Last Updated on 2024年4月27日 by Yuma Yasui

企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方の中には、

「CO2排出量を計算する重要性について知りたい。」
「CO2排出量計算における基本知識について知りたい。」
「CO2排出量計算の対象範囲や関係のある規制について知りたい。」

このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではこのような悩みを解決していきます。

記事を最後まで読んでいただければ、上記悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

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CO2排出量計算の重要性

CO2排出量計算が重要な理由は、主に以下の5点が挙げられます。

気候変動の深刻化

年々深刻化する気候変動の影響もあり、世界で脱炭素化社会に向けた取り組みが実施されています。

日本では2020年に脱炭素社会を2050年までに実現することが目標です。

このように、世界的に脱炭素化社会の実現に向け、さまざまな取り組みが行われていることから、CO2排出量の報告義務がない企業であっても、脱炭素経営のために自社で排出しているCO2について把握する必要があります。

リスク管理

投資家や顧客は、企業の環境保全活動を評価の基準にしている場合も少なくありません。

報告書やサイトなどに自社のCO2排出量を掲載することにより、環境問題を意識している企業だと認知してもらえます。環境問題が年々深刻化していることもあり、投資家や顧客は脱炭素経営に取り組む企業を支持する傾向があります。

そこでCO2排出量を計算し公開することで、SDGs活動に取り組んでいるアピールができ、投資家や顧客から信頼が獲得でき、企業イメージも向上できる可能性が高いです。その結果、投資家や顧客に選ばれないリスクが下げられるだけでなく、取引先などから取引を中止されてしまうリスクも下げられます。

また、炭素税などのカーボンプライシングが導入された際に自社の排出がコストとなり得るため、そのようなリスクも管理できるようになります。

法規制への対応

温対法に基づいて、多くの温室効果ガスを排出する者に対し、温室効果ガスの排出量を報告することが義務となりました。

事業により排出される温室効果ガスの種類に定められた条件に当てはまる場合、温室効果ガス排出量を自ら計算し報告する必要があります。

また、省エネ法の条件に当てはまっている場合には、エネルギーの使用状況に関する報告が義務付けられているため、法規制への対応としてもCO2排出量を計算する必要があります。

顧客からの要求への対応

多くの事業者は、自社で排出した温室効果ガスだけでなく、事業活動に関連するサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量を算出し、減らす必要があります。

その中でサプライヤーに向けてCO2排出量を報告したり、CO2排出量の削減を求めたりする事業者もいるため、その場合には自社の温室効果ガス排出量を取引先に報告する必要があります。

競争優位性の獲得

CO2排出量を計算し把握するなど、脱炭素を意識した事業活動に取り組むことで、企業は世界情勢や環境に配慮していると判断されるため、企業価値を向上できる可能性が高いです。

このような動きは、投資家間でも拡大しており、環境・社会・ガバナンスに配慮し経営を実施している企業に優先的に投資するESG投資が注目されています。

ESG投資対象に選ばれることで、より環境を意識した経営を実施するための投資ができるため、市場において競争優位性が獲得できます。

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CO2排出量計算における基本知識

CO2排出量計算における基本知識が知りたいと思われている方は、GHGプロトコルの概要や、Scope1,2,3、排出係数などについて理解しておく必要があります。

基本知識として押さえておきたい用語は、以下の通りです。

GHGプロトコル

温室効果ガス排出量を算定および報告する際の世界で共通の基準です。
包括的な工程を通じ、国際的に認められている温室効果ガスの排出量算定および報告基準として、2011年10月に公表されました。

1つの企業において排出される直接的な排出量に加え、サプライチェーン全体での間接的な排出量も重視している特徴があります。
そのため、対象はバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量です。
また、GHGプロトコルの中では、Scope1,2,3についても定義されています。

Scope1,2,3

出典[1]:資材エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは

Scope1, Scope 2, Scope 3には、それぞれ違った意味があります。
それぞれの意味は以下の通りです。

Scope1

企業が直接排出している温室効果ガス量です。
具体的には、自社で使用した燃料の燃焼や工場で製品を製造する過程で排出される温室効果ガスなどが該当します。自社で使った灯油やガソリンなどから生じる温室効果ガスが当てはまります。

Scope2

他社により供給された蒸気や熱、電気を自社で使う場合に生じる間接的な温室効果ガス排出量のことです。
自社で使ったエネルギーが起因であらりながらも、温室効果ガスの排出自体は電力会社などの他社である点が特徴です。

Scope3

サプライチェーン排出量において、Scope1・2を除いた間接的な温室効果ガス排出量です。
サプライチェーンは、原料の調達から廃棄といった一連の過程を意味します。
事業活動に関わるさまざまなサプライヤーから排出される温室効果ガス排出量を意味し、原材料調達や製品輸配送、製品使用や廃棄で発生する温室効果ガス。が含まれます。

排出係数(排出原単位)

