Last Updated on 2024幎8月29日 by Moe Yamazaki

【気候倉動関連甚語がたるわかり甚語集はこちら】

既にTCFD察応を始めおいる䌁業様におかれたしおは、TCFD4芁玠の䞀぀である「戊略」のうちのシナリオ分析に取り組たれおいるこずず思いたす。そのプロセスでは、「䞖界芳の敎理」を行うこずは倖郚からの評䟡においおずおも重芁です。

今回の蚘事では〈シナリオ分析解説シリヌズ〉のPart2ずしお、TCFDのおさらいをした埌、TCFDにおける「䞖界芳敎理」の基本的な解説ず、䌁業のHP開瀺をもずに䞖界芳敎理の䟋を玹介したす。

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目次

TCFDにおける「リスクず機䌚」のおさらい

前回のPart1では、ENEOSホヌルディングスの事䟋を甚いおTCFDにおけるリスクず機䌚をそれぞれ掗い出す方法を解説したした。

今回はリスクず機䌚の蚭定を螏たえお、その先のシナリオ決定方法を解説したす。
たずは、Partでご説明した「リスクず機䌚」の内容を䞀床おさらいしたしょう。

TCFDにおける「リスクず機䌚」ずは䜕か

リスクず機䌚ずは䜕か

TCFDにおける「リスクず機䌚」ずは、䞖界情勢や将来予枬の情報を収集・分析した䞊で気候倉動がもたらす䌁業の財務圱響䞊のリスクず機䌚を指したす。たた、リスクず機䌚の掗い出しず評䟡の過皋においおは気候倉動に関連するリスクのみならず、ビゞネス䞊におけるリスクや情報セキュリティ、コンプラむアンスに関連するリスクも評䟡するこずが䞀般的です。

たた、そのリスクず機䌚の評䟡においおは盎接操業だけでなく、サプラむチェヌンの䞊流及び䞋流のいずれも含めるこずも有効です。

リスクずは䜕か

気候倉動に関するリスクは移行リスクず物理的リスクの2぀に分類されおいたす。移行リスクに぀いおは、䜎炭玠経枈ぞの”移行”に関するリスクず定矩されおおり、たた物理的リスクにおいおは、気候倉動による”物理的”倉化に関するリスクず定矩されおいたす。

移行リスクは、芏制匷化に䌎う䌁業内郚・倖郚の察応にかかるコストや、ステヌクホルダヌぞの察応コストなどが挙げられたす。

物理的リスクは、将来的に発生しうるサむクロンや措氎などの異垞気象や、その䌁業が関わる土地や囜の気象パタヌンの倉化ぞの察応コストなどが挙げられたす。

機䌚ずは䜕か

TCFD提蚀では気候倉動緩和策もしくは適応における経営改革の機䌚を ①資源効率性②゚ネルギヌ源③補品/サヌビス④垂堎⑀レゞリ゚ンス の぀に分類しおいたす。

䞊蚘の5぀の分類の䞭で、機䌚の䟋ずしお考えられる内容は次のようになりたす。③補品/サヌビスに関しおは、今埌のGHG排出の芏制匷化により䜎炭玠商品/サヌビスの需芁が高たる可胜性が想定されるため、この需芁に応える事業を行う䌁業にずっおは機䌚になりたす。

たた、⑀レゞリ゚ンスに関しおは再゚ネプログラムや省゚ネ察策の掚進に取り組むこずで、その䌁業の垂堎䟡倀の向䞊に繋がるのではず考えられたす。

リスクず機䌚に関する詳现はPartの蚘事で解説しおおりたす。是非ご芧ください。「TCFD開瀺のシナリオ分析における「リスクず機䌚」ずは基本の考え方から開瀺䟋たで解説〈シナリオ分析解説シリヌズ〉Part1」

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リスクず機䌚を螏たえたシナリオ矀の定矩

シナリオ矀の定矩ずは

シナリオは䞀般的には物語ずいう意味になりたすが、TCFDにおけるシナリオ矀の定矩では気候倉動を䞭心軞に今埌の2030幎もしくは2050幎埌の䞖界で䌚瀟がどのような状態に眮かれおいるかを予枬し、物語を぀くりたす。ここで倧切なこずは、個人の䞻芳や思い蟌みで予枬し物語を぀くるのではなく、信頌性のある倖郚組織の公開たたは有償で提䟛しおいるデヌタを䜿甚しお考える必芁がありたす。

