Last Updated on 2026年1月7日 by Moe Yamazaki

【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら

SBT(Science Based Targets)認定の取得や更新において、組織境界の定義や適用範囲など、ガイドラインだけでは判断しきれないケースも多く、サステナビリティ担当者の疑問は尽きないことと思います。

本記事では、リクロマ株式会社の日々のコンサルティング支援やセミナー、お問い合わせを通じて寄せられた、サステナビリティ担当者のリアルな質問と、それに対する弊社代表加藤の回答を一問一答形式で公開します。マニュアルには載っていないグレーゾーンの判断基準として、ぜひご活用ください。

※本記事は、2025年10月〜11月時点の公開情報およびドラフト案に基づき解説しています。SBTの基準は頻繁に更新されるため、最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。

▼SBTの解説を動画で見たい方はこちら
<アーカイブ配信> SBT審査のプロセスやポイント解説セミナー(無料)

▼関連記事はこちら
SBTi新基準「V2.0」で何が変わる? 2040年再エネ100%・第三者保証義務化など、日本企業が直面する5つの重要変更点


Scope3の削減支援サービス

環境領域に特化したサプライヤーエンゲージメントを、

個社に合わせて設計→体制構築→サプライヤー教育→改善→自走化まで
ワンストップで伴走します。

1. SBT申請のタイミングとバージョン対応

認定基準の変遷に関する質問です。

Q:SBTは、後になればなるほど申請のハードルが上がっていくのでしょうか?

A:はい、申請自体のハードルが上がり、削減実績のトラッキングも厳格化されます。

2025年11月時点ではSBT Net-Zero V2.0のドラフトが公表されています。これに伴い、申請自体の難易度が上がることに加え、計画だけでなく「実際に削減が進んでいるか」のトラッキング(追跡)が求められる方向性です。

基準が更新される前に、早めに申請・着手することが有利になるケースが多いです。

Q:宣言後に基準バージョンが改訂された場合、どのバージョンへの対応が必要ですか?

A:基本は「最新版」ですが、猶予期間があります。

SBTiとしては、常に最新の基準を適用することを推奨しています。ただし、改訂から6ヶ月以内であれば旧バージョンでの申請も認めています。

なお、5年後の更新(再申請)を行う際には、その再申請時点での最新バージョンが適用されます。


2. SBT コミットメントについて

Q:SBTにコミットして目標を提出した後、達成できなかった場合の罰則はありますか?

A:いいえ、SBT目標を達成できなかったことに対する直接的な「罰則」はありません。

SBTiから罰金を科されたり、法的なペナルティを受けたりすることはありません。

ただし、SBT認定企業としてのレピュテーション(評判)リスクや、将来的に認定が取り消される可能性(※現在モニタリング制度が整備されつつあります)は考慮する必要がありますが、現状では「意欲的な目標を掲げ、削減努力をすること」自体が評価されるフェーズです。


3. 組織範囲とグローバル整合性について

海外拠点を持つ企業が直面する、組織境界の定義や会計期間のズレについての回答です。

Q:グループ会社間で会計期間が異なる場合、算定対象期間の統一は必要ですか?

A:SBT側からの明確な規定はありませんが、連結財務諸表と同様のアプローチが一般的です。

例えば「親会社(日本)は4月~3月、海外子会社は1月~12月」といったケースにおいて、SBTiが厳密な期間統一に関する言及をしているわけではありません。

実務上は以下の対応が多く見られます。

  • 申請上の記載: 親会社(単体)の会計年度を記載する。
  • 実際の算定: 連結財務諸表の取り扱いに準じる(例:海外拠点の1月~12月の排出量を、親会社の4月~3月期の連結数値として合算する)。

Q:組織範囲の外部検証はありますか?非上場企業の場合、組織範囲の外部検証が難しいと思いますが、何か証明などは求められますか?

A:提出段階では「自己申告」ですが、正確性が求められます。

提出段階では文章ベースでの説明が求められますが、質問プロセスにおいて組織範囲に関するWebリンクの送付や、新たにドキュメントの作成を求められることがあります。

Q:国ごとのカーボンニュートラル目標の違い(例:中国2060年)は考慮されますか?

A:いいえ、考慮されません。SBTはグローバルで統一された「1.5℃水準」が適用されます。

中国やインドは国として2060年、2070年のカーボンニュートラルを目指しているから、現地子会社もそのタイムラインに合わせる、等のロジックは、SBT認定においては認められません。

所在国の政策目標に関わらず、以下の基準がグローバル一律で求められます。

  • 短期目標(Near-term):
    Scope1,2において年4.2%以上の削減が必要です(5年以上10年以内の目標年を設定)。これは1.5℃目標に整合する削減経路です。
  • ネットゼロ目標(Net-Zero):
    Scope1,2,3全体で90%以上の削減を行い、2050年またはそれ以前を目標年とする必要があります。

つまり、所在国の政策目標が2060年であっても、SBT認定を取得する企業としては、「2050年ネットゼロ(および直近の年4.2%削減)」という、より野心的な国際基準に合わせてグループ全体の目標を設計する必要があります。


4. ネットゼロ目標について

Q:SBTのネットゼロ目標の設定は必須ですか?

