Last Updated on 2024年1月22日 by Yuma Yasui

トヨタ自動車の脱炭素系譜(2030年350万台目標に至るまで)

要旨

2021年12月2日にトヨタ自動車は、欧州向けの新車は2035年以降全てゼロエミッション車(ZEV)にすると発表しました。ゼロエミッション車はEVだけではなく、水素自動車等も当てはまります。ただ、当初の目標であった2050年カーボンニュートラルからさらに前進した、重要な宣言であるといえます。

2021年12月14日には、バッテリーEVの販売目標を上方修正し、2030年に年間350万台達成を目標としました。現在の年間販売台数が1000万台前後であることを考えると、これも重要な動きだといえます。

※ゼロエミッション車(ZEV)
電気自動車(EV)や水素自動車など、CO2を排出しない車のことを指します。

時系列整理

2015年10月14日
トヨタ自動車が「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、CO2関連に関しては、
 ・2050年グローバル新車平均走行時CO2排出量を90%削減(2010年比)
 ・ライフサイクル視点で、材料・部品・モノづくりを含めたトータルでのCO2排出ゼロ
 ・2050年グローバル工場CO2排出ゼロ
を宣言しました。

2021年1月18日
第240回国会の施政方針演説にて、菅義偉前首相は2035年までに新車販売で電動車100%を実現することを表明しました。
(ここで言う電動車とは、EVだけではなくハイブリッド車も含みます。この点で、EUよりも緩やかな定義を置いています。)

2021年4月19日
トヨタ自動車が2050年カーボンニュートラルを宣言しました。

2021年6月11日
トヨタ自動車は6月11日、2035年までに世界の自社工場で二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする目標を発表した。これまで50年に達成するとしていた目標を前倒しした。世界で温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」に向けた取り組みが進み、自動車でも生産から廃棄までのCO2排出量を重視する動きが広まっている。

2021年7月14日
EUの欧州委員会は、「欧州グリーンディール」を発表しました。この中に、2035年にハイブリッド車を含むガソリン・ディーゼル車の販売を事実上禁止するという案を含めていたのでした。それまでEU各国や都市が独自に規制を進めてきたものを欧州委員会がまとめた形となります。

2021年9月9日
日本自動車工業会が記者会見を開催し、会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)が欧州などによる内燃機関車を禁止する方針に対して「敵は炭素であり、内燃機関ではない」と反論しました。さらに、「(EV以外の)選択肢を広げようと動き続けているのは、日本の雇用と命を背負っているため」とも発言し、喫緊性を強調していました。

2021年12月2日
トヨタ自動車は欧州向けの新車を2035年以降全てゼロエミッション車(ZEV)にすると発表しました。欧州トヨタのマット・ハリソン社長は声明で「30年以降ZEVの需要は加速し、トヨタは西欧で35年までに全ての新車でCO2排出ゼロを達成できるようにする」と述べました。対象となる市場は欧州連合(EU)加盟国と英国等の一部非加盟国となっています。販売車のタイプとしては、EVと燃料電池車(FCV)が主力となる模様となっています。

2021年12月14日
トヨタ自動車は「バッテリーEV戦略に関する説明会」を開催し、計16台のBEV(バッテリー式電気自動車)初披露し、豊田章男社長自ら脱炭素への方針を発表しました。
以下プレゼンテーションの抜粋

2030年までに30車種のバッテリーEVを展開し、グローバルに乗用・商用各セグメントにおいてフルラインでバッテリーEVをそろえてまいります。
                   (中略)
私たちは2030年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指します。
                   (中略)
レクサスは、2030年までにすべてのカテゴリーでバッテリーEVのフルラインナップを実現し、欧州、北米、中国でバッテリーEV100%、グローバルで100万台の販売を目指します。さらに、2035年にはグローバルでバッテリーEV100%を目指します。
                   (中略)
今後は、電池関連の新規投資を9月に発表いたしました1.5兆円から、2兆円に増額し、さらに先進的で、良品廉価な電池の実現を目指してまいります。

                     トヨタ自動車(2021)『バッテリーEV戦略に関する説明会』

#脱炭素 #EV

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参考文献

[1]日本経済新聞(2021/12/3)『トヨタの脱炭素、規制強まる欧州から 35年全車排出ゼロ』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02F130S1A201C2000000/
[2]トヨタ自動車(2015)『トヨタ環境チャレンジ2050』
https://global.toyota/pages/global_toyota/sustainability/esg/environmental/sdb21_environment_jp.pdf#page=2
[3]首相官邸(2021)『第二百四回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説』
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0118shoshinhyomei.html
[4]トヨタ自動車(2021)『トヨタ、2050 年カーボンニュートラルに向けたチャレンジ』
https://global.toyota/pages/global_toyota/sustainability/esg/environmental/carbon_neutrality_jp.pdf
[5]日本経済新聞(2021/6/11)『トヨタ、35年に自社工場のCO2排出実質ゼロ 目標前倒し』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD118250R10C21A6000000/
[6]Sustainable Brands(2021)『EUが35年にガソリン・ディーゼル車の販売禁止を発表、世界に広がるEV化の流れ』
https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1203698_1534.html
[7]トヨタ自動車(2021)『バッテリーEV戦略に関する説明会』
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/36428939.html

記:江波 太

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カーボンニュートラルやネットゼロ、TCFDと言った気候変動に関わる課題を抱える法人に対し、「社内勉強会」「コンサルティング」「気候変動の実働面のオペレーション支援/代行」を提供しています。

Author

  • 江波太

    2021年6月よりリクロマに参画。「資源循環を加味した経済指標の開発」「気候変動関連M&Aによる企業価値分析」「Longtermismを促進させる投資システムの提案」「ウクライナ情勢を受けた気候変動ナラティブシナリオの開発」に関する研究を行っています。九州大学共創学部。