Last Updated on 2024年7月8日 by Moe Yamazaki

この数年、「環境問題」や「気候変動」といった言葉が、国際機関を筆頭とした世界各国の環境問題対策の推進や異常気象による被害によって頻繁に報道されるようになりました。しかし、何から勉強すれば良いのか、そもそも「環境問題」とは何か。そのように疑問を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、環境問題や気候変動についての基礎知識を解説し、今後の動向や取り組む意味についても考えていきます。

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環境とは、主体によって捉え方が異なる概念です。生物学的には、生物が住んでいる空間全体を指し、人間社会的には、自然や社会、人間活動の場などを含みます。このように、環境とはそれを捉える主体によって、その範囲や内容が異なってくると言えます。

また、
「そもそも環境問題とは何か?」
「環境問題が地球上で起きているという認識はいつ生まれたのか?」
上のような疑問が浮かぶ人も少なくないのではないでしょうか。
環境問題はこのように一般的に定義されています。(自社調べ)

【定義】
環境問題とは、さまざまな要因によって人間や地球環境、生態系、社会環境など、相互に影響し合いながら保たれている関係性に問題が生じることを指します。

しかし、一般的に環境問題は人間が起こすものという認識が広がっています。

環境問題には主に環境決定論と環境可能論の二つのアプローチがあります。環境決定論とは、環境が人間や社会に影響を与える要因であるという考え方です。反対に、環境可能論は、人間や社会が環境に影響を与える要因であるという考え方です。

現在環境問題と呼ばれているのは、主に人間が環境に対して悪影響を与える事象や問題を指します。そのため、定義としては環境可能論の論理に乗っ取ったものが多いと考えられます。

代表的なものとしては、気候変動、地球温暖化、海洋プラスチック、大気汚染、海面上昇、生物多様性の危機、森林破壊、酸性雨、大型台風の発生、干ばつ、水質汚染、土壌汚染、資源の減少(リン)などがありますが、今後も私たちが予測していなかった環境問題が発生する可能性はあります。

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地球と環境問題の歴史

地球の適応能力と温暖化

現在、地球が誕生してから46億年が経ったと言われています。

その期間の中で、地球が現代のような環境になったのは5億年前と考えられています。それまでの間、地球では海が形成され原始生物が誕生、そして酸素がその生物によって作られるようになり、それによって光合成生物が誕生しました。

すると二酸化炭素濃度が少なく、逆に酸素濃度は高くなり、酸素の増加によってオゾン層が形成されました。オゾン層の形成により酸素の増加がさらに加速し、現代のような地球環境になったのです。

その後、生物大爆発や大絶滅を繰り返し、恐竜が約6500万年前に絶滅し、約5500〜7000万年前に霊長類、約500〜700万年前に猿人が出現、その後原人、旧人という進化のあと、約20万年前に新人(ホモ・サピエンス)が出現しました。

 出典:京都大学広報誌 紅萠

この生物の進化が起こっている間、地球上に氷河がある時代とない時代がありました。氷河時代と無氷河時代です。

その名の通り、氷河が地球上に存在する時代を氷河時代、氷河が存在しない時代を無氷河時代と呼びます。現在の地球には氷河が存在するため、氷河時代にあたります。氷河時代には特に寒く氷の量が多い「氷期(氷河期)」と現在のような氷河が存在するものの地球の大部分を氷河が占めている訳ではない「間氷期」と呼ばれる期間があり、地球はこの氷期と間氷期を10万年ほどのサイクルで繰り返してきました。

氷期は、地球の表面が分厚い氷に覆われ、マンモス、オオツノジカ、ヘラジカなどの生物が日本の本州では生息していました。氷期から間氷期にかけては、通常4~7°Cの気温上昇が起こるとされていて、それに合わせて海面も低くなり、氷期と比べると陸が繋がります。このように、10万年という長いサイクルの中で、地球の温度は上がったり下がったりを繰り返してきたのです。

