Last Updated on 2024年11月20日 by HaidarAli

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2024年3月29日に、SSBJはサステナビリティ開示基準の公開草案を公表しました。

SSBJは日本国内でのサステナビリティ報告を統一する組織で、今後TCFDに代わり、企業がサステナビリティ開示をする上での基準となります。

本記事では草案における「ガバナンス」「リスク管理」項目を中心に解説していきます。

SSBJ公式の草案はこちらからご覧いただけます。
SSBJ サステナビリティ開示基準草案

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SSBJの基本概要をポイントで抑える!
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の基本概要 2027年適用開始を前に押さえるべきポイントを解説

SSBJ サステナビリティ開示基準の公開草案を公表

2024年3月29日に、SSBJはサステナビリティ開示基準の公開草案を公表しました。

  • サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)」
  • サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」

2024年7月31日まで意見募集を行い、2025年3月末日までに草案を確定させる予定です。

公開された草案では、TCFD(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標)がS2項目で引き継がれており、構成は同じでしたがその内容と要求されるレベルが比較的上がっていました。

以下の記事ではSSBJの概要と草案の内容を、3Partに分けて詳しく解説しています。

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の基本概要 2027年適用開始を前に押さえるべきポイントを解説
SSBJ サステナビリティ開示基準の草案を公表 「ガバナンス」「リスク管理」の要求事項まとめ【Part1】(本記事)
SSBJ サステナビリティ開示基準の草案を公表 「戦略」の要求事項まとめ【Part2】
SSBJ サステナビリティ開示基準の草案を公表 「指標と目標」の要求事項まとめ【Part3】

おさらい:SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは、日本の組織で、企業のサステナビリティに関する情報開示の基準を策定する組織です。日本国内でのサステナビリティ報告の統一化と透明性の向上を目指しています。

ISSB(国際サステナビリティ基準委員会)とは、国際的な組織で、グローバルなサステナビリティ報告基準を設定し、日本のSSBJを含む各国の基準審議会を統括し指導する役割を担っています。

ISSB統合と適用開始へ

企業の非財務情報の開示を巡り、これまでTCFDやGRIなどの異なる基準が乱立し、企業や投資家に混乱を招いていました。

これを解消するため、2021年にISSBが設立され、2023年に気候変動に関するグローバル基準として承認されました。これにより企業は国際基準に基づいたサステナビリティ情報を提供できるようになり、投資家は企業の比較や検証が容易になりました。

ISSB基準は2024年度の年次報告書から適用され、日本ではSSBJが2024年3月末までに日本版基準を策定し、2025年3月末までに確定する予定です。3月期企業は2026年3月期の有価証券報告書からISSB基準に基づく開示が可能になります。

SSBJの概要についてはこちらの記事をご覧ください。
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の基本概要 2027年適用開始を前に押さえるべきポイントを解説

SSBJ「 ガバナンス」要求事項

今回の記事では、公開草案における「ガバナンス」「リスク管理」項目で押さえておくべきポイントやTCFDと異なる点について解説していきます。

SSBJの概要、「戦略」「指標と目標」については以下の記事をご覧ください。
概要⇒サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の基本概要 2027年適用開始を前に押さえるべきポイントを解説
戦略⇒SSBJ サステナビリティ開示基準の草案を公表 「戦略」の要求事項まとめ【Part2】
指標と目標⇒SSBJ サステナビリティ開示基準の草案を公表 「指標と目標」の要求事項まとめ【Part3】

ガバナンス 開示目的

草案における「ガバナンス」項目では、投資家らが「サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために企業が用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続きを理解できるようにすること」を目的としています。

この項目では、気候変動に対応する戦略の監督のための適切な能力、組織や個人の評価体制について開示する必要があります。

具体的には、気候変動に関するリスクと機会に対する責任の所在と反映の仕方、スキルや能力の開発力や評価制度について開示が求められます。

加えて、事業戦略、主要取引に関する意思決定、リスクを監督する際に、気候変動に関するリスクと機会がどのように考慮されているか、また、目標設定の監督、監視の体制なども開示内容に含まれます。

また、2024年3月29日に金融庁が発表した「令和5年度有価証券報告書レビューの審査結果および留意事項」において、企業全体のガバナンスやリスク管理の基本的な考え方は明らかにされているものの、サステナビリティに関する情報が欠けている場合があると指摘されています。

SSBJの基準案では、「サステナビリティ関連のリスクおよび機会の監督に責任を持つガバナンス機関」についての情報や、「サステナビリティ関連のリスクを識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするためのプロセスと関連する方針」に関する情報を企業がどのような体制とプロセスで開示するかが求められています。

