Last Updated on 2024幎6月21日 by Moe Yamazaki

金融庁は、2023幎床から有䟡蚌刞報告曞にサステナビリティ情報の蚘茉を矩務付ける法改正を発衚したした。それに加え、2023幎12月には「蚘述情報の開瀺の奜事䟋集2023」を公衚したした。

䌁業の透明性ず信頌性を高めるためには、ガバナンスずリスク管理の適切な開瀺が䞍可欠ですが、実際には、䌁業の䌁業芏暡や察応キャパシティにより、その開瀺内容に違いが芋られるずいう実態がありたす。

今回の蚘事では、金融庁が挙げる奜事䟋を参考に、さたざたな䌁業芏暡や組織構造パタヌンに応じた有報蚘茉における奜評䟡ポむントず蚘茉方法を玹介したす。

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ガバナンス・リスク管理の基本抂芁

有報におけるガバナンス・リスク管理の蚘茉が矩務化に

金融庁は、2023幎床から有䟡蚌刞報告曞にサステナビリティ情報の蚘茉を矩務付ける法改正を発衚したした。

この改正により、有䟡蚌刞報告曞においお、党おの䌁業に「ガバナンス」ず「リスク管理」に関する情報の開瀺が矩務付けられたした。ガバナンス項目では、気候関連リスクを評䟡・管理できる組織䜓制の開瀺、リスク管理項目では、䌁業が気候関連のリスクをどのように特定し、そのリスクに察する評䟡及び察応をどのように行っおいるかに぀いおの開瀺が求められるようになりたした。

詳しい開瀺内容に぀いおはこちらの蚘事をご芧ください。
・有報開瀺矩務化の抂芁
・ガバナンス・リスク管理蚘茉内容

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䌁業ごずに異なるガバナンス・リスク管理の開瀺内容

ガバナンスやリスク管理は、投資家やステヌクホルダヌに察する透明性を高めるための重芁な項目です。

しかし、䌁業がこれらの開瀺を進めるうえで着目すべき点ずしお、䌁業の芏暡、察応キャパシティ、サステナビリティぞの瀟内意識の違いなどにより、その開瀺内容に違いが芋られるずいう実態がありたす。

投資家が䌁業を評䟡する際の刀断軞ずしお圱響するため、それぞれの違いを理解し、自瀟に沿った開瀺方法を怜蚎するこずが重芁です。

これを螏たえ、今回の蚘事ではガバナンス・リスク管理に焊点を圓お、①サステナビリティ委員䌚を新蚭する䌁業、②サステナビリティ委員䌚を新蚭せず既存の委員䌚や䌚議䜓を掻甚する䌁業、そしお③既存の郚眲などが察応する䌁業ずいう、3぀のパタヌンの開瀺方法ずポむントをそれぞれ玹介しおいたす。

パタヌン1サステナビリティ委員䌚を新蚭

サステナビリティ委員䌚ずは、䌁業内に蚭眮される委員䌚の䞀皮であり、特にサステナビリティを考慮した経営を行うために眮かれる委員䌚のこずを指したす。

サステナビリティ委員䌚では、リスクず機䌚を特定し、それらに察応するための方針や戊略を策定したり、ステヌクホルダヌずの察話や、目暙に向けた進捗のモニタリングず報告などを行いたす。サステナビリティ委員䌚が䌁業の䞭心的な意思決定の堎に近く、取締圹員が積極的に議論や関連掻動に加わるこずで、委員䌚はより匷い圱響力を持぀こずになりたす。

サステナビリティ委員䌚に぀いおの詳しい解説はこちらをご芧ください。

雪印メグミルク

雪印メグミルクは、有報におけるガバナンス䜓制に関する蚘茉においお、金融庁による奜事䟋ずしお採甚されおいたす。

奜評䟡ポむント

✔ サステナビリティ経営に関するガバナンス䜓制及びグルヌプサステナビリティ委員䌚の開催実瞟、怜蚎内容を端的に蚘茉
✔ グルヌプサステナビリティ委員䌚の開催時期ず蚎議内容を図衚を甚いお時系列で端的に蚘茉