しかし、7万年前から1万年前までの最後の氷期から現代までの温暖化のスピードは、以前よりも早くなっているそうです。

人間の活動、代表的には18世紀にイギリスから全世界に広がった産業革命による二酸化炭素の急激な増加が原因だと言われています。グラフにもある通り、20世紀後半から空気中の温室効果ガス/二酸化炭素の排出量は急増しており、1900年には人為的な活動を起点とする排出量が5Gtほどなのに対し、2000年代後半には35Gtに変化していることがわかります。この温室効果ガスの量に比例しているのが気温の変化で、氷期と間氷期のサイクルでは説明がつかないほど、2000年代から急激に上昇していることがわかります。

出典: IPCC第5次評価報告書
(Mann et al. [2008] PNAS, 105, 36, 13252-13257)(Copyright [2008] National Academy Science, U.S.A.)

地球は一つの生き物と捉えることが可能であり、人や生き物の変化に適応する機能があります。しかし、現在はその適応機能が人間の二酸化炭素排出量に追いつかず、対応がエスカレートした結果起きているのが地球温暖化やそれに伴う生物多様性の減少、気候難民問題という現象になります。

つまり、人間の変化に地球が適応することはできますが、その変化を緩めたり、遅くすることが現代には必要とされています。それが、一般的に気候変動対策と呼ばれるものになります。

現代は、科学が進歩し「気候変動は人間が起こしたものとして疑う余地もない」ということが共通の認識になりつつあります。では、人間はいつ環境問題を認識し始め、対策を講じてきたのでしょうか。


環境問題対策の歴史

環境問題が初めて認識されたのは、19世紀の工業化が進む中でした。特に、都市部での大気汚染や水質汚染が顕著であり、それに対する具体的な取り組みが行われるようになりました。例えば、ロンドンでは、1952年に発生したスモッグ事件をきっかけに、大気汚染対策が進められました。

また、1970年代には、石油危機が発生し、エネルギー問題が注目されるようになりました。この時期には、石油代替エネルギーの開発や省エネルギーの推進が進められ、環境問題に対する意識が高まりました。

日本においては、1960年代から1970年代にかけて、急速な経済成長を遂げると同時に環境問題が深刻化しました。公害問題が顕在化し、国民の健康被害が懸念されるようになりました。

それに対応するために、政府が公害防止を目的とした法律を制定するようになりました。1970年には「大気汚染防止法」が、1971年には「水質汚濁防止法」が制定され、公害防止に向けた法整備が進んでいきました。

1980年代に入ると、産業界の自主的な環境対策が進みました。企業が環境に配慮した経営を行う「環境経営」が広がり、ISO14001などの環境マネジメントシステムの普及も進みました。また、政府が再生可能エネルギーの普及促進に力を入れ始めました。具体的には、再生可能エネルギーの普及に関する法律が制定され、風力発電や太陽光発電の導入が進みました。

しかし、それでも環境問題が解決されたわけではありません。今日でも、大気汚染や水質汚染、森林破壊、気候変動などの問題は根強く残っているだけでなく、複雑性を増しています。例えば、1970年代に問題となっていたオゾン層の破壊は、その原因がフロンという物質であるとはっきりしたため、モントリオール議定書にて物質の使用を規制し、対策を取ることができました。

しかし、現在問題とされている生物多様性の減少や気候変動は、その要因となる人間の活動もより多岐に渡り、問題も連鎖的に、複雑に生じているため、万能な解決策は存在していません。そのため、分野や業界、国を跨いだ総合的で包括的な対策が必要となっているのです。

企業や国際機関がどのように環境問題に対応してきたかについては、「企業とサステナビリティ動向 20世紀から現在まで」をご覧ください。

環境問題対策でまず取り組むべきこと

環境問題や気候変動は、人類にとって重大な課題です。今後も人間の活動や技術の発展に伴い、環境問題が深刻化する可能性があります。

また、環境問題の中でも最も深刻な問題の一つとして、地球温暖化や気候変動が挙げられます。なぜなら、これらは極端な気象現象、森林火災、海面上昇、生物多様性の喪失など、多岐にわたる影響を及ぼしているからです。

