Last Updated on 2024年7月8日 by Moe Yamazaki

20世紀初め、企業は環境問題に無頓着でした。
しかし、人間による環境汚染の影響が表面化してくるにつれ、地球温暖化や気候変動に関する科学的知見が蓄積され、企業はより環境問題に対して関心を持ち始めました。そして、21世紀に入ると、より気候変動が深刻化し、国際機関で決定された枠組みなどにより、企業には、環境問題や気候変動対応に取り組む姿勢が求められるようになりました。

本稿では、企業とサステナビリティの動向について、20世紀から現在までの歴史と、現代に求められる企業の役割を考えていきます。

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20世紀における気候変動の大きな節目としては、パリ協定、グリーン・ニューディール、ESG投資の発足です。


パリ協定

2015年に締結されたパリ協定は、地球温暖化の上限を2℃以下に抑えるため、世界各国が削減目標を設定し、その進捗を定期的に報告することを定めた国際的な枠組みです。主な内容は以下の通りです。

各国の温室効果ガスの排出量削減目標の設定

各国は、自らの責任・能力に応じて、温室効果ガスの排出量削減目標を設定し、定期的に報告することが求められます。

2℃以下の気温上昇目標

協定では、温暖化の上限を2℃以下に抑えることを目標として掲げており、その達成に向けた世界規模での取り組みが必要であることが強調されています。

富裕国から途上国への支援

途上国においても温室効果ガス排出量を抑えるための技術や財政的支援が必要であることを認め、富裕国は途上国に対して支援を行うことが求められます。

透明性の確保

各国の削減目標と進捗状況は、定期的に公表されることが求められ、透明性の確保が図られます。

持続的な取り組みの促進

各国は、協定に基づいた温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを継続し、持続的な取り組みを促進することが求められます。

これにより、各国は自主的な温室効果ガス削減目標を設定することとなり、
それに伴って企業にも温室効果ガス排出削減に取り組むよう求められるようになりました。

グリーン・ニューディール政策

グリーンニューディールは、気候変動や環境問題に対処するための包括的な政策枠組みであり、経済成長と環境保護を両立させることを目的としています。この政策は、石油や石炭などの化石燃料に依存している経済から、再生可能エネルギーなどの低炭素社会への移行を促進することを目的としています。

グリーンニューディールの概念は、2007年にアメリカ合衆国で提唱されたものでしたが、最近では欧州連合を中心に世界中で注目されるようになりました。特に、2019年に欧州連合が「欧州緑の取り組み」を発表し、2030年までに温室効果ガス排出量を55%削減する目標を掲げたことが、グリーンニューディールの進展に大きく寄与しました。

主な取り組みとしては、以下のようなものがあります。


再生可能エネルギーの促進

太陽光や風力などの再生可能エネルギーの開発や普及を促進します。また、建物や交通などのエネルギー消費に関しても、省エネルギーの取り組みを進めます。

環境保護と自然保護

森林の保護や再生、海洋保護など、自然環境を守るための取り組みを進めます。

環境に配慮した交通システムの推進

公共交通機関の充実や、自動車の電気自動車への置き換えなど、環境に配慮した交通システムの推進を進めます。

社会正義の促進

グリーンニューディールは、社会的な格差を是正するためにも注力します。貧困層やマイノリティの人々にも、再生可能エネルギーや省エネルギーに関する教育や支援を提供し、社会正義を促進します。

これらの取り組みにより、環境保護と経済成長を両立させることが可能となるという考えのもと、主張されています。

ESG投資

ESG投資とは、企業の社会的・環境的・ガバナンス(ESG)の観点からの評価を基に、投資先を選定する投資方法です。実はこの考え方は、社会的責任投資(SRI)として、1970年代から存在していました。しかし、ESG投資が現代的な意味で注目されるようになったのは、2000年代半ばからです。

この時期、社会的・環境的責任の観点から企業が批判を浴びることが増え、投資家の間で企業の社会的責任が重要視されるようになりました。また、環境問題が世界的な課題として認識されるようになったことも、ESG投資が注目される要因の1つとなりました。

さらに、2008年のリーマン・ショック以降、投資家の間で「リスクマネジメント」が重要視されるようになりました。この背景には、金融危機が引き起こした損失が大きく、投資家たちがリスクを管理する必要性を強く認識するようになったことがあります。ESG投資は、企業の社会的・環境的責任を評価することで、投資家がリスクマネジメントを行うことができるという点で注目されました。

