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「今年もなんとか出せたけれど、直前がとにかく大変だった」
「担当者が変わるたびに過去回答が“ブラックボックス化”している」
CDP回答に携わる方から、こうした声を聞くことは珍しくありません。

CDPは、単なる“環境情報の提出”ではなく、企業の戦略・ガバナンス・リスク管理・排出量データを一貫したストーリーとして示す開示です。そのため、締切前に必要な情報を集めようとすると、部署横断の確認・承認・整合チェックが集中し、工数が膨らみがちです。

そこで重要になるのが、回答期間に入る前の「今」この時期からの準備です。
CDP2026は6月15日週に回答ポータルがオープン、9月14日週がCDPスコアリング対象となる回答提出期限と発表されました。

本記事では、CDP回答作成期間までに準備しておくべきことを整理します。

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CDP回答作成で工数がかかる部分の把握

準備の最初の一歩は、「どこが大変になるか」を先に押さえることです。CDP2025では特に、次のモジュールで工数がかかる傾向がありました。

● モジュール3:リスクと機会(財務影響の算定)

リスク・機会の「詳細」と「財務影響額」を示す必要があり、さらに近年は「リスクに脆弱な財務指標 / 機会に整合する財務指標」といった新しい観点も追加されています。社内での議論と合意形成が必要となるケースが多く、回答直前の対応では間に合わなくなる代表例です。

● モジュール5:事業戦略(バリューチェーンエンゲージメント)

設問5.11にて「はい」を選択したステークホルダー区分ごとに追加の設問が表示されるため、回答範囲が広がりやすく、情報収集・整合確認に時間がかかります。

● モジュール7:環境パフォーマンス-気候変動(GHG排出量・エネルギー使用量)

Scope1,2,3の排出量、算定方法、除外事項、エネルギー使用量、削減目標など、多くのデータが必要となります。また設問間での整合性を取る必要があるため、一つのミスが他設問に波及して失点につながります。

CDP2026を効率よく回答するために

“提出直前対応”から“年間準備型”へ転換する

回答直前に工数が膨らむ原因は、主に以下の3点に集約されます。

・必要データが部署に分散しておりデータの収集に時間がかかる
・特定担当者に知見が集中し、異動時等の引継ぎに支障が出る
・提出直前の確認作業や社内承認が停滞する

これらの問題に対して、単に「来年も頑張ろう」ではなく、年間を通して情報の残し方・更新の仕方を仕組み化することが本質的な解決策です。

CDP2026回答作成期間までにやっておくべき準備

では、具体的に何を準備しておくべきでしょうか。

「工数削減につながる準備」は、大きく3つに整理できます。前倒しの標準化と整理が工数を大きく削減することにつながります。

①前年度回答の整理

まずは、前年回答の整理です。

前年回答のデータや記述内容を棚卸しし、次の回答でアップデートすべき箇所を把握します。

特に数字の単純更新のような部分は「回答が終わった直後」に整理するほど効率が良いため、あらかじめ更新箇所をマークしておくことで、次年度の対応も格段にスムーズになります。

データの更新が必要な主な設問例

モジュール設問番号設問内容
11.3組織の詳細
11.4、1.4.1報告期間
22.1時間軸の定義
33.1.1リスクの財務影響額、リスク対応費用
33.1.2脆弱な財務指標の額と割合
33.6.1機会の財務影響額、機会を実現するための費用
33.6.2機会がもたらす大きな影響と整合する財務指標の額と割合
55.5.xセクターに関連した低炭素製品/サービスへの研究開発投資の詳細
55.11.xバリューチェーンエンゲージメント、サプライヤーエンゲージメントの詳細
77.6scope1排出量
77.7scope2排出量
77.8scope3排出量
77.10、7.10.xscope1,2排出量の変化
77.11、7.11.xscope3排出量の変化
77.15、7.15.1scope1排出量の内訳
77.16操業国ごとの排出量内訳
77.17、7.20スコープ1,2 排出量の事業部門別、施設別、活動別内訳
77.22連結会計グループと回答に含まれる別の事業体の排出量内訳
77.23、7.23.1子会社ごとのscope1,2排出量
77.29、7.30.xエネルギーデータ
77.45売上あたり排出原単位 および 追加の原単位指標
77.53.1GHG排出量目標

