Last Updated on 2024年1月22日 by Yuma Yasui
要旨
2021年12月10日に日経ESGは、東証再編の対象となる948社(全対象は3715社)の再編に関する意向やESGの取り組みの課題を聞いた緊急調査結果を公表しました。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに対応するにあたって、TCFD提言への対応が最も難航していることが明らかになりました。さらに、情報開示の知識やナレッジが当該企業に不足していることが大きなネックとなっていることが分かりました。
背景
2022年4月には、東京証券取引所の市場再編が行われます。この際、実質最上位となる「プライム市場」に上場するには、TCFD提言に沿った開示が求められます。3月期決算を行う企業は、2022年6月の株主総会後に提出するコーポレート・ガバナンス報告書から開示が必要となっています。
以下改訂コーポレートガバナンス・コードの該当部分
上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。
(JPX(2021) 改訂コーポレートガバナンス・コード 3-1③)
TCFD提言に沿った情報開示は最も難しい
TCFD等に基づく気候変動にかかわるリスクと収益機会の開示の達成難易度についての質問に対して、41.9%の企業が「難しい」と答え、25.7%が「やや難しい」と答えています。他の質問項目には、「管理職における多様性の確保の目標と状況の開示」や「報酬委員会・指名委員会の設置」などが挙げられていますが、「難しい」と答えた企業数はすべて15%を下回りました。(詳しくは日経ESG『緊急調査 プライム希望8割超』をご参照ください。)
以上のことから、TCFDの提言に沿った情報開示は東証再編において大きな課題となっていることがわかります。
ESG取り組みの課題
ESGの取り組みを行うにあたり、課題に関する調査も行っています。
半数以上の企業が情報開示に関する知識やノウハウがないことを課題と感じています。また、40%近くの企業が開示基準が乱立している点を課題と感じています。(詳しくは日経ESG『緊急調査 プライム希望8割超』をご参照ください。)
以上のことから、TCFD等専門性の高いESG情報開示を行う際には、有識者の協力が不可欠となりそうです。
\サステナビリティ担当者に求められる役割や知識とは/
サステナビリティ担当者様に向け、気候変動関連アジェンダに対してワンストップで参照していただける資料をご用意いたしました。
参考文献
[1] 日経ESG(2021/12/10)『緊急調査 プライム希望8割超』https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00003/120800027/
[2]株式会社日本取引所グループ(2021/6/11)『コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)』https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000005ln9r-att/nlsgeu000005lne9.pdf
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