Last Updated on 2024年12月3日 by Moe Yamazaki

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本コラムでは、企業によるESG経営の実現のために、各企業で設置が進んでいるサステナビリティ委員会について紹介していきます。

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サステナビリティ委員会とは

概要

サステナビリティ委員会とは、企業内に設置される委員会の一種であり、特にサステナビリティを考慮した経営を実現するために置かれる委員会を指します。個々の企業内に置かれるため、企業ごとに呼び方は異なります。よって、企業内に置かれるサステナビリティやESGに関連した委員会を総称して、サステナビリティ委員会と呼びます。

企業の監督組織・執行組織のどちらに委員会を設置するか、監督組織の中でも取締役会・CEO直属・経営会議などのどこに設置するか、委員長・委員メンバーを誰にするか、どのようにサステナビリティ関連の専門知識を議論に取り込むか、といった論点がありますが、それを決定するには、企業の現状について整理する必要があるでしょう。

例えば、事業戦略などの監督組織の役割部分にサステナビリティの視点を取り込みたいのであれば、監督組織に委員会を設置するでしょうし、具体的な部署における計画策定が必要であれば、執行組織内に委員会を設置すべきです。(そもそも取締役会の役員が執行実務を担っているなど、企業内の監督・執行の役割分担がされていないことも考えられます。)

また、企業全体として、サステナビリティ推進に向けた関心が高いのであれば、監督組織と執行組織の両方に対して強い影響力を持つ形での委員会設置をすることが有力になりますが、関心がそれほど高くないのであれば、取締役会等への定期的な報告をする程度の権限に留めるべきかもしれません。

サステナビリティ委員会が企業の中心的な意思決定の場に近く取締役員が積極的にサステナビリティ委員会での議論や関連活動に加わることで、委員会はより強い影響力を持つことになるでしょう。

役割

サステナビリティ委員会の役割としては、主に事業活動への提言情報開示の業務の大きく二つがあります。

事業活動への提言

近年のESG投資の高まりなどから、企業は、社会課題への貢献を企業全体の取り組みとして、事業活動と関連付けることが求められています。そして、企業がESG経営を実現させるには、個々の部署が縦割り的に対応するだけでは足りず、企業全体の事業活動を見据えた全社的な対応をしなければなりません。そこで、企業が自らの事業活動を体系的に把握しつつ、サステナビリティの専門的な観点を取り込むためのサステナビリティ委員会が有効となります。

サステナビリティ委員会は、取締役会などの中心的な意思決定の場に対して、サステナビリティの観点から望ましい方針を伝え、企業の戦略的な次元からESG経営を根付かせる役割を果たします

情報開示の業務

サステナビリティ委員会や同時に設置されるサステナビリティ関連の部署が中心となり、投資家等のステークホルダーに対する情報開示を行います。有力な情報開示フレームワークとしてTCFDなどがあり(現在はISSBへ移行中)、そういったフレームワークをもとに、自社の非財務的な情報を開示し、自社がESG課題に対して貢献していることを伝えるのです。こういった情報開示は、ESG投資を呼び込み、企業の利益に直接的な影響を及ぼす可能性があります

TCFDやISSBに関しては、こちらのコラムをご参照ください。
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各企業の設置状況

日経ESGが上場企業を対象として2021年に行ったアンケートでは、取締役が参加するサステナビリティ委員会を設置している企業が約30%であり、設置を検討している企業が約40%にも及びました。

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企業内委員会について

企業内には、DXやリスク管理、コンプライアンスなど、全社的なテーマについて扱う委員会が設置されることがあります。これ以外にも、取締役会に附属する形で指名委員会、報酬委員会、監査委員会の三つを設置している企業は、会社法において指名委員会等設置会社と規定されています。こういった委員会は、基本的に縦割りな企業組織に対して、部署横断的な議論を行うことができる貴重な場となります。

このような企業内での委員会設置は、サステナビリティ委員会が設置される以前から、当然のこととして行われてきました。委員会設置は、部署横断的な議論ができること、専門的な知見を取り込めること、コーポレートガバナンスを強化できることなどの意義があります。

サステナビリティ委員会は、SDGsなどの社会全体で取り組むべき課題に対して企業が貢献するための有力な手段であり、他の委員会に比べ、社会的な強い意義がある委員会となっています。

事例紹介

三井物産株式会社

三井物産は、サステナビリティ委員会だけでなく、サステナビリティアドバイザリーボード、サステナビリティ経営推進部を設置することで、自社のサステナビリティ関連活動を推進しています。

また、サステナビリティ委員会の委員として、企業運営における中心的な部署の部長が参加することで、サステナビリティ委員会の実行力を強めています。(経営企画部長、法務部長、人事総務部長、IR部長など)

(三井物産Webページより)

エーザイ株式会社

製薬会社であるエーザイは、「サステナビリティ アドバイザリーボード」を設置し、社外から3名の国内外の有識者をアドバイザリーボードに任命しています。アドバイザリーボードは、CEOのもとに置かれ、他の委員会や部門からの報告などと合わせ、取締役会での議論の参考にされる形になっています。

(エーザイWebサイトより)

サステナビリティ委員会によるメリット

企業価値の向上

前述したように、サステナビリティ委員会は、事業活動への提言、情報開示の業務を通して、ESG経営を実現する機能を果たします。これらの機能を十分に発揮し、企業がESG経営を実現することができれば、企業価値の向上が見込めます。

対外的なメッセージ

サステナビリティ委員会を設置することのメリットとして、委員会の設置自体が対外的なアピールになるということも挙げられます。投資家から求められる非財務情報としては、企業方針だけでなく、組織体制や情報開示に関する議論を行うプロセスも含まれます。そのため、サステナビリティ委員会が設置されていることは、その企業がESG課題に対して取り組むことを重視しているというメッセージになるのです。また、サステナビリティ委員会による組織内での位置づけが高いことや積極的な活動が行われていることは、投資家などのステークホルダーに対するより強いメッセージとなるでしょう。

特に、海外の企業や投資家からの評価を得るには、サステナビリティ委員会の設置は有効な手段となり得ます。委員会によるガバナンスが主流である海外からすると、取締役会と監査役会によってガバナンスを行ってきた日本企業のガバナンスを評価しづらいことがあります。そのため、委員会の設置は、海外の企業や投資家からでも、ガバナンスの強化を理解しやすいのです。

まとめ

サステナビリティ委員会とは、ESG経営を実現するために企業内に置かれる委員会のことです。設置の仕方には様々な選択肢がありますが、自社にとって最適な形を見つけることで、大きなメリットを得られるでしょう。

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参考文献

[1]HRガバナンス・リーダーズ(2023)「2022年サステナビリティガバナンス・サーベイ報告書」
<https://www.hrgl.jp/topics/topics-7441/>
[2]田村達也(2007)「日本企業のあるべきガバナンス体制」『季刊 政策・経営研究』3巻、69~85頁。<https://www.murc.jp/library/column/quarterly_200703_69/>
[3]「緊急調査 プライム希望8割超 948社が回答 東証再編と企業のESG課題」『日経ESG』2021年12月10日。
<https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00003/120800027/>
[4]経済産業政策局 産業資金課・企業会計室「第5回 サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会 事務局資料」2021年9月29日。<https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/pdf/005_03_00.pdf>
[5]エーザイ株式会社 Webページ(最終閲覧:2023年12月13日)
<https://www.eisai.co.jp/index.html>
[6]三井物産株式会社 Webページ(採取閲覧:2023年12月13日)
<https://www.mitsui.com/jp/ja/>

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  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。 情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

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