Last Updated on 2022年9月7日 by 西家 光一
2022年8月26日、金融庁と日本銀行が、気候関連リスクに係る共通シナリオを用いたシナリオ分析の試行的取り組みの実施結果を公表しました。今回の分析は3メガバンク及び大手3損保グループと連携して実施されました。
分析の背景としては、気候変動の金融システム・金融機関への影響を把握する観点から、金融監督当局・中央銀行が金融機関と連携し、共通シナリオを用いたシナリオ分析を実施する動きが欧州を中心に国際的に広がっていることが考えられます。
下記2点が主要な結論として挙げられます。
1点目は、気候変動リスクは純利益に比べると相応に低い点です。物理リスクと移行リスクの双方が、信用リスクを通じて各行の財務に与える影響は各行の平均純利益と比べると相応に低い水準となったと結論付けられています。
2点目は、気候変動リスクの正確な計測は難しい点です。具体的には、移行リスクについての分析が新技術に期待して試算する部分が多く、現時点での正確な計測をすることが簡単ではないという点です。1点目で「暫定的に各行の気候変動リスクは純利益に比べると相応に低い」点を紹介しましたが、今後も各行には気候変動リスクの算定の精緻化を行い、より精度を上げて把握し続けていくことが求められます。
今回の試行的取り組みの目的は気候変動の影響に関する定量的な評価ではなく、継続的な分析手法の改善・開発のための端緒とされています。具体的には、データの制約や分析の仮定・手法の妥当性等、シナリオ分析の今後の改善・開発に向けた課題の把握を行うことに主眼が置かれています。また、今回使用された共通シナリオは、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)が公表しているフレームワークです。
【参考】
金融庁・日本銀行(2022年8月)「気候関連リスクに係る共通シナリオに基づくシナリオ分析の試行的取組について」