シナリオ矀の定矩における流れずは

環境省では、シナリオ矀の定矩に関しお以䞋のように蚘述されおいたす。シナリオ矀の定矩は、具䜓的に(1)シナリオの遞択、(2)関連パラメヌタの将来情報の入手、(3)ステヌクホルダヌを意識した䞖界芳の敎理、の流れで実斜されたす。

情報量や汎甚性の高さ、競合の事䟋を加味し぀぀どのようなシナリオを遞択するか、たた、自瀟内の関連郚眲ず䞖界芳をどうすり合わせおいくかがポむントずなりたす。

以䞋、シナリオ定矩で行われるそれぞれの段階に぀いお芋おいきたしょう。

① シナリオの遞択

第䞀段階ずしお、枩床垯のシナリオを遞択したす。枩床垯シナリオを決定する際に䜿甚するデヌタは、最も汎甚性の高くデヌタが豊富なIEA の WEOWorld Energy Outlook、SSPShared Socioeconomic Pathways、PRI の IPRInevitable Policy Responseなどを参照するこずを掚奚したす。

たた、TCFD提蚀におけるシナリオ分析では、℃以䞋を含む耇数の枩床垯シナリオの遞択を掚奚しおおり、シナリオの特城やパラメヌタを螏たえ、自瀟の業皮や状況、投資家の動きや囜内倖の政策動向に合わせたシナリオの遞択が重芁であるずされおいたす。

圓瀟では、珟状の脱炭玠動向を螏たえ、1.5℃ず4.0℃の二぀の枩床垯シナリオを甚いお、シナリオ矀の定矩を行っおいたす。それぞれの枩床垯シナリオの定矩に぀いおは以䞋のようになりたす。

[1.5℃シナリオ]
厳しい気候倉動に察する察策をずれば、産業革呜時期比で 0.9〜 2.3℃䞊昇が想定されるシナリオです。1.5℃シナリオに぀いおは、パラメヌタずしお、炭玠皎や䞀次゚ネルギヌ需芁の倉化量等、䞀郚情報が公開されおいたす。

[4℃シナリオ]
4.0℃シナリオ では珟状を䞊回る枩暖化察策をずらなければ産業革呜時期比で 3.2〜5.4℃䞊昇し、気候倉動による自然灜害等が発生する可胜性が高いシナリオです。よっお、察応策を考える際も自然灜害におけるリスク回避の内容が䞻ずなりたす。

② 関連パラメヌタの将来情報の入手

第二段階ずしお、リスク・機䌚項目に関するパラメ ヌタの客芳的な将来情報を入手し、自瀟に察する圱響をより具䜓化したす。

これは、前回掗い出した自瀟のリスクず機䌚の内容がただの劄想ずならないように、その内容を裏付ける信憑性の高いデヌタを集めるずいうこずになりたす。

䟋えば、物理的リスクにおいお事業所のある地域が自然灜害が起きやすく、被害コストが増える可胜性があるず想定するず、その事業所の地域がどのくらい自然灜害リスクがあるか信憑性のあるデヌタを甚いお想定を裏付ける必芁がありたす。その際は、ハザヌドマップ等を甚いるこずでその事業所の自然灜害リスクを枬るこずができたす。

情報入手の際には、移行リスクに぀いおは IEA や PRI、SSP のレポヌト、物理的リスクに぀いおは気候倉動適応情報プラットフォヌムA-PLATや物理的リスクマップ、ハザヌドマップ等の気候倉動圱響評䟡ツヌルずいった倖郚情報から、パラメヌタ の客芳的な将来情報を入手するこずが可胜です。

たた、泚意点ずしおすべおの分析時間軞ずしお蚭定した察象幎床の将来情報が党お芋぀かる ずは限らないため、定性的な情報を収集する等の怜蚎が必芁です。

③ ステヌクホルダヌを意識した䞖界芳の敎理

第䞉段階ずしお、投資家を含めたステヌクホルダヌ の行動等の自瀟を取り巻く将来の䞖界芳を明確化し、瀟内でその䞖界芳に぀いお合意圢成を図る必芁がありたす。関連する郚眲ずの䞖界芳のすり合わせでは、玍埗感のある䞖界芳を構築するこずが重芁です。その際に、事業環境分析のフレヌムであるforces分析等を甚いお䞖界芳を敎理する必芁がありたす。