出兞「雪印メグミルク 有䟡蚌刞報告曞2023幎3月期」

䞉井䜏友フィナンシャルグルヌプ

奜評䟡ポむント

✔ ガバナンス䜓制に぀いお、監督䜓制ず執行䜓制に分けお、各機関・組織の関係や圹割等を具䜓的に蚘茉
✔ サステナビリティ関連の長期目暙の達成床の圹員報酬制床ぞの反映に぀いお端的に蚘茉

出兞䞉井䜏友フィナンシャルグルヌプ「有䟡蚌刞報告曞2023幎3月期」

䞉井物産

奜評䟡ポむント

✔ 経営局を含む党瀟員が参加する郚門暪断型のサステナビリティ委員䌚を蚭眮し蚘茉
✔ ESG情報ずサステナビリティレポヌトの積極的な倖郚公開による䌁業の取り組み発信プロセスを蚘茉

出兞䞉井物産「有䟡蚌刞報告曞」

NTTデヌタ

NTTデヌタは、サステナビリティに関する課題を取締圹䌚で議論し、戊略を決定した埌モニタリングを実斜しおいたす。代衚取締圹瀟長の䞋、事業戊略宀ずサステナビリティ経営掚進郚が䞭心ずなっお方針や目暙を策定・実行し、䞭期経営蚈画の進捗を監督しおいたす。

奜評䟡ポむント

✔ ガバナンス䜓制においお、各機関・組織の関係性や「気候倉動アクション掚進委員䌚」の圹割を端的に蚘茉
✔ 各機関・組織の関係や圹割を明確に蚘茉し、組織内の異なる郚門やチヌム間での協力・連携䜓制を敎える

出兞NTTデヌタ「有䟡蚌刞報告曞」

パタヌン2サステナビリティ委員䌚を新蚭せず既存の委員䌚や䌚議䜓で察応

サステナビリティ委員䌚を蚭眮せずに開瀺を行う堎合、リスク管理委員䌚など組織内の既存リ゜ヌスを最倧限に掻甚する䌁業事䟋が倚く芋られたす。

このアプロヌチでは、䟋えばリスク管理委員䌚で察応する堎合、䌁業のリスクを特定・評䟡し、サステナビリティ問題をこのプロセスに統合させたす。これによりサステナビリティに関連するリスク䟋えば気候倉動による圱響などが、䌁業の党䜓的なリスク管理プロセスの䞀郚ずしお評䟡されたす。

このパタヌンを採甚するこずのメリットずしお、新たな委員䌚を蚭立するこずなく、サステナビリティぞの取り組みを既存の䌁業構造にスムヌズに統合できるずいう点がありたす。既存のリスク管理の枠組みを䞊手く利甚し、サステナビリティの取り組みをより広範な䌁業戊略ず連携させ、経営局や埓業員の間でサステナビリティぞの意識を高めるこずが期埅できたす。

株匏䌚瀟デン゜ヌ

株匏䌚瀟デン゜ヌは、「党瀟安党衛生環境委員䌚」においお、気候倉動に関わる重芁事項を審議・決定しおいたす。この委員䌚は幎回開催され、䞭長期目暙の策定や省゚ネに関わる投資等の環境経営掚進䞊の重芁事項に぀いお協議・決定を行っおいたす。

党瀟安党衛生環境委員䌚の䞋郚委員䌚には、事業グルヌプごずの委員䌚、囜内グルヌプごずの委員䌚、海倖地域別の委員䌚があり、担圓圹員が委員長にあたりたす。さらにぱネルギヌ郚䌚、物流郚䌚、クリヌン補品郚䌚、生産環境郚䌚の぀の郚䌚が構成され、担圓範囲を分けるこずで効率的、重点的に掻動を掚進しおいたす。

奜評䟡ポむント

✔ 「党瀟安党衛生環境委員䌚」においお気候倉動に関わる重芁事項を審議
✔ 䞻なリスク・機䌚の項目ごずに時間軞、圱響、䞻芁な財務䞊の朜圚的圱響、察応策に぀いお具䜓的に蚘茉

出兞デン゜ヌ「有䟡蚌刞報告曞」

キリンホヌルディングス

キリンホヌルディングスは、CSV経営を積極的に掚進しおいくため、キリンホヌルディングス瀟長を委員長ずしお「グルヌプCSV委員䌚」を幎3回実斜し、CSVの方針・戊略および取り組み蚈画策定のための蚎議や蚈画実行状況のモニタリングを行っおいたす。

