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CDPは2025年版スコアリング基準において、各ランク(A~D)に到達するための必須要件(Essential Criteria)を、森林(Forests)、水(Water Security)、気候変動(Climate Change)の3テーマごとに定義しています。
これらは単なる加点項目ではなく、この水準を満たしていなければ、どれだけ他の回答が優れていても、そのランクには到達できないという最低条件として機能します。
なお、森林と水のテーマでは、D・C・Bランクに必須要件が設定されていないため、本稿では「Leadership(A-, A)」の必須要件 に絞って整理します。気候変動テーマについては、環境リスクと機会の評価プロセスと範囲(例:設問3.1、5.3.1、5.3.2)を開示し、加えて取締役会で気候課題が一定の頻度で議題に上がっている場合、Bランクまで到達することが可能です。
以下では、「CDPによるForests Essential Criteria 2025」、「Water Security Essential Criteria 2025」、「Climate Change Essential Criteria 2025」に基づき、各テーマの「Leadership(A-, A)」の必須要件 を整理します。
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気候変動(Climate Change)の必須要件
気候変動テーマでは、取締役会レベルの監督、気候リスクと機会の管理、GHG排出量(Scope 1〜3)の開示、SBTi等に整合した目標設定 が中核となります。
「Leadership(A-, A)」 レベルでは、これらを形式的だけでなく、戦略や投資判断と結びつけているか が問われます。
1.リスクと機会
ランク 設問番号 内容 A- 5.3.1/5.3.2/3.1 開示した気候リスク・機会について、戦略または財務計画への影響 を開示すること。
いずれかの質問での回答により達成可能であり、回答そのものが行われていない場合、スコアリングの対象になりません。
2.ガバナンス
ランク 設問番号 内容 A- 4.1・4.2 取締役会が気候変動に関する専門性を有し、その専門性を維持する仕組み(トレーニング等)を開示すること。
気候変動が企業戦略・資本配分にどのように反映されるかを説明するうえで、取締役会の関与が重視されています。
3.インセンティブ
ランク 設問番号 内容 A- 4.5.1 経営層または取締役会に気候変動に関する金銭的インセンティブ が存在することを開示すること。 A 4.5.1 A−の内容に加え、インセンティブが 具体的な気候関連パフォーマンス指標(KPI)と連動していることを開示すること。
4.クライアント/投資先への要求(金融サービスのみ)
ランク 設問番号 内容 A- 4.7&1.10&4.7.1&4.7.2 環境要件ポリシー・気候関連除外ポリシー の両方を、1つ以上のポートフォリオで保持し、クライアント/投資先が満たすべき気候関連要件の詳細 を示す。 A 4.7.2 少なくとも1つのポートフォリオについて、気候関連の除外ポリシーの詳細を、CDPの開示レベル基準を満たす形で1行分開示していること。
5.公的な政策への関与
ランク 設問番号 内容 A- 4.11 環境・気候政策への関与活動の内容を開示。 A 4.11 すべての政策関与活動の影響評価 を行い、パリ協定整合のコミットメント/ポジション声明を添付 。
6.移行計画
ランク 設問番号 内容 A- 5.2 1.5℃整合の移行計画、または他温度整合の計画、もしくは2年以内の移行計画策定予定 を開示。 A 5.2&4.1.2/4.1&4.3.1 以下が全て充足していることが求められる。1.5℃整合、かつ公開された移行計画 進捗を追跡するフィードバック・メカニズム (または2年以内の導入予定) 取締役会が計画の策定・監督を担う(4.1.2 または 4.1) 経営層に移行計画の実行責任 が割り当てられている(4.3.1)
7.低炭素R&D(該当業種のみ)
対象セクター:石油ガス/電力/輸送(OEMS・サービス)/セメント/鉄鋼/金属鉱業/化学/資本財/建設/不動産
ランク 設問番号 内容 A- 5.5&(5.5.1・5,5,2・5.5.3・5.5.4・5.5.5・5.5.6・5.5.7・5.5.8) 該当セクターにおいて低炭素R&Dの詳細を1行以上 開示すること。
