Last Updated on 2024年5月2日 by Yuma Yasui

企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方の中には、

「SBTについて詳しく知りたい。」
「どれくらいの企業がSBTに参加しているのか知りたい。」
「業界別にSBTに参加している企業事例が知りたい。」

このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

当記事ではこのような悩みを解決していきます。

記事を最後まで読んでいただければ、上記の悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

SBT認定の基本的な概要や申請プロセスについて一通り理解する、「SBT認定解説資料」
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SBTの概要

SBTは、企業が地球環境問題に対して取り組む上で示す目標設定のことであり、2015年に開催されたパリ協定で生まれたものです。

Science Based Targetsを略した言葉であり、日本語で科学的な根拠に基づいている目標設定を意味します。

この目標設定は、2015年にパリ協定により設定された2℃目標であり、これは産業革命以降における地球の温度上昇を2℃より低く、または1.5℃より低い数値に抑える国際的な目標です。

この目標と整合するために、それぞれの企業で温室効果ガス排出量の削減に向けた目標を設定する必要があります。

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SBTネットゼロ目標について

ネットゼロ目標における基準では、二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスの排出量を減らすための取り組みのみの基準ではなく、環境問題や社会への影響を十分考慮し、多数のプロセスを踏まなければなりません。

SBTiにおけるネットゼロ基準は、以下の通りです。

・Scope1では直接企業が出す温室効果ガス量、Scope2では他社に供給してもらったエネルギーを使う際に出す間接的排出量、Scope3ではサプライチェーンでの他社からの間接的排出量を実質ゼロにすること。
・温室効果ガスの排出量削減に関して、1.5℃目標に沿ってグローバル、またはセクターレベルのネットゼロ排出の達成と整合するレベルでの残余排出量の水準になるまで減らすこと。
・残余排出量や大気中に出るすべての温室効果ガスに対し中和させること。

ネットゼロ基準は自社に限らずサプライチェーン全体において目標を定めることが義務となっています。

また、排出せざるを得ない温室効果ガスに関しては、排出量が及ぼす影響をできるだけ抑えるよう、炭素を大気中から除去する必要があります。

SBTに参加する企業の数の増加

深刻化する地球環境問題、世界的な脱炭素社会への取り組みといった理由から、国や企業は温室効果ガス(GHG)の排出量をできる限り抑えた経済活動が推進されています。

サプライチェーン企業では、脱炭素化に向けた取り組みを行うことにより、サプライヤーからの信頼を高められ、結果的に発注してもらいやすくなる可能性が高くなります。

また、ESG投資など、環境に配慮している企業に対する投資が拡大していることから、これからの社会で継続して経済活動を行っていくためにも、環境に配慮することは不可欠です。

そのような理由から、SBTの目標を提出する企業が増加しています。

なお、環境省が公開しているデータによると、2024年3月時点でSBT認定を取得している、もしくは取得することに※コミットした企業数は、日本だけで見ても約1000社です。

※コミット:SBT認定を2年以内に取得すると宣言すること

出典[1]:環境省「SBT参加企業

建設業界:大和ハウス工業株式会社

建設業界の企業では、大和ハウス工業株式会社があります。

日本の建設業界で初のネットゼロ認定取得です。

大和ハウスグループでは、環境の長期ビジョンである「Challenge ZERO 2055」に基づいて、創業してから100周年の2055年までに、環境負荷ゼロを実現する目標を掲げています。[2]

そのためのテーマに、気候変動に対し緩和と適応という目標を掲げ、事業における温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。
省エネ活動の推進だけでなく、再生可能エネルギーによる発電や活用に取り組んでいる企業です。

食料品業界:キリンホールディングス株式会社

食料品業界の企業では、キリンホールディングス株式会社があります。

2022年7月にSBTネットゼロ認定を取得しました。
これは、日本だけでなく世界における食品企業の中で初めての取得です。

キリンホールディングスでは。2030年までに2019年と比較し、グループ全体におけるスコープ1・スコープ2の合計を半分の50%に、スコープ3を30%まで削減する目標です。[3]

また、2050年までにバリューチェーン全体においてネットゼロを目指しています。
国内に6工場あるキリンビールで、高いエネルギー効率を持つ機器の導入により省エネを進めたり、2017年には工場に再エネを導入したりとさまざまな取り組みが行われています。
実際に2021年には、名古屋工場で使っている電力が再エネに100%切り替えられました。

スコープ3においては、100%「R100ペットボトル」というリサイクルプラスチックを使う取り組みにより削減を進めています。

化学業界:住友化学株式会社

化学業界の企業では、住友化学株式会社があります。

2030年度までに温室効果ガスを削減する目標を半分の50%に引き上げたことで、2021年12月に認定を取得しました。[4]