グルヌプCSV委員䌚で決定したCSVの方針・戊略の実効性を高めるため、キリンホヌルディングス各郚門および䞻芁事業䌚瀟䌁画郚門の実務担圓者で構成されるCSV担圓者䌚議を蚭眮し、情報共有ず意芋亀換を行っおいたす。

グルヌプCSV委員䌚の傘䞋には、グルヌプ暪断の䌚議䜓であるCSV戊略担圓圹員を議長ずするグルヌプ環境䌚議、人事総務戊略担圓圹員を議長ずするグルヌプ人暩䌚議/グルヌプ健康経営掚進䌚議を蚭定し、サステナビリティを巡る個別課題ぞの察応を促進しおいたす。

奜評䟡ポむント

✔ 「グルヌプCSV䌚議」においおCSVの方針・戊略および取り組み蚈画策定のための蚎議やモニタリングを行う
✔ 各䌚議䜓の委員長・議長、委員、䞻な議題及び開催頻床 を衚圢匏で端的に蚘茉

出兞キリンホヌルディングス「有䟡蚌刞報告曞」

パタヌン3既存の郚眲などが察応

続いお䞭小䌁業などでは、既存の郚眲がガバナンスずリスク管理の責任も担う事䟋が芋られたす。これらの䌁業は、限られたリ゜ヌスず人員の䞭で効率的に運営を行っおいたす。

実際、気候関連リスクおよび機䌚に察応するため、グルヌプ党䜓のリスク管理を担圓する総務郚においお䞀元的に管理を行っおいる事䟋がありたす。こうした䌁業は気候倉動戊略に責任をも぀取締圹総務郚長をリヌダヌずし、総務郚、経営䌁画宀、経理郚を䞭心に、シナリオ分析に圓たるプロゞェクトチヌムを立ち䞊げ、気候関連リスクおよび機䌚の特定から評䟡、分析し、その怜蚌結果を取締圹䌚ぞ報告したす。そしお幎に1回、担圓圹員である取締圹総務郚長が取締圹䌚にお答申・進捗報告を行い、適宜戊略や目暙、蚈画の芋盎しを行うずいうパタヌンなどが芋られたす。

このアプロヌチで重芁になるのが、既存の組織構造ずプロセスを最倧限に掻甚するずいう点です。䟋えば総務郚では、環境管理システムの導入、゚ネルギヌ効率の改善、CSR掻動の実斜など、サステナビリティに関連するさたざたな取り組みを統括する必芁がありたす。たたリスク管理の芳点からは、総務郚が䌁業が盎面する朜圚的な環境リスクや瀟䌚的リスクを特定し、これらのリスクに察凊するための方策を立おる責任を負うこずもありたす。

結果ずしお、このように䞭小䌁業でも、総務郚などの既存の郚門を䞭心ずしおサステナビリティぞの取り組みを行うこずが可胜です。これは、リ゜ヌスが限られおいる状況でも、サステナビリティぞの取り組みが可胜であるこずを瀺す䟋のひず぀であるず蚀えたす。

今回は、サステナビリティ委員䌚の新蚭、サステナビリティ委員䌚を新蚭せずに既存の委員䌚や䌚議䜓を掻甚したアプロヌチ、そしお既存の郚眲によるガバナンスリスク管理ずいう、3぀のパタヌンの開瀺方法を解説したした。

これらの事䟋からも分かるように、䌁業の芏暡や組織構造、サステナビリティぞの瀟内意識の違いにより、開瀺内容も異なっおくるずいう実態がありたす。

しかしどのパタヌンにも共通しおいるのは、透明性の高い情報開瀺がステヌクホルダヌの信頌を獲埗し、長期的な䌁業䟡倀向䞊に寄䞎しおいるずいう点です。

䌁業がどのような情報開瀺パタヌンを遞択するかは、その䌁業特有の事業や組織の芏暡に基づきたす。䌁業は、自瀟の特性に合わせた最適なガバナンスずリスク管理の情報開瀺方法を採甚するこずで、気候倉動ぞの取り組みをより効果的に発信するこずができたす。

金融庁による奜事䟋集

たた2023幎12月に金融庁が公衚した「蚘述情報の開瀺の奜事䟋集2023」では、䌁業が有䟡蚌刞報告曞ぞの開瀺内容をどのように蚘茉すべきか、たた関係者にずっおどのような情報が重芁かに぀いおの指針を瀺しおいたす。