8.CAPEX(石油・ガス/石炭セクター)
ランク 設問番号 内容 A- 5.6 新規油ガス田開発・炭鉱拡張に関与していないことを証明。
9.CAPEX(電力セクター)
ランク 設問番号 内容 A- 5.7 報告年度のCAPEX 、または 今後5年間に計画されているCAPEX のうち、CDPフルスコアリング方法論2025(気候変動)のマネジメントレベル基準で定義される低炭素源 (再エネ等)へのCAPEXが0%を超えていることを 開示。A 5.7 低炭素電源CAPEXが全CAPEXの90%以上 。
10.バリューチェーンエンゲージメント
ランク 設問番号 内容 A 5.11 サプライヤーへの気候関連エンゲージメントを1行以上詳細開示すること 。
11.クライアント/投資先エンゲージメント(金融セクター)
ランク 設問番号 内容 A 1.10&5.11&(5.11.3・5.11.4) 銀行・保険・資産オーナー・資産運用会社それぞれで、クライアント/投資先への気候エンゲージメントを開示すること。
12.除外排出量
ランク 設問番号 内容 A 7.4・7.4.1 原則として、選択した報告範囲内にある排出源は一切除外していないこと。除外がある場合には、Scope1&2の排出量の除外分が「当該排出源は自社にとって関連性が低い」と判断されたもの、または「最近のM&A(買収・合併)が理由」であること。
13.Scope1,2排出量開示
ランク 設問番号 内容 A- 7.6・7.7 Scope 1 排出量を完全開示。
14.Scope3排出量開示
ランク 設問番号 内容 A- 7.5 Scope 3 排出量の基準年データを算定。 A- 7.8 Scope 3 排出量を主要カテゴリごとに算定し開示している。 A- (金融セクター) 12.1.1・12.1.3 ポートフォリオの気候インパクト測定または他の環境影響指標の開示。
15.第三者検証
ランク 設問番号 内容 A- 7.9.1 Scope 1 の排出量の95%以上が第三者検証済み。 A- 7.9.2 Scope 2 の排出量の95%以上が第三者検証済み。 A- 7.9.3 Scope 3 のうち、少なくとも1カテゴリーが第三者検証済み。 A 7.9.1 Scope 1 排出量が100%検証済み。 A 7.9.2 Scope 2 排出量が100%検証済み。 A 7.9.3 Scope 3 排出量の第三者検証・保証を受けており 、報告された排出量の少なくとも70%が、スコープ3の少なくとも1つのカテゴリ で検証されている。
16. 電力消費・熱供給
ランク 設問番号 内容 A 7.30&7.30.7・7.30&7.30.9 燃料消費または発電/熱供給の詳細を開示基準で1行以上開示。 A (電気セクター) 7.30&7.30.7 燃料消費の詳細を1行以上開示。 A (金融セクター) 7.30 燃料消費の有無を開示。
17. 原料消費(化学/鉄鋼セクター)
ランク 設問番号 内容 A- (化学品セクター) 7.31&7.31.1 化学プロセス用原料消費の詳細。 A-(鉄鋼品セクター) 7.32 鉄鋼プロセス用原料消費の詳細。
18. 効率指標(資本財セクター)
ランク 設問番号 内容 A- 7.34 & 7.34.1 製品・サービスの効率指標の開示。
19. 電力発電比率(電力セクター)
ランク 設問番号 内容 A- 1.16.1 低炭素電源比率:25%超。 A 1.16.1 低炭素電源比率:55%超。
20.科学に基づいた短期の排出量目標
ランク 設問番号 内容 A- 7.53.1・7.53.2 Science Based Targets Initiative(SBTi)による検証を受けている 目標、または 以下のすべてのCDPルート基準を満たす目標 を開示している。組織全体を対象としていること基準年における スコープ1およびスコープ2排出量の少なくとも95% を対象としていること目標設定年から 5~10年以内 の期間を対象としていることまた、以下も満たす必要がある:質問7.53.1 または 7.53.2 において、マネジメントレベル およびSBTiルートの基準 i) または CDPルートの基準 i)~iv) を満たしていること。A 7.53.1・7.53.2 組織全体を対象としたスコープ1およびスコープ2排出削減目標 を開示しており、その目標は Science Based Targets Initiative(SBTi)によって検証されている。 