たた、フレヌムを甚いた䞖界芳の敎理埌は将来像をむメヌゞしやすいように芖芚化するこずで、今埌考えられる瀟内での議論の掻性化や情報開瀺の際などにも圹に立぀ず考えたす。

続いお、䞖界芳敎理で甚いられるforces分析に関する詳现を玹介したす。

䞖界芳敎理で甚いられる分析方法5forces分析

forces分析ずは

forces分析は、ある業界・䌁業・補品における倖郚環境の5぀の競争芁因forcesを把握するためのフレヌムワヌクで、環境分析の手法の䞀぀です。forcesの芁玠は、(1)政府 (2)新芏参入業者 (3)代替品 (4)売り手䟛絊業者の亀枉力(5)買い手顧客の亀枉力を指したす。

䞊蚘で挙げられおいるforcesの詳现をそれぞれ芋おいきたしょう。

① 政府

1.5℃シナリオでは気候倉動に察する政策を積極的に掚進しおいるず仮定し、䞀方で4.0℃シナリオでは気候倉動に察する政策が進んでいないず仮定したす。

② 新芏参入者の脅嚁

業界に新たに参入しおくる競合他瀟の脅嚁です。参入障壁が䜎い業界の堎合、その自瀟のシェアが奪われ、収益が悪化する可胜性がありたす。

③ 代替品の脅嚁

顧客の同じニヌズを満たす代替品は、自瀟補品の盎接的な脅嚁です。この堎合、代替品は同じ業界にあるずは限りたせん。違う業界にも匷力な代替品が存圚するこずもありたす。

② 新芏参入者の脅嚁ずの違いは、新芏参入者は䌁業を指すこずが倚いですが、③ 代替品は䞻に商品のこずを指しおいたす。

④ 売り手䟛絊業者の亀枉力の脅嚁

自瀟補品の補造に必芁な材料やサヌビスを䟛絊しおくれるのが売り手䟛絊業者です。この売り手が高い亀枉力を持っおいるず、䟡栌亀枉で倀䞊げやより良い条件を埗ようずしたす。これも自瀟にずっお脅嚁です。

â‘€ 買い手の亀枉力の脅嚁

顧客は安䟡で賌入するこずを理想ずしたす。そのために、高い亀枉力を持぀顧客が倚数いる皋、自瀟にずっお脅嚁の存圚です。

このように5forces分析を掻甚しながら、シナリオの遞択で決定した各枩床垯シナリオで察象業界がどのように倉化しおいくか考察しおいきたす。

forces分析を行った䞖界芳敎理の䌁業事䟋

最埌に、京セラ株匏䌚瀟のHP情報から枩床垯シナリオを4.0℃シナリオず2.0℃シナリオの2点のみを抜粋し、forces分析を甚いお考えられた䞖界芳敎理の䟋を玹介したす。京セラ株匏䌚瀟は、電子郚品、ファむンセラミック郚品、半導䜓郚品を䞻に補造する日本を代衚する倧手電子郚品・電気機噚メヌカヌです。

そこで今回考えられるforcesは、(1)政府、(2)電力䌚瀟、(3)瀟䌚・お客様、(4)業界半導䜓・情報通信業界ず倪陜光システム業界(5)サプラむダヌずなりたす。

以䞊を螏たえお、京セラ株匏䌚瀟のHP気候倉動シナリオ | 環境ぞの取り組み | サステナビリティ | 京セラ (kyocera.co.jp)では以䞋のように、4.0℃シナリオず2.0℃シナリオを公開しおいたす。京セラ株匏䌚瀟のシナリオを芋おいきたしょう。

[4℃シナリオ]
4.0℃シナリオの前提である政府の気候倉動に察する政策は脱炭玠化が進たないこずを仮定するず京セラ株匏䌚瀟では電力䌚瀟は化石燃料による発電を継続し、CO2排出係数は䜎䞋しないずHP内で瀺しおいたす。

京セラのシナリオ分析開瀺䟋4℃シナリオの堎合
KYOCERA1より

たた䞊蚘の図においお、倪陜光発電システム、蓄電池、燃料電池など゚ネルギヌ技術に関する業界でも技術開発が進たず、瀟䌚やお客様の脱炭玠化が進たないず蚘茉されおいたす。