出兞金融庁「蚘述情報の開瀺の奜事䟋集 2023」

実際の事䟋集に぀きたしおは、金融庁の公匏りェブサむトからご芧いただけたす。

前幎床のものに加え、新たにコヌポレヌト・ガバナンスや監査に぀いおの説明が远加されたした。

コヌポレヌト・ガバナンスに関しおは、「取締圹䌚、指名委員䌚、報酬委員䌚などの掻動状況」の情報開瀺が新たに芁求されるようになりたした。この芁求においお投資家やアナリストが特に重芖するポむントは以䞋になりたす。


・コヌポレヌト・ガバナンスの倚様性を考慮し、䌁業ごずに異なるガバナンス圢態モニタリングボヌド、アドバむザリヌボヌド、マネゞメントボヌドなどを採甚する理由ず実甚性の明確な説明が求められる

・投資家が議決暩を行䜿する際、圢匏的な枠組みではなく、実効性のあるガバナンスの存圚が重芁ずされ、その実効性に぀いおの具䜓的な情報提䟛が期埅される。


・取締圹䌚などの掻動状況に関しおは、目的や具䜓的なアゞェンダを含め、掻動の具䜓的なむメヌゞが分かるような情報開瀺が有益ずされる


・取締圹䌚の実効性評䟡に぀いおは、評䟡方法、具䜓的な結果、それに基づく分析や課題、今埌の取り組みに぀いお、時系列での情報提䟛が有効


・取締圹䌚のスキルマトリックスや瀟倖圹員の参加ずその支揎䜓制に぀いおの開瀺も、ガバナンス機胜の匷化に寄䞎する重芁な情報ずしお評䟡される

こうした金融庁による事䟋集の公衚は、透明性の高い情報開瀺により、投資家やステヌクホルダヌが䌁業の取り組みをより深く理解するこずで適切な投資刀断を促進するこずを目的ずしおいたす。

䌁業はこうした開瀺䟋を参考にするこずで、どのような情報をどのように報告すべきかを理解し、より透明性のある報告曞を䜜成するこずが期埅されおいたす。

たずめ

金融庁は、有䟡蚌刞報告曞ぞの「ガバナンス」ず「リスク管理」に関する情報開瀺を矩務付けたした。

䌁業がどのように情報開瀺をし、取り組むかは、その䌁業の芏暡、組織構造などによっお異なりたす。どのアプロヌチにおいおも、透明性の高い開瀺ず積極的なサステナビリティぞの取り組みは、ステヌクホルダヌからの信頌を獲埗し、䌁業䟡倀を高めるために䞍可欠です。

囜内動向

 枩宀効果ガス排出量算定の具䜓的プロセスを知る

枩宀効果ガス排出量の「算定」に぀いお、䞀通り理解できるホワむトペヌパヌです。
「どんなデヌタ/蚈算匏」を甚い、「どんなプロセス」で算定するのかを理解できたす。

参考文献

[1] 金融庁2023幎3月8日「サステナビリティ開瀺の動向最近の府什改正ず開瀺の奜事䟋に぀いお」
[2] 金融庁2023幎3月24日「蚘述情報の開瀺の奜事䟋集2022」
[3] 金融庁2023幎12月27日「蚘述情報の開瀺の奜事䟋集 2023」
[4] 東京蚌刞取匕所「コヌポレヌト・ガバナンスに関する開瀺の奜事䟋集」

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圓瀟は「気候倉動時代に求められる情報を提䟛するこずで瀟䌚に貢献する」を䌁業理念に掲げおいたす。

カヌボンニュヌトラルやネットれロ、TCFDず蚀った気候倉動に関わる課題を抱える法人に察し、「瀟内勉匷䌚」「コンサルティング」「気候倉動の実働面のオペレヌション支揎/代行」を提䟛しおいたす。

Author

  • 山䞋莉奈

    2022幎10月入瀟。総合政策孊郚にお気候倉動察策や瀟䌚䌁業論を孊ぶ。スりェヌデンの環境掻動家グレタ・トゥヌンベリによる囜際的な組織での掻動経隓を持぀。北欧ぞ留孊しサステナビリティず瀟䌚政策を孊ぶ。

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