または、1.5℃シナリオに完全に整合する目標 (基準年から目標年までに年率4.2%以上の絶対排出削減 )を開示している。また、 質問7.53.1 または 7.53.2 におけるリーダーシップレベルの適格性基準 ならびに SBTiルートまたはCDPルートの基準 i) を満たす必要がある。A-(電力セクター) 7.53.1・7.53.2 SBTi認証またはCDP Route整合(Scope1基準年排出量のうち95%以上をカバー)。 A(電力セクター) 7.53.1・7.53.2 1.5℃整合のScope1削減目標。 A-(石炭・石油ガスセクター) 7.53.1・7.53.2 SBTi認証 or CDP Route整合(Scope1・2基準年排出量のうち95%以上をカバー)。 A(石炭・石油ガスセクター) 7.53.1・7.53.2 SBTIルート整合、または1.5℃シナリオ整合のScope1・2・3の科学に基づいた短期の排出量目標。また、 質問7.53.1 または 7.53.2 におけるリーダーシップレベルの適格性基準 ならびに SBTiルートまたはCDPルートの基準 i) ~iii) を満たす必要がある。 A-(金融セクター) 7.53.1・7.53.2 気候関連のポートフォリオ目標 に関する詳細を、少なくとも1つの行 で開示している。
21. ポートフォリオ目標(金融セクター)
ランク 設問番号 内容 A- 7.53.4 金融機関の場合、ポートフォリオ排出量について科学に基づいた短期の排出量目標を公開することが求められる。
22. 建築物データ(建設/不動産セクター)
ランク 設問番号 内容 A- 7.72 & 7.72.1 建材・建設プロセスのライフサイクルアセスメント(LCA)を実施。 A- 7.76 & 7.76.1 管理する建物のゼロカーボン建築に関する取り組みを1行以上開示。 A- 7.77 & 7.77.1 過去3年の新築/改修でゼロカーボン建築を採用したプロジェクト詳細を開示。
23. 回答の公開
ランク 設問番号 内容 A- ー CDP気候変動質問票に対して公開回答していること。
森林(Forests)の必須要件
森林テーマでは、スコープ(取り扱うコモディティの開示)、リスク管理、ガバナンス、トレーサビリティ、DF/DCF(Deforestation/Conversion-Free)管理 が中心となります。
必須要件は森林リスクの実態把握から行動計画・外部連携までを包括的にカバーします。
1.コモディティ開示
EC-F3は森林テーマの根幹となる要件であり、森林リスクの全体像を把握する前提として、4つの森林リスクコモディティ(パーム油、木材、牛由来製品、大豆) についての開示が求められます。
ランク 設問番号 内容 A- 1.22 パーム油、木材、牛由来製品、大豆のいずれを扱っている場合でも、その生産量または調達量を例外扱いが認められる場合を除き原則としてすべて開示し、非開示がある場合には総量と理由を明確に説明することが必須となる。
開示していないコモディティがある場合でも、その絶対量を提示したうえで、なぜ開示しないのかについて合理的な理由を示す必要があります。森林リスクの全体像を把握するために不可欠な基礎情報であるため、「Leadership(A)」 レベルにおいて必須要件とされています。
2. リスクの特定・評価・管理
森林テーマのリスク管理要件は、TNFDのリスクとインパクトの管理と強く整合しており、プロセスの具体的な説明が求められます。
ランク 設問番号 内容 A 2.2.1 & 1.22 & 2.2.2 森林に関するリスクをどのように特定し、評価し、管理しているかを、対象範囲を含めて体系的に説明することが求められる。生産者の場合には自社の生産活動を中心に、調達者の場合には上流バリューチェーン全体を含めた説明が必要となる。
調達を行っている企業の場合は、自社の事業活動に加えて上流のサプライチェーンも対象範囲に含めることが求められ、森林破壊に至るリスクを網羅的に把握しているかどうかが問われます。
3.ガバナンス
取締役会および経営層の所掌も、必須要件として明確に位置づけられています。
ランク 設問番号 内容 A(取締役会ありの場合) 4.1 & 4.1.2 & 4.2 取締役会が森林課題を監督し、そのための専門性や監督体制を保持していることを開示する必要がある。 A(取締役会なしの場合) 4.1 & 4.3 & 4.3.1 & 4.4 取締役会が存在しない企業は、代わって経営層に森林課題の責任が割り当てられていることを明確に説明する。
