Last Updated on 2025年2月28日 by AmakoNatsuto
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2024年12月に、GXリーグは「GX率先先行宣言」を立ち上げました。GXリーグとは、2050年時点でのカーボンニュートラルを達成するために必要な社会変革(≒GX)に向けて、GXに挑戦する企業群や官・学が協働するイニシアチブです。
本コラムでは、GX率先先行宣言の目的や対象範囲について整理します。
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GXリーグとは?
GXリーグ設立の経緯
GXリーグは、2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXへの挑戦を行い、持続的な成長の実現を目指す企業が、同様の取組を行う企業群や官・学と共に協働する場として設立されました。
2022年2月に発表された「GXリーグ基本構想」には、440社の賛同が集まり、同年6月から賛同企業を交えた準備期間としての活動が開始されました。それから官邸による議論を経て、2023年2月に、GXリーグの活動の実行のために必要であった「GX基本方針」と「GX推進法案」が閣議決定されました。それを受けて、同年4月からGXリーグの活動が本格的に開始しました。
2024年4月時点で日本のCO2排出量の5割超を占める企業群が参画しています。参画する企業群は、2026年度より開始が予定される排出量取引の本格始動に向けて、参画する企業群は引き続き増加することが予想されます。
GXリーグの活動内容
GXリーグの活動内容は、大きく4つに分かれています。
排出量取引制度(GX-ETS)
GX投資とGHG削減及び社会に対しての開示を行います。参画企業は自ら削減目標を設定し、進捗を開示し目標達成に向けて取り組んでいます。
2023年度から2025年度を第1フェーズとして、以下の内容に取り組んでいます。
- 国内直接・間接排出について、排出削減目標をたてる。
- 排出量実績を算定・報告する。算定結果について、第三者検証が必要となる。
- 国内の直接排出分について、排出量取引を行う。
- 目標達成状況や取引状況を「GXダッシュボード」で公表する。
2026年度よりGX-ETSは第2フェーズに移行し、排出量取引市場が本格稼働する予定となっています。
ルール形成を通じたグリーン市場の創造(市場ルール形成WG)
将来のビジネス機会を踏まえ、新市場創造に向けて官と民でルール形成を行います。市場ルール形成ワーキング・グループ(市場ルール形成WG)では、ルールの設計・実証・発信等を目指しています。
ビジネス機会創発(スタートアップ連携等)
カーボンニュートラルを前提とした新たなビジネス機会の創出に向けて、参画企業とGX関連のスタートアップの連携。事業創発を支援する活動を行っています。2024年12月には、GX領域研究者と参画企業のマッチングイベントが開催されました。
企業間交流の促進(GXスタジオ/GXサロン)
気候変動対応に関する企業の関心事項や課題について、業界の垣根を超えたディスカッションや情報交換の場を提供しています。2024年9月には、「サプライチェーン全体の脱炭素」をテーマとした第1回GXスタジオが開催されました。
※GXリーグについて詳細はこちら!
→GXリーグの参加のメリットとは?参加条件・今後の動向について
宣言の背景・目的
GX市場における現状の課題
脱炭素と経済成長の両立を日本全体で実現するためには、幅広い業種での取り組みとサプライチェーン全体での脱炭素化の推進が不可欠です。政府は「成長志向型カーボンプライシング」等の支援策を通じて、供給側に対して中長期的な支援措置を講じる方針を掲げています。
供給側への支援のみならず、市場でグリーン製品が評価されて需要が拡大することも、GX市場拡大のためには必要となります。しかしながら、競合する既存の非グリーン製品と機能や性状が似通っているにもかかわらず、生産コストが高い場合には、自律的な需要拡大が困難となります。
宣言の目的
GX製品の市場確立のためには、供給側への取り組みだけでなく需要側への取り組みが不可欠となります。需要側への取り組みとして、GX製品の需要家を金銭的・非金銭的に積極的に評価し、その競争力と市場での存在感を高めることが求められます。
GX率先先行宣言は、積極的な需要家である企業群を可視化する枠組みとして設立されました。本宣言は賛同者が自主的に参加できるものであり、複数のグレードから選択可能となっています。また、宣言を行った企業への政府による優遇措置などが検討されていて、宣言の輪を広く拡大し、GX製品の市場形成に向けた機運を醸成していくことが目的となります。
GXリーグの活動内容における立ち位置
GX率先先行宣言は、GXリーグの活動内容のうち「ルール形成を通じたグリーン市場の創造」にあたります。市場ルール形成WGのひとつに「GX製品社会実装促進WG」があります。このWGが、GX製品やサービスの社会実装に積極的に取り組む企業の可視化と適切な評価を実現することを目的として、本宣言の仕組みを構築しました。
宣言の対象となる製品・サービス
対象となる行動範囲
GX製品の社会実装やGX市場の創造においては、製造事業者のみならず、中間需要家や最終消費者が特定の製品や立場に固執することなく、GX製品の普及促進に貢献することが重要です。
したがって、宣言には「製造事業者」としての取組も盛り込めるようにしつつ、「中間需要家」あるいは「最終消費者」としての立場からの取組のいずれかを行うことが宣言の必須事項となります。

具体的な対象製品・サービス
GX促進の観点から、政策的に社会実装促進の必要があるとしているGX製品のうち、以下三つすべてを満たすものが対象となります。

これらの条件を満たす製品・サービスは、2024年度から本宣言の対象となるものと2025年度以降議論されていく製品に分けることができます。
2024年度から対象とされる製品
- 利用者のScope1, 2が削減されるGX製品またそれを利用したサービスのうち、政府の中長期的措置が取られているもの(例:低炭素水素、EV, SAF)
- 利用者のScope3が削減されるGX製品またそれを利用したサービスのうち、政府の中長期的措置が取られているもの(例:グリーンスチール、グリーンケミカル)
2025年度以降議論されていく製品
- 利用者のScope3が削減されるGX製品またそれを利用したサービスのうち、政府の中長期的措置が取られていないが、製造に際し新たな設備投資が求められるもの(対象の判定方法は未定)
企業としての取り組み方
本宣言は、対象となるGX製品や宣言企業が多岐にわたることから「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」の三つにグレードが分かれ、公平性が確保されています。各グレードの要件は以下の通りとなります。

宣言を記入する際には、各グレードの要件やGXリーグ公式サイト掲載の宣言ひな形を確認しつつ、GXリーグ事務局に宣言を提出する必要があります。
まとめ
本コラムは、GX率先先行宣言の目的や対象範囲について解説しました。GXリーグの活動は、大きく4つにわけることができます。そのひとつである「ルール形成を通じたグリーン市場の創造」のための取り組みとして、本宣言が立ち上げられました。需要側に対しての取り組みがGX市場拡大のための課題であるなかで、本宣言の対象となるサービスや製品が定められました。宣言を行う企業は、各グレードの必須要件を確認して、GXリーグ事務局に宣言を提出する必要があります。
2025年度以降に対象製品の拡大に向けた議論が行われる予定であり、2026年度にはGX-ETSがフェーズ2へと移行し、状況が変化していくことが予想されます。今後の動向に注目です。
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参考文献
[1] GXリーグの参加のメリットとは?参加条件・今後の動向について
[2] 【GXL】GX率先実行宣言について(24年12月公開版)
[3] GXリーグ 公式サイト
[4] 経済産業省 成長志向型カーボンプライシング構想
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