Last Updated on 2026年10月26日 by Moe Yamazaki

生活賃金とは、地域で健康で文化的な生活を送るために最低限必要とされる賃金の水準です。日本の拠点で自社の賃金と比べる方法には、連合リビングウェイジを使う方法と、IDHが認定した手法のベンチマークを使う方法の2つがあります。EcoVadisの質問票ガイダンスでは、設問の選択肢「生活賃金ベンチマークと比較した従業員の賃金水準の分析」の証拠として、後者による比較が求められています。[1]

生活賃金ベンチマーキングとは何をすることか

生活賃金ベンチマーキングは、地域ごとに推計された生活賃金の水準(ベンチマーク)と従業員の実際の賃金を比べ、下回る人がいるかを確かめる作業です。ベンチマーキングそのものは、賃上げを約束する作業ではなく、まず現状を数字で把握する作業です。

方法1 連合リビングウェイジを使う

連合リビングウェイジは、連合(日本労働組合総連合会)が「健康で文化的な生活ができ、労働力を再生産し社会的体裁を保持するために最低限必要な賃金水準」として独自に試算しているものです。[2] さいたま市での価格調査をもとに、必要な品目を一つずつ積み上げるマーケット・バスケット方式で算出され、都道府県別の値は公的統計の物価指数で換算されています。[2] 都道府県別の月額と時間額が日本語で公表されています。

本改定はおおむね5年ごと(直近は2024年)で、間の年は物価による簡易改定が公表され[2]、直近は2026年9月30日付の版です。[3]

ただし、質問票ガイダンスによると、IDHが認定した手法以外のベンチマークによる賃金分析は、同じ設問の「生活賃金格差を埋めることを目的としたその他の実施対策」に含まれます。この選択肢は、他の選択肢が当てはまらない場合にのみ選ぶよう注記されています。[1] 連合リビングウェイジで比べた結果も回答には使えますが、当てはまる選択肢が異なります。

方法2 IDHが認定した手法のベンチマークを使う

EcoVadisの質問票ガイダンスでは、先の選択肢の証拠は、IDH(持続可能な貿易イニシアチブ)の認定プロセスで認められた手法のベンチマークと従業員の賃金を比べた分析を示すものとされています。手法の例としては、Anker、WageIndicator Typical Family、Fair Wage Network Typical Family、Anker Reference Value、Living Wage for USの5つが挙げられています。[1]

日本については、IDHのBenchmark Finderに、WageIndicator(都道府県単位)とFair Wage Network(市区単位、有償)の推計値が登録されています。[4] また、質問票ガイダンスによると、各国の生活賃金データはWageIndicatorのサイトで自由に入手できるとされています。[1]

比較には、賃金と生活賃金の差を計算する無償のツール、IDHのSalary Matrixを使えます。[5] 質問票ガイダンスでも、証拠の例に「IDH サラリー(給料)マトリックスレポート」が挙げられています。[1]

どちらの方法でも人事部門に依頼すること

Salary Matrixのヘルプでは、直近の完了した暦年の実績データ(実際の労働時間と支給額)を使うこととされています。[5] 人事部門には、給与テーブル上の理論値ではなく、給与台帳の支給実績を依頼しましょう。

対象者については、正社員に限らず有期雇用やパートタイムの従業員も含めることが同じヘルプで推奨されています。[5] 最初に範囲を決めておきましょう。

コンサルタントの視点

当社の支援経験では、生活賃金との比較をまだ行っていない企業が多く、行っている企業でも、まず連合リビングウェイジで状況を把握するのが主流です。同じ給与データを使えば、IDHが認定した手法のベンチマークで比べ直せます。

次に読む記事

あわせて「EcoVadis『労働と人権』テーマで確認すること」と「EcoVadisの証拠書類:既存の資料で何を確認すればよいか」もご覧ください。自社の拠点にどのベンチマークを当てはめるか整理したい場合は、リクロマにご相談ください。

よくある質問

連合リビングウェイジで比べた結果は、EcoVadisの回答に使えませんか?

使えます。ただし、質問票ガイダンスで最初に挙げられている選択肢(IDHが認定した手法との比較)ではなく、「その他の実施対策」の選択肢に当たります。[1]

生活賃金を下回る従業員がいたら、回答で不利になりますか?

LAB3204の質問文は、生活賃金を支払うためにどのような対策を取ったかを尋ねるものです。選択肢には、生活賃金ベンチマークとの比較分析や、生活賃金との差を埋めるための取り組みが挙げられています。[1] まずは分析を行い、現状を把握することが出発点になります。

海外拠点も同時に比べる必要がありますか?

対象範囲の下限は、質問票ガイダンスには記載がありません。報告の設問には、分析の対象となった直接雇用者の比率を報告する選択肢があるため、範囲を段階的に広げる進め方も考えられます。[1]

費用はかかりますか?

IDHのSalary Matrixは無償で利用できます。[5] 無償の推計値がない地域のデータを購入する場合などには、費用が生じます。[5]

参考文献

[1] EcoVadis 質問票ガイダンス(日本語版)LAB3204「生活賃金に関する措置」(EcoVadisの回答画面で参照できるガイダンス)
[2] 日本労働組合総連合会「2024連合リビングウェイジ報告書」2024年9月。
[3] 日本労働組合総連合会「連合リビングウェイジ2026簡易改定版総括表」2026年9月30日。
[4] IDH「Benchmark Finder」。
[5] IDH「Salary Matrix」ヘルプ。

EcoVadis対応の支援

EcoVadis 回答支援

【このサービスに含まれる内容】
・質問票の内容や必要な資料についての説明(ヒアリング研修)
・提出資料の精査と、質問票への記入・添付
・結果の公開後に、次年度に向けた改善案を提案

EcoVadis 回答支援

リクロマの支援について

弊社はISSB(TCFD)開示、Scope1,2,3算定・削減、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っています。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支援形態で、直近2年間の総合満足度は94%以上となっております。
貴社ロードマップ作成からスポット対応まで、次年度内製化へ向けたサービス設計を駆使し、幅広くご提案差し上げております。
課題に合わせた情報提供、サービス内容のご説明やお見積り依頼も随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
⇒お問合せフォーム

Author

  • 大学では気候変動の経済学を専攻し、リクロマ株式会社には創業初期よりコンサルタントとして参画。
    情報開示支援を中心に温室効果ガスの排出の算定や高度なシナリオ分析の業務を担う。

    View all posts