またCDP対応でよく起こるのが、前年の回答が残っていても「なぜその回答・表現になったのか」が分からない問題です。

「去年どこから数値を引用したのか忘れた」「担当者が変わったため詳細な部分の引き継ぎができていない」といった状態になると、毎年ゼロから作り直すことになり、工数が積み上がります。

そこで重要なのが、前年のCDP回答データ(Word・Excelなど)に根拠や出典を社内メモの形で整理しておくことです。

回答の裏側にある判断理由や参照元、関連する他部署の担当者などをメモとして残しておくことで、次年度以降の作業が圧倒的にスムーズになります。

またCDPの担当者が異動になった際もスムーズに引き継ぐことができます。

②情報・数値の収集ルートを固定化する

工数がかかる背景として、「特定担当者への依存」「複数部署への散在」「承認に時間がかかる」点が挙げられます。回答作成期間に入ってからデータの所在を探し始めると、ほぼ確実に遅れます。そこで、事前に「収集ルート」を定義しておくことが重要です。

環境データやリスク管理規程、社内の各種データについて、最新の資料を「いつ・誰が・どこから」取得できるかを固定化しておくことが大切です。

③テンプレートの整備

排出量データはSaaSや集計表からすぐにCDP形式で出力できることが稀であり、そのデータを回答直前にCDPの回答に合わせて整える作業が始まってしまうからです。 

CDPの回答では設問間の整合性が重要となるため、回答直前に数値を収集して貼り付けるだけでは、誤りが発生しやすくなります。

そのため、Scope1・2・3の排出量データを、あらかじめCDP回答用にフォーマット化しておくことでミスを防ぐことができます。

とくに排出量管理SaaSを使っている場合でも、そのままCDPフォーマットで出力できないケースも多くあります。

そのため、SaaSから吐き出したExcelをCDP用に整形できるよう、変換用のシート(テンプレート)を準備しておくと、回答期間中の作業が一気に楽になります。

まとめ

CDPは、回答期間に入ってから必要なデータや根拠資料を集め始めると、どうしても工数が膨らみやすい仕組みになっています。排出量データの整形や設問間の整合性確認に追われ、締切直前に修正が重なることで、担当者の負担が大きくなるケースも少なくありません。だからこそ、回答作成期間の前に「事前準備」をどこまで仕組み化できるかが、スムーズな回答提出と高品質な開示の分かれ道になります。

「自走」と「スコアアップ」を目指してリクロマでは、不用意な失点を防ぐ「模擬採点」や、回答文章を一括作成する「ハンズオン支援」など、企業のフェーズに合わせた多彩なプランを用意しています 。「来年こそは余裕を持って、より高いスコアを目指したい」とお考えの方はお気軽にお問い合わせください。

参考文献

[1]CDP「CDP2026開示サイクル

お役立ち資料

CDP(気候変動質問書)とは?

【このホワイトペーパーに含まれる内容
・CDPの概要やその取り組みについて説明
・気候変動質問書の基本情報や回答するメリット、デメリットを詳細に解説
・気候変動質問書のスコアリング基準と回答スケジュールについてわかりやすく解説

リクロマの支援について

当社では、CDP2024の回答を基に、設問の意味や次年度の方向性を研修形式でご支援しています。自由記述の添削や模擬採点を通じ、スコア向上に向けた具体的な示唆を提供します。また、「まるごとやり直し」の対応が必要な企業様にも対応可能です。CDPスコア向上に向けた具体的なアクションをサポートしますので、ぜひご検討ください。
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Author

  • 加藤 貴大

    リクロマ株式会社代表。2017年5月より、PwC Mexico International Business Centreにて日系企業への法人営業 / アドバイザリー業務に携わる。2018年の帰国後、一般社団法人CDP Worldwide-Japanを経て、リクロマ株式会社(旧:株式会社ウィズアクア)を創業。大学在学中にはNPO法人AIESEC in Japanの事務局次長として1,700人を擁する団体の組織開発に従事。1992年生まれ。開成中・高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。

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