Last Updated on 2022年7月29日 by 西家 光一
岸田首相は月刊文芸春秋2月号への寄稿において、企業の長期的成長に必要とされるESG情報などの非財務情報の項目の開示について、2022年度中を目途にルールを決定する方針を発表しました。
人的資本、人材育成に関する項目は、開示ルール決定の上で特に重要視されています。この項目が注目される背景には、企業の賃上げ促進への狙いがあります。岸田首相は、人的資本への投資の情報開示のルール策定によって賃上げによるコスト増加を株主や投資家に理解させることができると見込んでいます。
具体的な人的資本投資、人材育成の例としては「賃上げ」「従業員への再教育と技能強化」「副業の認定」などが挙げられます。また、採用での多様性の重視や職場環境の改善についての対応も企業に求められます。
しかし、政府や投資家が人的資本への投資を重視する一方で企業はそこまで重視していない傾向があります。2020年度生命保険協会の調査[1]によると投資家の67.3%が「人材への投資」を重視している一方で、企業は32.3%に留まっています。今後は企業に対して、人的資本への投資やその情報開示が強く求められていくと見込まれます。
金融審議会はすでに議論を開始しており、4月以降にもルール策定への方針が決定する見通しです。
【補足】
金融審議会:金融制度の重要事項の企画・立案について、横断的に調査審議することを目的に設置された、内閣総理大臣、金融庁長官および財務大臣の諮問機関
【参考文献】
金融庁(2021)「第1回 金融審議会ディスクロジャーワーキング・グループ」https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/disclose_wg/siryou/20210902/03.pdf
- スコープ3各カテゴリの内容解説(上流編)Last Updated on 2025年1月14日 by Moe Yamazaki 【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】 2050年のカーボンニュートラルを実現するための脱炭素社会への移行にともない、企業で […]
- EcoVadisとは?概要や対応するメリットについて解説Last Updated on 2024年12月29日 by Moe Yamazaki 【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】 EcoVadisとは? EcoVadis(エコバディス)とは世界的に信頼されている […]
- IFRS(国際財務報告基準)とISSB(国際サステナビリティ基準審議会)を比較して説明IFRS(国際財務報告基準)とISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、企業が財務情報やサステナビリティ情報を正確かつ統一された形で報告し、投資家や社会からの信頼を得るための国際基準です。 本記事では、それぞれの設立 […]
- Scope3算定時によくあるミスの事例を解説:コンサルの実務経験から紹介Last Updated on 2025年1月9日 by Moe Yamazaki 【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】 GHG(温室効果ガス)算定は、企業が気候変動に関する情報開示や対応をするうえで、非常に […]
- TNFD開示のための手法、LEAPアプローチとは?具体的な取り組みのステップまで解説Last Updated on 2024年12月30日 by Moe Yamazaki 【気候変動関連用語がまるわかり!用語集はこちら】「LEAPアプローチ」は、企業が事業活動を通じて自然資本への依存度やどの程度の影響与 […]