自社での温室効果ガス排出量をできるだけゼロにすることと、自社が所有する技術や製品を通じ社会全体におけるカーボンニュートラルを促し貢献する取り組みを今後も推進していく予定です。

医薬品業界:小林製薬株式会社

医薬品業界の企業では、小林製薬株式会社があります。

認定を取得したのは、2022年10月です。

国内の工場における温室効果ガス排出量を削減する対策で、空調機の更新や照明のLED化、冷熱設備の断熱強化といった省エネ活動に取り組んでいます。[5]

また、省エネ活動だけでなく、国内における主要工場で使う電力を温室効果ガス排出量ゼロの電力へ徐々に切り替えを行っています。

スコープ3に関しては、自社で電力を使って排出する部分以外のサプライチェーン全体における排出量を削減するために、サプライチェーン全体を考慮した削減への取り組みが課題です。

電気機器業界:ソニーグループ株式会社

電気機器業界の企業では、ソニーグループ株式会社があります。

2022年5月にソニーが発表した2040年におけるバリューチェーン全体のネットゼロ目標が認定の取得対象です。[6]

耐久消費財やパーソナルケア製品セクター、家庭用品の大手企業の中でも、ネットゼロ目標を認定したのは世界でソニーが初めてです。

ソニーでは、2010年から2050年までにグループ全体における地球環境負荷をゼロにする計画を掲げ、そこから気候変動や生物多様性、化学物質、資源といった4つの視点から取り組みが実施されています。

不動産業界:三菱地所株式会社

不動産業界の企業では、三菱地所株式会社があります。

2030年度までに、2019年度と比較しスコープ1とスコープ2の合計で70%以上、スコープ3では50%以上減らすことが目標です。[7]

所有する東京都内・横浜市内におけるすべての建物で使う電力を100%再エネに移行し、2025年度までにグループで使う電力を100%再エネで発電することを目指しています。

2050年までには、スコープ1〜3において90%を超える削減を目標に掲げるだけでなく、残った排出量に関しては中和する目標です。

その目標を達成するためにも、はじめに地域熱供給事業で使用する都市ガスを、温室効果ガスの排出量が少ない燃料に移行するといった対策が検討されています。

サービス業界:ソフトバンク株式会社

サービス業界の企業では、ソフトバンク株式会社があります。

ソフトバンクでは、今後、日本全国にある約23万カ所にも及ぶ携帯電話基地局で使っている電気を少しずつ再エネで発電した電気に移行していく予定です。[8]

また、AIやIoTといった最先端テクノロジーをフル活用し、自社施設や設備の省エネを進める予定です。

さらに、社会全体の再エネ普及にも貢献できるよう、次世代電池の開発にも取り組んでいます。

まとめ

SBTは、企業が地球環境問題に対して取り組む上で示す目標設定のことであり、2015年に開催されたパリ協定で生まれたものです。Science Based Targetsを略した言葉であり、日本語で科学的な根拠に基づいている目標設定を意味します。

ネットゼロ目標における基準では、二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスの排出量を減らすための取り組みのみの基準ではなく、環境問題や社会への影響を十分考慮し、多数のプロセスを踏まなければなりません。
ネットゼロ基準は自社に限らずサプライチェーン全体において目標を定めることが義務となっています。

深刻化する地球環境問題、世界的な脱炭素社会への取り組みといった理由から、国や企業は温室効果ガス(GHG)の排出量をできる限り抑えた経済活動が推進され、SBTを取得する企業が増えています。

そのため、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、どれくらいの企業がSBTに参加しているのか、業界別にSBTに参加している企業事例について把握しておくことが大切です。

2024年2月以降の申請対応!

SBT申請方法の変更点について詳しく説明します。

参考文献

[1]環境省「SBT参加企業
[2]大和ハウス工業株式会社「日本の住宅・建設業界で初めて「SBTネットゼロ」認定を取得
[3]キリンホールディングス株式会社「世界の食品企業として初めてSBT※1ネットゼロの認定を取得
[4]住友化学株式会社「2050年カーボンニュートラル実現に向けたグランドデザインを策定 ~30年度GHG排出量50%削減の新目標と取り組みを決定~
[5]小林製薬株式会社「小林製薬の温室効果ガス排出削減目標がSBTイニシアチブの認定を取得
[6]ソニーグループ株式会社「ソニー、SBTiからネットゼロ目標の認定を取得
[7]三菱地所株式会社「CO2 等温室効果ガス排出削減目標について 日本初 SBT ネットゼロ認定を取得
[8]ソフトバンク株式会社「温室効果ガス排出量をサプライチェーン全体で実質ゼロへ

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Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。

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