TCFDの開示内容と異なる点

TCFD提言の「ガバナンス」項目では、気候関連リスク及び機会の監視体制と経営陣の責任範囲の開示が求められますが、SSBJの開示基準ではこれらに加え、監督に責任を負う者のスキル及びコンピテンシー情報などスキル利用可能性やその開発予定に関する開示が求められています。

SSBJ「リスク管理」要求事項

リスク管理 開示目的

「リスク管理」項目の開示目的は、「一般目的財務報告の利用者が、気候関連のリスク及び機会を識別、評価及び管理する単一又は複数のプロセスを理解できるようにすること」です。

気候関連のリスクと機会を特定、評価、管理するために用いられるプロセスを投資家らが理解できるようにすること、と言い換えられます。

TCFDの開示内容と異なる点

いずれも基本的にはTCFD提言の「リスク管理」の項目と整合していますが、機会の識別・評価・優先順位付けのプロセスの開示が求められている点(上記(2),(3))で異なります。

加えて、過去の期間から用いたプロセスに変更があった場合の開示に関しても本草案で追加された要求事項です。また、必須要求事項ではありませんが、リスク及び機会の識別にはシナリオ分析を用いることが認められています。

リスク管理について、SSBJの開示基準では、TCFD提言に対して一部変更を加えています。TCFDはリスクに関連したプロセスのみに焦点を当てていますが、リスク及び機会は同じ不確実性の源泉からもたらされるかそれに関連している可能性があるという考え方から、機会の開示も含めています。リスクのみならず機会についても識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングする対象とされていることがあると考えられるためです。

SSBJ サステナビリティ開示の対象企業と適用時期

金融庁は、今後サステナビリティ開示基準をプライム上場企業に適用する方針を示しており、公開草案についてこれらの企業を対象に意見を求めています。

7月31日までの意見募集を経て、2025年3月末までに確定した基準が公開される見込みです。

また金融庁は金融審議会内に「サステナビリティ情報の信頼性確保と保証に関するワーキング・グループ」を新設し、対象企業と適用時期について議論しています。

ここでは以下のような提案が示されています。

出典)金融庁「第2回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と 保証のあり方に関するワーキング・グループ」

一般基準案は、公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から適用することができ、この場合、適用基準及び気候基準を同時に適用しなければならないとされています。

また記載場所としては、有価証券報告書に記載することが一般的であると想定されます。

・法令が有報での開示を禁止しているまたは、他のタイミングや記載場所を容認している場合は有報と異なるタイミングでの開示が認められる

・テーマ別基準で定めがない場合には関連する財務諸表と同じ報告期間を対象とする

SSBJ 経過措置

一般基準案の適用初年度の年次報告期間には、比較情報を開示しないことも可能であるとされています。さらに適用基準の経過措置を用いて、初年度に気候基準に従って気候関連のリスクおよび機会の情報のみを開示する場合、2年目の年次報告期間には、気候関連のリスクおよび機会以外のサステナビリティ関連のリスクおよび機会に関する比較情報を開示しないことも可能です。

出典)金融庁「第2回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と 保証のあり方に関するワーキング・グループ」

まとめ

TCFDの移行や新たな国際開示基準の発表、日本の対応(SSBJの設立や新しい開示基準の検討)など、気候変動対策の動きは常に変化しています。これらの変化に伴い、企業が気候変動対策を進める上で求められる対応も変化しています。

2025年3月に公開予定なので、今後もアップデートされる情報を注視していくことが大切です。リクロマでは今後情報が更新され次第、紹介していく予定です。

前述のとおり、TCFDの枠組みは現在でも有効です。未対応の企業は、まずTCFDに準拠した情報開示を準備することが重要です。すでに対応している企業は、現在の開示内容をもとに、IFRS S1やS2への対応を進めることが求められます。これには、機関投資家などのステークホルダーからの要請や、自社の経営戦略に沿った情報開示を進めることも含まれます。

#SSBJ

次の記事はこちら
SSBJ サステナビリティ開示基準の草案を公表 「戦略」の要求事項まとめ【Part2】

参考

[1] IFRS「2023 – Issued Standards」
[2] SBBJ「サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準の公開草案を公表」
[3] SBBJ 「サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第 1 号 一般開示基準(案)」
[4] 金融庁「第2回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と 保証のあり方に関するワーキング・グループ」
[5] 金融庁 「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(サステナビリティ開示等の課題対応にあたって参考となる開示例集を含む)及び有価証券報告書レビューの実施について(令和6年度)」

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Author

  • 2022年10月入社。総合政策学部にて気候変動対策や社会企業論を学ぶ。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリによる国際的な組織での活動経験を持つ。北欧へ留学しサステナビリティと社会政策を学ぶ。

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