Last Updated on 2022年10月3日 by 西家 光一
投資家側からの要請を反映し、ESG情報の“数値化”の動きが活況を呈しています。
約8割の投資家が「ESGは投資判断の要素になっている」と回答
2022年3月にPwCが公表した調査報告[1]によると、回答者の投資家の約8割が「ESGは投資判断の要素になっている」と回答しました。具体的には、「企業によるESGリスクへの対処は、投資判断の重要な要素である」との設問に対し、「そう思う」と回答した投資家は全体の79%、また「潜在的な投資機会をスクリーニングする際には、企業のESGリスクの程度を検討する」との設問に「そう思う」と回答した投資家は全体の76%でした。
また、「重要度で見たESG課題」の設問では、「スコープ1・スコープ2のGHG排出量の削減」の回答が65%と最も多く、次いで2番目の「従業員の健康・安全の確保」の44%を引き離しています。
資産運用会社も積極的なESGスコアリング実施
資産運用会社の三井住友トラスト・アセットマネジメント(三井住友TM)は、企業のESG情報の分析にあたって「オルタナティブデータ」の使用を開始しました。「オルタナティブデータ」とは、資産運用会社のアナリストが企業の分析の際に活用する公開情報以外のソースを指します。三井住友TMは、ESG情報の“S”のうち、「働きやすさ」などの項目の分析のため、転職サイトの従業員クチコミをもとにした分析を行っています。
また三菱UFJ信託銀行も、ESGに関する企業ニュースの内容をポジティブかネガティブかで判別し、企業のESG評価に参照しています。
企業側の動き:メルカリ、エーザイの例
これらの要請を反映するように、メルカリやエーザイなどがESG情報の数値化に取り組んでいます。メルカリは、フリマ事業における衣類の売買により、約5.9万トンの衣類廃棄と約48万トンのCO2排出量の発生を回避したと公表しました。またエーザイは、2014年〜2018年を対象に、新興国にて無償で配布する治療薬の経済効果を年平均1600億円と算出しました。
経産省がガイドラインの策定に向けた動き
先般ご紹介したように、経産省は製品ライフサイクルにおけるGHG排出量の算定・開示のためのガイドライン作成に向けた検討会を開催し、“標準化”の動きを強めています。検討会は「第1回 サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会」と呼ばれ、カーボンフットプリント(CFP)に関する実践的な算定ガイドの策定を目的としています。
今後もESG関連の主要なアクターにより、ESG情報の定量化に向けた動きが拡大することが想定されます。
【参考】
PwC(2022)「グローバル投資家意識調査2021 ESGへの取り組みに対する投資家の評価」