A:現行では任意です。

SBT認定を取得するためには、5〜10年先の「短期目標(Near-term targets)」の設定は必須ですが、2050年の「ネットゼロ目標(Long-term targets)」の設定は、現行基準においては任意とされています。

ただし「Net-Zero Standard V2.0」以降は、ネットゼロ目標の設定も必須要件となる可能性が高いため、これから申請する企業はセットでの検討を推奨します。


5. 短期目標・サプライヤーエンゲージメントについて

Scope3削減の要となる、サプライヤーとの協働に関する質問です。

Q:サプライヤーエンゲージメント目標を立てる際に、既にSBT取得済みの企業を進捗に含めて良いでしょうか?

A:はい、目標への進捗に含めて構いません。

エンゲージメント目標は「SBT認定を取得させること」をゴールとするケースが多く、既に取得済みのサプライヤーがいる場合は、初年度から達成率の一部としてカウント可能です。

参照:Supplier-Engagement-Guidance.pdf, p16

Q:サプライヤーエンゲージメント目標は、どのカテゴリを対象としても良いでしょうか?

A:はい、ガイドライン上、カテゴリの制限はありません。

SBTiの『Supplier Engagement Guidance』に基づき、エンゲージメント目標の対象範囲(Boundary)にカテゴリの指定はありません。
参照:Supplier-Engagement-Guidance.pdf, p13


6. FLAG(森林・土地利用)の対象範囲

食品や農業だけでなく、意外な業種も対象となり得るFLAGについての質問です。

Q:FLAG(Forest, Land and Agriculture)目標の設定が必要となる対象企業は?

A:以下の「指定セクター」または「排出量要件」を満たす企業が対象です。

FLAG目標は、土地利用による排出量が大きい企業に設定が義務付けられています。判断基準は大きく分けて2つあります。

対象区分設定要件該当するセクター・業種例
① 指定セクター(必須)排出割合に関わらず設定が必須森林・紙製品(林業、木材、パルプ、紙)食品生産(農業生産)食品生産(動物由来)食品・飲料加工食品・主食小売業タバコ※注:天然魚介類は対象外
② その他企業(排出量要件)FLAG関連排出量が総排出量(Scope1+2+3)の20%以上を占める場合【対象となり得る業種】小売業、容器・包装、ホテル・レストラン・観光、繊維・アパレル、建設・住宅資材、鉱業、ゴム(タイヤ)など

【重要な注意点】

「20%」の判定基準は、除去量を差し引いたネット排出量ではなく、「グロス(総)排出量」として計算する必要があります。

自社が指定セクター外であっても、原材料に農産物や木材を多く使用する企業(アパレルや建設など)は注意が必要です。


さいごに

SBT認定においては、マニュアル通りの回答では乗り切れない「自社特有の事情」もあるかと思いますが、お気軽にリクロマにご相談ください。

回答書の作成や質問対応による認定取得だけでなく、内製化の実現まで伴走いたします。

▼セミナーの全編を動画で見たい方はこちら
<アーカイブ配信> SBT審査のプロセスやポイント解説セミナー(無料)

▼関連記事はこちら
SBTi新基準「V2.0」で何が変わる? 2040年再エネ100%・第三者保証義務化など、日本企業が直面する5つの重要変更点

回答者:リクロマ株式会社 代表取締役CEO 加藤 貴大

大学卒業後、PwC Mexico International Business Centreにて日系企業への法人営業 / アドバイザリー業務に携わる。帰国後、一般社団法人CDP Worldwide-Japanを経て、リクロマ株式会社を創業。1992年生まれ。開成中学校・高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業。

スコープ3算定式の精緻化を図る!

Scope3の概要と削減方法、削減好事例、及び過去の支援を通じて頻繁に
頂いていた質問のQ&A
を取りまとめ、資料を制作いたしました。

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支援形態で、直近2年間の総合満足度は94%以上となっております。
貴社ロードマップ作成からスポット対応まで、次年度内製化へ向けたサービス設計を駆使し、幅広くご提案差し上げております。
課題に合わせた情報提供、サービス内容のご説明やお見積り依頼も随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
お問合せフォーム

Author

  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。
    情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

    View all posts