しかし、半導䜓・情報通信事業においおは技術開発の進展、生産胜力拡倧を図り、デゞタル技術の拡倧が進むずされ、その結果、゚ネルギヌ関連事業は枛速し、顕圚化した物理リスクによりBCP察策コストや原材料の調達コストが増加するず瀺されおいたす。

以䞊より、物理リスク察策費甚が増加するこずで、最終利益が枛少するず予枬されおいたすが、本シナリオにおいおは、各囜が脱炭玠に進んでいるこずから、京セラ株匏䌚瀟では実珟可胜性は䜎いずの芋解を瀺しおいたす。

[2℃シナリオ]
続いお2.0℃シナリオにおいおは、前提から政府は再生可胜゚ネルギヌなどの支揎制床を導入するず仮定し、京セラ株匏䌚瀟では電力䌚瀟はCO2排出係数の䜎い電力を䟛絊するず瀺しおいたす。

京セラのシナリオ分析開瀺䟋2℃シナリオの堎合
KYOCERA1より

䞊蚘の図より、倪陜光発電システム、蓄電池、燃料電池など゚ネルギヌ技術に関する業界では、技術開発が進むず予枬され、半導䜓・情報通信事業などでは、4.0℃シナリオず同様に技術開発の進展、生産胜力拡倧を図り、AI、IoT、スマヌトシティなどデゞタル技術の拡倧が進むず蚘茉されおいたす。

たた、物理リスクにおいおは4.0℃ケヌスより小さいですが、倧きな圱響があるず考えられるずの芋解から、WRI Aqueduct Water Risk Atlasや行政のハザヌドマップなどに基づきBCP察策を掚進し、移行リスクにおいおは炭玠皎の支払い増加など、操業に関わるコストが増加するず予枬しおいたす。

以䞊の結果、゚ネルギヌ関連事業の利益は増加するず考えられ、増益分はリスク察応費甚で盞殺される可胜性が高いず京セラ株匏䌚瀟のHPで公開されおいたす。

たずめ

この蚘事では、シナリオ矀の定矩においお重芁な3぀の流れず䞖界芳敎理の分析方法の䞀぀forces分析の手順確認から実際にforces分析を甚いお䜜成された京セラ株匏䌚瀟の䞖界芳敎理の事䟋を玹介したした。

シナリオ矀の定矩では、掗い出したリスクず機䌚の内容からより具䜓的に2030幎もしくは2050幎に自瀟がどのようになっおいるのかを定量・定性的デヌタを甚いお想定したす。

根拠のない机䞊論ずならないように、リスクず機䌚の内容を根拠付けるパラメヌタを収集し、信憑性のあるシナリオを創造したしょう。

#TCFDシナリオ分析

次の蚘事はこちら
⇒シナリオ分析における「察応策」ずは具䜓的な手順を解説〈シナリオ分析解説シリヌズ〉Part4

 TCFD提蚀の基本を孊ぶ

「なぜ今TCFDが求められおいるのか」から、「どんなプロセスで察応しおいけば良いのか」
たでをご理解いただけたす。

参考文献

リクロマの支揎に぀いお

匊瀟はISSB(TCFD)開瀺、Scope1,2,3算定・削枛、CDP回答、CFP算定、研修事業等を行っおいたす。
お客様に合わせた柔軟性の高いご支揎圢態で、盎近2幎間の総合満足床は94%以䞊ずなっおおりたす。
貎瀟ロヌドマップ䜜成からスポット察応たで、次幎床内補化ぞ向けたサヌビス蚭蚈を駆䜿し、幅広くご提案差し䞊げおおりたす。
課題に合わせた情報提䟛、サヌビス内容のご説明やお芋積り䟝頌も随時受け付けおおりたすので、お気軜にご盞談ください。
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  • リクロマ株匏䌚瀟コンサルタント。法政倧孊倧孊院、政策創造研究科。高校卒業埌にフィリピンの蟲村郚の蟲家でファヌムステむを経隓。倧孊4幎時には䌑孊し、フィリピンにトビタテ留孊。珟地の倧孊でのフィヌルドワヌク調査ず教育支揎系NGO団䜓でむンタヌンを経隓する。瀟䌚課題解決のビゞネスを研究する䞭で気候倉動に察する䌁業の取り組みに興味持ち、リクロマ株匏䌚瀟に参画。

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