森林リスクに対する最上位の意思決定責任を明示することで、方針・目標・投資判断まで一貫したガバナンスを示すことが求められます。
4.環境方針
ランク 設問番号 内容 A 4.6&4.6.1 森林破壊ゼロや自然生態系の非転換などの明確な方針を定め、その方針が公に公開され、かつ達成期限が示されていることが求められる。
5.CAPEX(石炭・石油ガスセクター)
ランク 設問番号 内容 A 5.6 石炭セクター企業は、新規の鉱山開発や拡張に関与していないことを示し、同時に気候モジュールで要求される水準を満たしていることが条件となる。石油・ガス企業は、新規の油ガス田探査に関与していないことを明確にする必要があり、こちらも気候モジュールで定められた基準との整合が求められる。
6.バリューチェーンエンゲージメント
ランク 設問番号 内容 A 5.11&5.11.6/5.11.7 調達企業は、サプライヤーに対して森林関連の要求事項を直接的に伝えたり、条件として求めたりする取り組みを説明し、その内容が具体的である必要がある。
7.科学に基づいた短期の排出量目標(石炭・石油ガスセクター)
ランク 設問番号 内容 A 7.53.1/7.53.2 Scope 1・2・3 すべてを対象に、1.5°C整合の科学に基づいた短期の排出量目標を設定し、その整合性を科学的根拠に基づき説明しなければならない。
8.情報開示の除外事項
ランク 設問番号 内容 A 8.1.1 森林関連の開示に重大な除外がないこと、またやむを得ない除外がある場合にはその量と理由が精確に示されていることが必要となる。
9.原産地開示
ランク 設問番号 内容 A 8.2&8.3・8.5 企業が生産または調達する森林リスクコモディティについて、国・地域ごとの内訳を完全に示し、全量が把握・管理されていることを説明する。
10.森林関連目標
ランク 設問番号 内容 A 8.7&8.7.1 コモディティ別に森林破壊ゼロや自然生態系非転換の目標を設定し、そのカットオフ年と達成期限を2020年・2025年を基準に明確化することが求められる。
11.トレーサビリティ
ランク 設問番号 内容 A 8.8&8.8.1 企業は、自社が扱うコモディティの少なくとも70%を、生産地または調達地域まで遡及可能な形で把握している必要がある。
12.DF/DCFステータス評価
ランク 設問番号 内容 A 8.9 各コモディティについて、森林破壊や土地転換が発生していない状態をどのように評価しているのか、その結果を定量的に示すことが必須である。
トレーサビリティとDCF評価を組み合わせることで、どの地域の森林リスクが、自社のどの調達・生産に紐づいているかを説明できることが、「Leadership(A)」 得点獲得の鍵となります。
13.DCFフットプリントのモニタリング
ランク 設問番号 内容 A 8.10&8.10.1 企業は、生産地または調達国・地域レベルで、自社が引き起こす森林影響のフットプリントを継続的に追跡し、評価方法と結果を開示する必要がある。
14.外部イニシアティブ参加
森林に関する明確な目標設定と外部イニシアティブへの参加も、「Leadership(A)」 基準として位置づけられています。
ランク 設問番号 内容 A 8.15/8.16 森林コミットメントの実践を支援するため、景観アプローチや管轄区域ベースのイニシアティブなど外部組織との協働に参加し、その取り組みを公開することが求められる。
単独での取り組みに加え、サプライチェーン全体や地域単位での協働が求められている点が特徴です。
15. 回答の公開
ランク 設問番号 内容 A- ー CDP森林質問票に対して公開回答していること。
水(Water)の必須要件
水テーマは、リスク管理、ガバナンス、水量・水質の管理、水ストレス地域での対応、目標設定 が主軸です。
1.リスク管理の開示
水テーマのリスク管理は、森林テーマと同様に、プロセスの全体像を開示することが求められます。
ランク 設問番号 内容 A 2.2.1&2.2.2 水関連リスクの特定・評価・管理プロセスを明確に説明し、直接操業と上流バリューチェーンの双方を対象とした体系的なリスク管理が行われていることを示す必要がある。
「どの流域で、どのような水リスクがあり、それをどう管理しているか」という説明を、共通の枠組みで行うことが求められます。
2.堆積ダム(石炭・金属・鉱業セクター)
