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中小企業がCDP回答で得る「リターン」と最初の必須ステップ

大手企業からCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の質問書への回答を求められた際、多くの中小企業担当者様が最初に抱くのは、次のような疑問ではないでしょうか。

「この多大な時間と労力に見合うメリットは、本当にあるのか?」

たとえSME版で回答事務費用が免除されたとしても、専門知識のない中で排出量を算定し、慣れない質問書を埋める作業は、日常業務を圧迫する「ムダなコスト」と感じられがちです。

しかし、これを「コスト」という視点だけで捉えてしまうと、経営戦略上、極めて重要な機会を逸することになります。 CDPへのリソース投下は、単なるコストではありません。それは、激変するサプライチェーンの中で取引維持と未来の成長を確実にするための、賢明な戦略的投資です。

本コラムでは、中小企業がCDP回答に取り組むことで得られる、経営層に響く3つの確実なリターン(投資対効果)と、まず取り組むべき最初の必須ステップについて解説します。

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中小企業がCDPに回答することで得られるリターンとは

「時間と手間」という貴重なリソースを投じてでもCDP回答に取り組むべきなのは、それを上回る経営上のリターンがあるからです。

リターン①:取引継続に向けた信頼の確保と、取引機会の損失回避

CDP回答をしないという選択は、取引の継続性において大きなリスク要因となり得ます。回答は、大手顧客との円滑な取引を継続するための重要な要素です。

取引継続のリスク回避: 大手企業がScope 3(スコープ3)排出量削減を公約する中、情報開示に応じないサプライヤーは、「リスク要因」と見なされ、取引対象から外される可能性が高まります。

  • 【事例紹介】不遵守は「取引見直し」の対象に:
    • トヨタ自動車は、サプライヤーに対して具体的なGHG排出量削減を求め、CDPを通じた回答要請も実施しています。
    • さらに、同社のサステナビリティに関する方針において、サプライヤーがこれらの要請やガイドラインを遵守しない場合、「取引を見直す可能性がある」と明確に定めています。
    • リソース投下は、取引停止という最大のリスクを回避するための防衛的な投資です。
出典:TOYOTA MOTOR CORPORATION:Sustainability Data Book

リターン②:未来の取引を勝ち取る競争優位性(攻めの投資)

  • 新規取引の獲得: サプライヤーの選定において、環境情報開示と取り組み実績は主要な評価項目となっています。CDP回答の実績は、「環境に取り組む優良企業」としての証明となり、新たな大手顧客からの引き合いや、協業のチャンスにつながる攻めの投資となります。
  • 市場での差別化:  SMEとして競合他社に先駆けてCDP開示に取り組むことは、大きな競争優位性を生み出します。CDP回答を通じてGHG算定と削減活動を推進することで、結果的に低CFP(カーボンフットプリント=製品・サービス単位の排出量)を実現可能な体制にあることを示せます。これは、顧客からの削減要請に確実に応えられる、信頼性の高いサプライヤーであることを客観的に証明する最も有効な手段となります。

    コラム紹介:CFP(カーボンフットプリント)とは?全体像を解説

リターン③:排出量算定を通じた「経営効率の向上」(内部投資)

  • 経営の「見える化」: GHG排出量を算定するプロセスは、電力や燃料など自社のエネルギーコスト構造を詳細に棚卸しするプロセスを含みます。。
  • コスト削減の発見: この「見える化」により、無駄なエネルギー利用箇所や非効率な設備を発見できる可能性があります。

CDP回答リソース投下の最初の必須ステップと「自走」への道筋

CDP回答を戦略的投資として成功させるために、中小企業がまず自社で取り組むべき最低限のステップを明確にします。

1. 必須要件:GHG排出量(Scope 1,2,3)の算定

SME版を含むCDP質問書で最も基礎的かつ、自社の戦略を築く上で不可欠な要件は、GHG排出量の把握です。

2. 次に備える:リスクと取り組みの「棚卸し」

大企業のように専門チームがなくても、CDP開示に向けて以下の核となる情報を整理しておきましょう。

  • リスクと機会の検討: 気候変動が自社の事業にどのような財務的影響(リスク・機会)を与えるか、現状で想定できる範囲で洗い出します。
  • 削減活動の整理: 過去に行った省エネ活動や、今後の具体的な行動計画をリストアップします。大掛かりな取り組みでなくとも、その効果を説明できるように準備しておきます。

まとめ:CDP回答は、未来のビジネスへの「先行投資」である

CDP回答は、取引継続の信頼を築き、新たな競争優位性を生み出し、経営効率を向上させる、攻めの経営戦略そのものです。

自社のリソースを投じる価値は十分にあります。まずはGHG算定から自走を試み、その過程で課題が生じた際は、いつでもご相談ください。

GHG算定・CDP回答サポートの専門家であるリクロマ株式会社は、貴社の状況に応じた最適な支援をご提案できます。

お役立ち資料

CDP(気候変動質問書)とは?

【このホワイトペーパーに含まれる内容
・CDPの概要やその取り組みについて説明
・気候変動質問書の基本情報や回答するメリット、デメリットを詳細に解説
・気候変動質問書のスコアリング基準と回答スケジュールについてわかりやすく解説

参考文献

1.CDP(2024)「CDP2024コーポレート質問書概要P2024コーポレート質問書概要」https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/085/original/CDP2024%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E8%B3%AA%E5%95%8F%E6%9B%B8%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf
2.TOYOTA MOTOR CORPORATION(2025)「Sustainability Data Book」https://global.toyota/pages/global_toyota/sustainability/report/sdb/sdb25_jp.pdf

リクロマの支援について

当社では、CDP2025の回答を基に、設問の意味や次年度の方向性を研修形式でご支援しています。自由記述の添削や模擬採点を通じ、スコア向上に向けた具体的な示唆を提供します。また、「まるごとやり直し」の対応が必要な企業様にも対応可能です。CDPスコア向上に向けた具体的なアクションをサポートしますので、ぜひご検討ください。

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Author

  • 加藤 貴大

    リクロマ株式会社代表。2017年5月より、PwC Mexico International Business Centreにて日系企業への法人営業 / アドバイザリー業務に携わる。2018年の帰国後、一般社団法人CDP Worldwide-Japanを経て、リクロマ株式会社(旧:株式会社ウィズアクア)を創業。大学在学中にはNPO法人AIESEC in Japanの事務局次長として1,700人を擁する団体の組織開発に従事。1992年生まれ。開成中・高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。

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