排出係数は、エネルギーの供給源や燃料の種類、輸送方法、廃棄物の処理方法といった、それぞれの排出源で違う値が定められています。

排出原単位とは、1単位あたりの活動量で、どの程度CO2が排出されているのか表した数値で、電力や燃料、その他原料などに適用されています。

サプライチェーン排出量

CO2排出量を算出する際には、サプライチェーン排出量を考えなければなりません。

サプライチェーン排出量は、自社から排出しているCO2排出量に限らず、原材料購入や、販売、輸送、製品使用などで発生するCO2排出量も含めた排出量です。
つまり、サプライチェーン排出量は、Scope1・2・3の排出量をすべて合わせた量となります。

CO2排出量計算の対象範囲

CO2排出量を計算する際、「サプライチェーン排出量算定」と「LCA/CFP算定」の2つが主要なアプローチ方法です。

サプライチェーン排出量算定は、組織レベルで用いることが多く、LCA/CFP算定は製品レベルで用いられることが多いです。サプライチェーン排出量算定では、GHGプロトコルが定められています。

LCA/CFP算定では、ISOによって計算する方法についてガイドラインが用意されています。
CO2排出量を算出する場合は、自社で排出するCO2だけでなく、サプライチェーン全体における排出量(LCAであればライフサイクル全体で生じる排出量)を求め、全体的に排出量削減に向けて取り組むことが重要です。

CO2排出量の計算方法

CO2排出量を求めるためには、地球温暖化係数や排出係数、活動量などを利用する必要があります。

CO2排出量を求める際は、「排出原単位×活動量」で求められます。

計算式で表すと、以下のようになります。

【計算量】
排出原単位×活動量=CO2排出量

ちなみに、上記で求めた値に、地球温暖化係数をかけることで、CO2以外の温室効果ガス排出量の算出が可能です。

世界的に脱炭素化社会の実現に向けて動きが活発化しているため、CO2排出量を計算する企業が増加しています。
CO2排出量の算定では、自動で算定できるシステムを活用する方法と、Excelに手入力し求める方法があります。

算定システムを利用するメリットやデメリットについては、こちらの弊社コラムにて詳しく解説していますので、興味がある方は確認してみてください。

CO2排出量計算に関する規制

CO2排出量計算に関する規制は、主に以下の2つです。

温対法

多くの温室効果ガスを排出する者に対し、温室効果ガスの排出量を報告することを義務付けた法律です。

事業により排出される温室効果ガスの種類に定められた条件に当てはまる場合、温室効果ガス排出量を自ら計算し報告する必要があります。
また、国は排出者から報告を受けた情報を集計して公表しなければなりません。[3]

省エネ法

1979年に定められた法律であり、燃料資源や電気、熱などを効率的に使用することを目的としています。

エネルギーを効率的に使用することで、無駄なエネルギーを消費せず、国民経済を発展させる狙いがあります。省エネ法の対象となる事業者は、主に工場や事業場、運輸業・機械器具等の製造、輸入に取り組む業者です。

建物において、2017年以降は建築物省エネ法で取り扱われているため理解しておきましょう。
事業者は省エネ法の中で、「直接規制を受ける事業者」「間接規制を受ける事業者」に分けられます。

直接規制は、特定の数値目標やルールを定め、違反した場合に罰則を受ける具体的な規定を設定する方式です。直接規制を受ける事業者は、一定条件を満たしている場合、定期的にエネルギー使用状況を報告しなければなりません。

間接規制とは、特定行為を直接禁止、または制限するわけではなく、事業者が自らエネルギー効率を向上させる方向で取り組むよう促す手法です。

エネルギー使用において、企業は効率化させるための計画を作り、定期的に実施状況を報告しなければなりません。

出典[4]:経済産業省「省エネ法の概要

まとめ

CO2排出量計算が重要な理由には、気候変動が深刻化している背景から排出量を把握しておく必要があることや、競争優位性が獲得できる可能性が高いことなどがあります。

CO2排出量計算における基本知識が知りたいと思われている方は、Scope1,2,3の概要や、GHGプロトコル、排出係数などについて理解しておくことが大切です。

また、実際に計算する際に困らないように、CO2排出量計算の対象範囲や計算方法についても理解しておく必要があります。

CO2排出量計算では、温対法や省エネ法などの規制も関わってきますので、企業の脱炭素経営を積極的に進めるサステナ担当者の方は、CO2排出量計算の基礎知識や計算方法、関係する法律について十分理解しておきましょう。

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参考文献

[1]資材エネルギー庁「知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは
[2]環境省「地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案
[3]環境省「地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画
[4]経済産業省「省エネ法の概要

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リクロマ株式会社

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カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 西家 光一

    2021年9月入社。国際経営学修士。大学在学中より国際人権NGOにて「ビジネスと人権」や「気候変動と人権」領域の活動を経験。卒業後はインフラ系研究財団へ客員研究員として参画し、気候変動適応策に関する研究へ従事する。企業と気候変動問題の関わりに強い関心を寄せ、リクロマ株式会社へ参画。