ランク 設問番号 内容 A(石炭セクター) 2.6.1 すべての堆積ダムについて分類や規制準拠を含めた詳細情報を完全に開示し、その管理判断を支える評価が行われていることが要求される。 A(金属・鉱業セクター) 2.6.1 石炭セクターと同様に、堆積ダムのリスク分類と管理手法を詳細に示し、関連規制・ガイドラインへの整合を示す必要がある。
3. ガバナンスと水関連方針
水課題についても、ガバナンスと方針の両面での整備が必須です。
ランク 設問番号 内容 A 4.1&4.1.2&4.2 取締役会が水関連課題の監督責任を担い、その立場と専門性が明確であることが必要となる。 A 4.1&4.3&4.3.1&4.4 取締役会が存在しない場合は同等の最高位経営層が責任を負い、組織として水に関する意思決定を統制していることが求められる。
責任の所在と方針内容をセットで示すことで、水リスク管理が組織全体の戦略に組み込まれていることを示せます。
4.環境方針
企業は、水量と水質に関するデータを組織全体で把握していることを示す必要があります。
ランク 設問番号 内容 A 4.6&4.6.1 水に関する方針を公開しており、汚染削減、水量の管理、WASH、淡水生態系の保全、ステークホルダー協働などの複数の要素を含めた内容を示すことが求められる。
5.CAPEX(石炭・石油ガスセクター)
ランク 設問番号 内容 A 5.6 (石炭セクターの場合)新規炭鉱の開発・拡張、(石油ガスセクターの場合)新規の油・ガス田探査に関与していないことを示し、気候モジュールの該当基準も満たしている必要がある。
6.バリューチェーンエンゲージメント
ランク 設問番号 内容 A 5.11 サプライヤーとの間で水に関わる課題についての関与が行われ、購買の要件として水関連の条件を課すか、あるいはエンゲージメントの具体的な内容を明確に提示している必要がある。
7.科学に基づいた短期の排出量目標(石炭/石油・ガスセクター)
ランク 設問番号 内容 A(石炭セクター) 7.53.1/7.53.2 Scope1〜3 を対象とした科学に基づいた短期の排出量目標が、SBTiまたは1.5℃整合ルートと一致する形で設定されていることが要求される。 A(石油・ガスセクター) 7.53.1/7.53.2 石炭と同様に、Scope1〜3全体を含む科学に基づいた短期の排出量目標を開示する必要がある。
8.開示除外事項
ランク 設問番号 内容 A 9.1&9.1.1 水に関する開示から除外されたデータが重大でないこと、また除外がある場合には水量、用途、環境影響、取水源の流域状況などを十分に説明し、CDPが除外を評価できる情報が提供されていることが必須となる。
9.水会計データの完全性
ランク 設問番号 内容 A 9.2 取水・排水量や排水水質、WASH提供状況などの水指標を、75%以上の拠点で継続的に測定し、その頻度を明示していることが求められる。 A(電力セクター) 9.2&9.9.2&1.16.1 一般要件に加え、発電源構成の実態に応じて排水水質を非関連と判断できる条件が定められており、電源の70%以上が風力・太陽光・水力である場合は測定免除が認められる。
10.水ストレス地域の取水
水ストレス地域での取水は、量の変化も含めて注目されています。
ランク 設問番号 内容 A 9.2.4 水ストレス地域での取水が行われていないか、行われている場合でも前年より増加していないことが必要で、増加がある場合にはM&Aなど特段の理由が妥当と認められることが求められる。
新規の設備投資や生産拡大が水ストレス地域に集中していないかを示すことが、投資家の関心事項となっています。
11.水関連目標
目標は少なくとも2カテゴリで設定することが求められます。
ランク 設問番号 内容 A 9.15&9.15.1 取水量、水質汚濁、WASHのうち少なくとも2つのカテゴリーで明確な水関連目標が設定されていることが必要である。
量・質・アクセスの少なくとも2側面で目標を持つことで、水課題への総合的な取り組みを示すことができます。
12. 回答の公開
ランク 設問番号 内容 A- ー CDPのウォーター質問票に対して公開回答を提出し、水に関する情報を外部へ透明に示している状態が求められる。
3テーマに共通する実務的なポイント
CDPの必須要件はテーマごとに内容や指標は異なるものの、共通して以下の3点で構成されています。