他にも、エシカル消費などの消費者の傾向の影響もあり、環境部門に対しての取り組みが加速しています。

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近年の気候変動対応のステークホルダー

近年の気候変動対応のステークホルダーとして、政府や国際機関、NPOやNGO、投資家、企業など非常に多様化しています。

彼らは、気候変動への取り組みを促進するために、啓発活動や研究、政策提言などを行っています。

具体例としては、気候変動に関する科学的知見を提供する国際的な機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)や、気候変動枠組条約の締約国である国連の気候変動締約国会議(COP)、気候変動に対する国際的な政策を推進する国連の枠組みであるUNFCCC(気候変動枠組み条約)が挙げられます。

また、NPOであれば、1971年にカナダで創設された国際的な環境保護団体であるGreenpeace(グリーンピース https://www.greenpeace.org/japan/)などが挙げられます。彼らは、環境問題についての認識を高め、環境保護のために活動しています。主な活動内容は、環境破壊を行う企業や政府に対して、直接行動することや、環境問題に関する調査や報告書の作成、キャンペーンの実施などです。また、原子力発電所や核兵器の廃絶にも取り組んでいます。Greenpeaceは、世界中に支部を持っており、広範な国際ネットワークを形成しています。

企業にとっても、気候変動対応はますます重要性を増しており、先進的と見られる企業が出てきています。社会的信頼性を高め、顧客、社会、従業員による支持を得ることができる面からも、企業にとってのメリットも多いにあり、このような動きが加速していると言えます。

企業の役割の変遷

企業の環境問題・気候変動に対する社会的な役割は、それらに無頓着であった20世紀初頭から、現在に至るまで徐々に変化してきました。

1962年にアメリカの生物学者レイチェル・カーソンが出版した環境書籍である「沈黙の春(Silent Spring)」が注目を浴び始めたことにより、環境問題の認識を一般的に高め、環境保護運動の基礎が固められました。

カーソンは、農薬の使用が環境や人間の健康に与える影響を指摘し、その危険性を訴えたのです。特にDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)の大規模な使用が、野生生物の絶滅や人間の健康被害を引き起こす可能性があることを警告しました。

同時に、ISO 14001やEMASといった環境マネジメントシステムの普及が進み、企業が組織構造などからも環境問題に取り組むための枠組みが整備されました。その後、企業はCSR(企業の社会的責任)の観点から、社会に対する貢献が求められるようになりました。

現代においては、様々な異なる気候変動対応に関するイニシアチブへの順応が求められます。

例えば、CDP(Carbon Disclosure Project)は、気候変動に関する企業の情報開示を促進するために設立された非営利団体であり、企業が自社の温室効果ガス排出量や気候変動リスクに関する情報を開示することを求めています。また、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、気候変動が企業の経済的な価値に及ぼす影響を評価するための指標を提供しており、企業が気候変動リスクに対する情報開示を進めることを奨励しています。

詳細の気候変動対応のイニシアチブの種類については、弊社のホワイトペーパー、「気候変動イニシアチブ解説」で説明しています。

これらのイニシアチブに参加することで、企業は気候変動対応の重要性を認識し、それに対応するための戦略を策定し、実行することが求められています。

現代に求められる企業の役割

現代においては、企業によるサステナビリティへの取り組みがますます求められるようになっています。その一方で、単に環境保護だけではなく、社会的責任を果たし、人権や労働基準、反汚職、多様性と包摂など、幅広い領域に関しての取り組みが求められるようになっています。

企業は単なる利益追求のみに焦点を当てることなく、社会全体の福祉に貢献することが求められます。これは企業の社会的責任(CSR)の一環であり、企業が社会的影響を持ち、社会的目的を達成することが求められる時代になっていることを示しています。

企業のCSR活動の中でも、持続可能なサプライチェーンの構築は特に注目されています。
詳細は、「CSR調達とは?CSR調達手順から好事例まで解説」をご覧ください。

また、投資家や消費者の期待にも応える必要があります。
投資家は、企業が長期的なサステナビリティの目標に取り組んでいるかどうかを重視するようになっており、消費者もエシカル消費に関心を持つようになり、企業のサステナビリティへの取り組みが消費者の購買行動に影響を与え、そのまま企業の利益に影響する時代になったと言えるでしょう。

一方で、消費者に対して実際よりも多く環境問題の解決に貢献していると見せるグリーンウォッシュも問題になっています。企業は、自身が行っている事業が社会に与える影響を理解し、社会との共生を目指すことが求められます。そのためには、企業のリーダーシップ、従業員の意識改革、ビジネスモデルの見直しなど、様々なレベルでの変革が必要となります。

総括すると、現代においては、企業がサステナビリティの観点から社会的責任を果たし、長期的な持続可能性を考慮しつつ事業を展開することが求められています。
これは、企業がより高い目的や使命を持ち、社会と共に発展することが必要とされる時代になっていることを示しています。

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
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  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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