示すことができます。
説明責任:開示の透明性と信頼性
「説明責任」の要素は、企業が自社の気候変動対策の進捗をどのように測定し、管理しているかを開示することを求めています。
この要素には、戦略的野心に向けた進捗を推進・監視するために使用される様々な指標や目標、そしてガバナンス構造の中で企業がどのように移行計画を組み込んでいるかが含まれます。
具体的には、温室効果ガス排出量の削減目標とその進捗状況、気候関連リスクの管理プロセス、取締役会や経営陣の気候変動対策への関与などが、この「説明責任」の要素です。
これらの情報を開示することで、企業は自社の気候変動対策の透明性と信頼性を高めることができます。
TPTの情報開示フレームワークは、企業の気候変動対策を包括的かつ具体的に開示することを促進し、投資家や他のステークホルダーが企業の気候変動リスクと機会を適切に評価できるようにすることを目指しています。
このフレームワークに沿った開示を行うことで、企業は自社の気候変動対策の実効性と信頼性を示し、長期的な企業価値の向上につなげることが可能です。
参考文献
TCFD「IMPORTANT MESSAGE – PLEASE READ」
TPT「Transition Plan Taskforce」
まとめ
TPT(Transition Plan Taskforce)は、イギリス政府の財務省が2022年10月に設立した、企業や金融機関の脱炭素化への移行計画の開示基準を策定するためのタスクフォースです。
この組織は、国際的に重要な役割を果たす様々な機関や団体によって構成されています。
企業や金融機関が脱炭素化を進める中で、透明性と信頼性のある移行計画の開示が求められるようになったことから、TPT(移行計画タスクフォース)が設立されました。
近年、TPTの成果物がISSBに引き継がれることが発表され、これが国際基準となる可能性が高まっています。
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参考文献
[1] European Commission「Green Deal: EU agrees new law on more sustainable and circular batteries」[2] European Parliament「New EU regulatory framework for batteries」
[3] European Commission「Green Deal: Sustainable batteries for a circular and climate neutral economy」
[4] International Energy Agency「Global EV Outlook 2021」
[5] TUV SUD Global「欧州バッテリー規則(EU BATTERY REGULATION)とは」
[6] plaplat「欧州バッテリー規則」
[7]European Commission 「Batteries and waste batteries」
[8]JETRO「欧州グリーンディールと日本企業への影響」
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