1つ目は「リスクの特定・管理」 です。 気候変動では気候リスクと機会、森林では森林リスク、水では水リスクについて、それぞれプロセスと対象範囲を具体的に説明することが求められます。単に「リスクがある」と述べるのではなく、「どの地域・どのサプライチェーンに、どのようなリスクがあり、どのような手順で評価・管理しているか」 を開示することがAリストの前提になります。
2つ目は「ガバナンスの明確化」 です。取締役会または最高経営層が環境課題の監督責任を担っている こと、その専門性や関与の頻度、移行計画や投資判断とのつながりを示すことが、「Leadership(A-, A)」 評価の分水嶺となります。インセンティブや方針、外部政策への関与も、ガバナンスの実効性を示す重要な要素です。
3つ目は「指標・目標の開示」 です。 Scope 1〜3の排出量、森林コモディティの生産・調達量、水量・水質・WASHなどについて、CDPが求めるカバレッジ(全量開示、75%以上測定など)でデータを整備し、第三者検証やSBTi/1.5℃整合目標と組み合わせて開示することがAリスト要件となります。これらの要件を早い段階から把握し、環境部門・リスク部門・サプライチェーン部門・IR部門などが連携して開示体制を整えることで、CDPスコアの向上だけでなく、TNFDやIFRS S2といった国際基準への整合 も同時に進めることができます。
必須基準をチェックリスト として活用し、自社のデータ基盤とガバナンスの成熟度を定期的に点検していくことが、今後のサステナビリティ情報開示戦略の中核になっていくと考えられます。
お役立ち資料
CDP(気候変動質問書)とは?
【このホワイトペーパーに含まれる内容 】・CDPの概要やその取り組みについて説明 ・気候変動質問書の基本情報や回答するメリット、デメリットを詳細に解説 ・気候変動質問書のスコアリング基準と回答スケジュールについてわかりやすく解説
参考文献
[1]CDP(2024)「CDPスコアリング必須要件」https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/443/original/2024_Scoring_Essential_Criteria.pdf [2]CDP(2025)「CDP Climate Change Scoring Essential Criteria 2025」https://assets.ctfassets.net/v7uy4j80khf8/69IJGDpGjjy1ZqFRMCgIUx/219d0d7e24ad34d9efc429284445cac0/Climate_Change_Scoring_Essential_Criteria_2025_V1.2.pdf [3]CDP(2025)「CDP Forests Scoring Essential Criteria 2025」https://assets.ctfassets.net/v7uy4j80khf8/1VZkBK8kyV17wbNYn8kO7Y/554c44f9d0ae489096512a651cfd3440/Forests_Scoring_Essential_Criteria_2025_V1.1.pdf [4]CDP(2025)「CDP Water Security Scoring Essential Criteria 2025」https://assets.ctfassets.net/v7uy4j80khf8/6f2TIaCcOuOP42tkcN7hQK/043e17fff7095e5b01686dab8b33a7b2/CDP_Water_Security_Scoring_Essential_Criteria_2025__June_5_version_.pdf
リクロマの支援について
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リクロマ株式会社代表。2017年5月より、PwC Mexico International Business Centreにて日系企業への法人営業 / アドバイザリー業務に携わる。2018年の帰国後、一般社団法人CDP Worldwide-Japanを経て、リクロマ株式会社(旧:株式会社ウィズアクア)を創業。大学在学中にはNPO法人AIESEC in Japanの事務局次長として1,700人を擁する団体の組織開発に従事。1992年生まれ。開成中・高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。
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