しかし、気候変動対策には、個人の取り組みだけでは限界があります。政府や企業、国際社会全体が協力して、大規模な取り組みが必要です。

以下に、個人や企業がまず始められる取り組みを紹介します。

※関連記事『気候変動対応のための組織体制とは?サステナビリティ担当者や各部門に求められる役割も解説』

個人の取り組み

エネルギーの節約

家庭や職場などで、電気やガスを節約することが大切です。例えば、車を使わないで自転車や公共交通機関で移動する、エアコンやヒーターを適切な温度に設定する、スマートメーターを使ってエネルギーの使用量を把握するなどが挙げられます。

再利用とリサイクル

処分する前に再利用できるものがないか、リサイクルできるものがないかを考えることも大切です。例えば、ビンや缶などはリサイクルできるので、捨てる前に分別しておくと良いでしょう。

食生活の見直し

消費する食品の種類や量を見直すことも、気候変動対策の一つです。例えば、肉類は生産に多くのエネルギーを必要とするので、減らすことができれば、温室効果ガスの排出量を削減することができます。自分の食生活での二酸化炭素排出量を把握できるサービスなども登場しており、食に関する取り組みは国際的にも推進されていると言えます。

再生可能エネルギーの利用

太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの利用に取り組むことも個人ができる対策です。自宅で契約している電気会社などを見直してみるのも良いかも知れません。

企業の取り組み

温室効果ガスの排出量の削減

企業は、自社の生産プロセスにおける温室効果ガスの排出量を削減することが求められます。具体的には、省エネや再生可能エネルギーの導入、廃棄物の削減やリサイクル、輸送の最適化などが挙げられます。

企業の温室効果ガス削減方法についてさらに知りたい方は、「スコープ1,2,3とは?各スコープの詳細から、温室効果ガス排出量の算定方法まで解説」をご覧ください。

サプライチェーンの管理

企業は、自社だけでなくサプライチェーン全体の温室効果ガスの排出量を管理することも求められます。サプライチェーン内の企業が温室効果ガスの排出量を削減することで、企業の全体的な温室効果ガスの排出量を削減することができます。
企業のサプライチェーンをより持続可能なものにする手法として、LCAがあります

環境に配慮した商品開発

企業は、環境に配慮した商品を開発することが求められます。例えば、再生可能な素材を使用した商品や、エネルギー消費の少ない商品などが挙げられます。

技術開発

企業は、環境に配慮した技術の開発にも取り組むことが求められます。例えば、クリーンテクノロジーの開発や、再生可能エネルギーの開発などが挙げられます。

投資の見直し

企業は、気候変動に関する情報を踏まえ、投資先やビジネスモデルの見直しを行うことが求められます。
様々な取り組み方がありますが、まず自社で始めやすいところから、取り組みを初めていくのが良いかと思われます。

まとめ

この記事では、環境問題の定義や歴史の観点に重点をおき解説いたしました。気候変動対策に周りの方を巻き込みたいと考えている方にも、勉強の初手として読んでくださった方にも、お役に立てれば幸いです。

気候変動は、このまま進めば企業の活動や成長、そして個人の生活にも大きなマイナスの影響を与え得る変数です。まずは一つ、何か対策に取り組んでみて、学びを拡張しながら進めていくのはいかがでしょうか。

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参考文献

[1] 京都大学広報誌 紅萠「自然科学科目群 地球科学(基礎)基礎地球科学A(宇宙誕生から現在まで)どうして地球には、これほど多くの酸素があるのだろう

[2] 国立環境研究所地球環境研究センター「寒冷期と温暖期の繰り返し

[3] 全国地球温暖化防止活動推進センター (JCCA) 「世界の二酸化炭素排出量の推移
[4] 大阪市立自然史博物館「氷河時代 -化石でたどる日本の気候変動-

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  • 2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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